全編フィックスでワンシーンワンカットで描かれる、それぞれがどう繋がるのか、一見してはっきりしないエピソード集。
それらにこれこれしている男(あるいは女)を見たといったナレーションがかぶる。
イエジー⋅コシンスキの「異端の鳥」に続く第二作にして全米図書賞受賞作「異境」を思わせたりする。
現代の街を十字架を背負って鞭打たれながら歩く男のエピソードや、神を信じられなくなった牧師というベルイマンの「冬の光」ばりの牧師が間隔を置いて登場する。
ヒトラーの最後や、おそらく独ソ戦で負けたドイツ軍がおそらく捕虜収容所に向かって歩き続ける情景など断片的な叙述からも、相次ぐ戦争と神を信じられなくなった第一次大戦以来のタガが外れた精神状況をバラけたまま描いた映画とすると一応スジは通る。
むしろタルコフスキーの「鏡」のように繋がらない構造自体を味わう作りともとれる。