たまたまなのだが、大竹まことゴールデンラジオに出た事故物件芸人松原タニシの話とか、事故物件を霊能者と共に審査してまわるマンガ「霊能者と事故物件視てきました」などが重なったせいもある。
で、実際の映画はというと、これがかなり困った出来で、まずストーリーの肝であるところのルームロンダリングの扱いがストーリーに実はあまり生きていない。
ルームロンダリングを依頼する不動産屋にしたら、適当なところでロンダリングで貸している店子を追い出して次の正規の家賃で借りる店子に回さないと商売にならないはずだが、そちらのストーリーはまるで展開しない。
ヒロインが幽霊たちに情が移って出ていきたがらなくくなるとかいったストーリーの綾くらいないと、どうにも単調で困る。
事故物件というものがあるのは、幽霊を特に信じていなくても人死にが出た部屋はなんとなく縁起が悪いから敬遠するといった境界線にいる人が相当にいるからで、そのキワキワのところをすっ飛ばしていきなり幽霊が普通に見えるヒロインを連れてきたものだから、幽霊が普通の人間と大して変わらない存在になってしまっている。
背中に刃物を突き立てたままだったり、手首が切れてぷらんぷらんになっていたりといった幽霊が現れてもヒロインが驚きもしなければ怖がりもしないのは一応初めは面白いけれど、そのあとの展開が手詰まりになることにもつながる。
一種の無風状態を描きたいらしいのはわかるけれど、端的にいって設定だけでストーリーが転がらないわけで、見ていてどうにもかったるい。
早い話、ここには幽霊が見えないキャラクターが出てきて見えるヒロインとの違いを際立たせるといった手続きが抜けている。だからかえってヒロインの変わっているところも生きてこない。
幽霊が見える、というか身近でいる一家の一種の人情話であることはだんだんわかってくるけれど、強引にとってつけたような感じが強い。
幽霊の一人を殺した犯人が見つけるミステリ的趣向もいささか強引。細かいところを言うと、警察に届ける時はこちらから警察署に行かないか。
余談だが、松原タニシの話で事故物件の部屋の風呂に入っていたところ、湯気で曇った鏡に何か字が浮かんでくる、心霊現象かと思ったら「シャンプー」という文字だったのでなんだろうと首をひねったとか、「霊能者と事故物件視てきました」に出てくる部屋に物理的な欠陥があるわけでなく自殺者や殺人があったのがイヤだといった欠陥を「心的瑕疵」というずいぶんもっともらしい言い方をする(「マルサの女」で愛人のことを「特殊関係人」と言っているおもしろさに通じるような)といった豆知識的面白さが事故物件関連にはある。
(☆☆★★★)
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