川の風景を女性器にたとえた台詞があって、捌いた後の魚のアラや風呂でのオナニーで洗い流した精液が流れ込んだ川で鰻が成育する循環が象徴的。鰻を吊り上げるべく川に垂らした釣竿が二本、立ってしなっているのが、父と息子ふたりの男性器であることは露骨なくらいだが、象徴でございますという感じではなく、自然に溶け込んでいる。
水が周囲の風景までこけ錆びさせている(橋のガードレールが赤錆びているのが典型)かのような匂いたつような画面作りは見ごたえあり。
男性性というのがもっぱら暴力として表れ、その先に戦争があり、「あの人」と呼ばれる人=名前は出ないが昭和天皇であることは明白の責任にまでつながるはずだが、そこまでいくととってつけたような印象は免れない。
必ずしもきれいきれいではなく身体の染みや弛みまで含めて映し出すセックス描写は日本のポルノの伝統の延長上だろうけれど、どこか乾いた感触がる。うなぎや小動物のアップは今村昌平風だけれど、やはりドライさが混ざる。
父親の名前をずっと出さないでおいて、明かすと性格とまるで逆のニュアンスというのが可笑しい。
田中裕子がずっとタバコをふかして、菅田将暉がずっと麦茶かコーラを飲んでいるが、誰かが酒を飲んでいるシーンはない。篠原ゆき子が飲んだ後のシーンがあるだけ。惨劇も酔った勢いではなく、それ以前に身体に内在している血のたぎりが起こしたものということになるだろう。
平日昼間で満席で一番前で見る羽目になった。年配の女性客が存外多かった。
(☆☆☆★★★)
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