国立映画アーカイブの深作欣二特集のトリ。
江戸川乱歩の原作小説を三島由紀夫が脚色した三幕劇をさらに映画化したもの。
舞台の初演(昭和37年)は水谷八重子・芥川比呂志の主演、同じ年(!)大映で井上梅次監督、新藤兼人脚色、京マチ子・大木実主演で映画化され、昭和44年に丸山(現・美輪)明宏・天地茂主演で再演され、大好評、さらに松竹で再映画化されることになった。
学研M文庫の三島由紀夫著「黒蜥蜴」の美輪明宏の解説によると、
私(美輪)はプロデューサーの方に、
「映画はやっぱり監督のものですから、監督次第ですね」とお返事したんです。巨匠級の監督の名前がいろいろあがりましたよ。でも私は反対したんです。
「古いね。今はパンクの時代よ。もっとはじけているのはいないの?」
「ちょっと松竹にはいないですね」
「どこでもいいから、そういう人をさがしてきてよ」
「それじゃ、三日余裕をください」
それで三日目になったら、プロデューサーが「東映にひとりいます」と言ってきたんです。正確には東映を自由契約になっているということなので、「つまり、クビになったということ?」と聞いたら、「そうです」と。
「東映が使い切れないでいるんじゃないの。意外と掘り出し物かもね。会わせてよ」と頼んで、その監督に会って話してみたら、その人はルイ・アラゴンの詩をフランス語でそらんじたりしている。「おもしろいのがいるな、これは化けるな」と思って、彼が帰ったあとに、すぐ決めたんです。それが深作欣二さんでした。
とある。
実際、深作欣二の東映での表看板というべき実録路線とまた違った、なんともいえないケレンと耽美が横溢していて、こういうのも作れるのかと思わせる。
冒頭からビアズレーの画を壁画にした原色のライトで照らされたクラブでボディペインティング風の紋様を描いたぴったりした衣装を着た女の子たちがゴーゴー(古いね)を踊っているというあたりからサイケデリックというかオリジナルの「サスペリア」みたいというか、十分すぎるくらいぶっとんでいる。
ああいう西洋画を日本に持ちこむというのは、「里見八犬伝」のクリムト(だったっけ)なんかにも通じるのではないか。
あからさまに荒唐無稽な作り物であることに開き直った、というか、セリフ=言葉の編み方ひとつを頼りに作り物であることの剣が峰を渡っていくような作り。
三島由紀夫の特別主演シーンには場内から笑いがかなり漏れていた。
「黒蜥蜴(1968)」 - 映画.com
江戸川乱歩の原作小説を三島由紀夫が脚色した三幕劇をさらに映画化したもの。
舞台の初演(昭和37年)は水谷八重子・芥川比呂志の主演、同じ年(!)大映で井上梅次監督、新藤兼人脚色、京マチ子・大木実主演で映画化され、昭和44年に丸山(現・美輪)明宏・天地茂主演で再演され、大好評、さらに松竹で再映画化されることになった。
学研M文庫の三島由紀夫著「黒蜥蜴」の美輪明宏の解説によると、
私(美輪)はプロデューサーの方に、
「映画はやっぱり監督のものですから、監督次第ですね」とお返事したんです。巨匠級の監督の名前がいろいろあがりましたよ。でも私は反対したんです。
「古いね。今はパンクの時代よ。もっとはじけているのはいないの?」
「ちょっと松竹にはいないですね」
「どこでもいいから、そういう人をさがしてきてよ」
「それじゃ、三日余裕をください」
それで三日目になったら、プロデューサーが「東映にひとりいます」と言ってきたんです。正確には東映を自由契約になっているということなので、「つまり、クビになったということ?」と聞いたら、「そうです」と。
「東映が使い切れないでいるんじゃないの。意外と掘り出し物かもね。会わせてよ」と頼んで、その監督に会って話してみたら、その人はルイ・アラゴンの詩をフランス語でそらんじたりしている。「おもしろいのがいるな、これは化けるな」と思って、彼が帰ったあとに、すぐ決めたんです。それが深作欣二さんでした。
とある。
実際、深作欣二の東映での表看板というべき実録路線とまた違った、なんともいえないケレンと耽美が横溢していて、こういうのも作れるのかと思わせる。
冒頭からビアズレーの画を壁画にした原色のライトで照らされたクラブでボディペインティング風の紋様を描いたぴったりした衣装を着た女の子たちがゴーゴー(古いね)を踊っているというあたりからサイケデリックというかオリジナルの「サスペリア」みたいというか、十分すぎるくらいぶっとんでいる。
ああいう西洋画を日本に持ちこむというのは、「里見八犬伝」のクリムト(だったっけ)なんかにも通じるのではないか。
あからさまに荒唐無稽な作り物であることに開き直った、というか、セリフ=言葉の編み方ひとつを頼りに作り物であることの剣が峰を渡っていくような作り。
三島由紀夫の特別主演シーンには場内から笑いがかなり漏れていた。
「黒蜥蜴(1968)」 - 映画.com