人形の気味悪さをモチーフにしているのも良くも悪くもちょっと古い感じ。
商業演劇のキャスティングを争っての若手女優たちのどろどろした葛藤はあるけれど、それに終始するというわけではない。
人形の由来も恨みつらみだけではなくいい人が死ぬと逆転して悪霊になる(菅原道真とか)のを思わせたりして、本編のドラマも必ずしも悪意ばかりが横行するわけでなく、割とがちっと嫉妬と善意の両方を往復する人間同士のドラマの一方で、人形は永遠に変わらないことに対する欲望を吸収して肉体化してしまうといった筋道が見える。
「リング」では生身の俳優を使ってどうそれを生身の感じを剥ぎ取って幽霊に見せるかという試みをしていたわけだが、ここでは人形の人間ならざる感じを保持したまま生身の人間の感じが部分的に突出してくるわけで、むしろ対極だろう。
不思議と、登場したときから誰かをモデルにしているのではないか、と思わせる。
演じる女優さんたちがみんなぴちぴちなので、エリザベートの老いて美を失う恐怖という感じはまるっきり出ていない。もっともだからダメかというとそうでもないので、若い女性タレントがちょっとでも成果が出ないか気に入られなければ使い捨てにされる消費の速さを思わせる。
ラスト、まだあるぞというルーティンかと思うとヒロインはそれを知ってて踏み越えていくところまで考えて表現している。
血しぶきの使い方を抑えていて、それも大量に出るのは人形からというのは計算が立っています。
(☆☆☆)

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