占領中にパンパンに偽装されて殺された女の事件を追っていた記者が大新聞をクビになり、十年後の今は業界誌でゆすりたかりに近い真似をしているのが、占領軍と一緒に拷問に加わっていた通訳丹波哲郎が一枚噛んだ武器輸出のネタをつかんで復讐心から行動しているうちに正義感を取り戻していく。
怪しげな通訳役が丹波哲郎で、実際戦後は語学力ではなく度胸で通訳をやっていたという人ということもあって、押し出したっぷりに得体の知れない悪役を演っていて、しかしそれもラスボスではいという扱いも説得力あり。
革命軍反革命軍というだけでどこの国とは言ってないが、イメージとするとインドネシアだろう。日本人の女が絡むあたり、デヴィ夫人を思わせる。ちなみにデヴィ夫人がインドネシアに送り込まれたのは1959年でこの映画が作られる3年前。
別に占領軍が直接圧力をかけなくても新聞社の方で過剰対応(忖度と言ってもいい)して追い出してくれるあたり、半世紀後の今でも変わらない。
主演の鶴田浩二がずうっとサングラスをかけているのは「灰とダイヤモンド」のズビグニエフ・チブルスキーかなと思って調べるとやはり1959年公開。
ラストでサングラスを外して国会議事堂を狙みつけるシンボリックな小道具としてうまくアレンジしている。立場は違えど見て見ないふりをしているのが多いのはこれまた今に通じる。
精神病院の鉄格子に閉じ込められた奇声をあげ手へらへら笑っているようなルーティンの患者たちの描き方はちょっと今では許されないだろう。今でも家で監禁しているケースは最近見つかったが。
鶴田をひそかに慕っている大空真弓がラスト近くのシーンでT.S.エリオットのおそらく原書を持っている。どういう意味か。
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