ウディ・アレンはこれまでフェリーニとかベルイマンといった好きな作家をむしろ嬉々としてオマージュを捧げていたわけだが、これはあからさまにテネシー・ウィリアムズの「欲望という名の電車」の祖述。
姉が妹のところに転がり込んでくるところからドラマが始まり、姉がやたらと育ちの良さ暮らし向きの良さをアピールして男たちをひっかけてまわるところ、実はそれがすべてニセモノであることをいっぺんに割らず順々にわからせていく展開、妹が粗暴な男とくっついたり離れたりして、それに姉がカリカリするところ、などなど。
笑えるには違いないがパロディというわけではなく、ヒロインのイタさがあまりにひどいので笑ってしまうのであって、しかもちょっと前まで羽振りがよくてそれがずっと続くと思っていたのがあっという間に奈落に落ちるひとごとではないリアリティが貼り付いている。
すでにさんざん賞賛されているけれど、ケイト・ブランシェットの演技は見事で、長身なのでさまざまなブランドで身を固めているのが似合うのがなおさら悲惨。
未成年女子と関係してアメリカから追放されたロマン・ポランスキーほどではないが、このところ養女と結婚してからというもの、アレンはアメリカから離れてヨーロッパで半ばバカンスみたいな映画作りを続けてきた印象だったが、久々にアメリカを本格的に舞台にした本作では、アメリカで拝金主義がいきすぎて破綻しているさまを相当に辛辣に描いている。。かつての自分の「栄光」の根拠が金とモノにしかないというあたり、もちろんひとごとではない
(☆☆☆★★)