ここで日本兵が自分が聞きたい情報、敵が巡らしているに違いないと決め付けている陰謀の情報だけしか聴こうとせず、相手の言うことに虚心に耳を傾けることがないとディスコミュニケーションが、ラジオという具体的な形に典型化されている。
その日本が耳をふさぎ続けていた、敵こそが知っていた日本に都合の悪い情報に通訳である日本人が初めて耳を傾けた時から、対話が始まることになる。
ラジオ同様に鉄道が膨大な苦役の上に成り立った象徴であるとともに、違う立場同士をつなぐものの象徴にもなっているのが映画的な表現として単純な実話の再現を抜いたところ。
ファースは真田広之の対決で、執拗に一人称単数で、つまり「私は」どうしたのかどう思うのか答えるよう要求して、みんなはどうしていたとか、他がこうだったからといった答え方を許さない。
実際、そういう空気に流されて、みんながやっているのだからいいやといった意思と主体の曖昧さは夙に日本的なものとして指摘されているところのものだし、実際そうだと思う。
前半の静かなイギリスの田舎の情景の描写が続いていたところに、唐突に日本兵が違和感そのものとして姿を現す悪夢感の表現が優れている。
有色人種が白人を使役している光景というのは珍しい感じで、やはり泰緬鉄道建設に駆り出されていたピエール・ブール原作の「猿の惑星」の猿は日本人のことだという説も、納得できるところもある。
真田広之扮する永瀬隆という人物が実在で、実際に和解を果たしたというのがドラマの説得力のもとになった。
映画で描ききれなかった部分を勉強しなくてはいけないところ。
(☆☆☆★★)
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レイルウェイ 運命の旅路@ぴあ映画生活
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