prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「デビル」

2011年08月07日 | 映画
つかみになる自殺した男は、本筋とどう関係あったのだろう。本筋に先立って悪魔に祟られたってだけなのだろうか。

オープニングの上下さかさまになった空撮(Scorpio=サソリという機材名がエンドタイトルで見えたので、どんなのかと思ったらこういうのでした)がまことに新鮮。
これが神と悪魔との関係とも関わってくるわけで、ウィリアム・ピーター・ブラッティ(「エクソシスト」の原作・脚色・製作)の「悪魔は神のコマーシャル」という言葉を思い出したりする。

主舞台になるエレベーターに人物たちが集まってくるカット、なんでもないように正面から撮っているが、奥に鏡がとりつけられているのだからそのまま撮ったらカメラとクルーが写ってしまうはず。デジタル処理ほか、相当手をかけているのだろう。
撮影は「羊たちの沈黙」や「シックス・センス」の日系二世のタク・フジモト。


トリックを支えるビルに入場した人の名簿、本当だったらアップでどういう名前が書かれたのかはっきり見る側の頭に入るように描く必要があったはず。それなしでセリフでずらずらっと言うから、もっとぴしっと決まる快感が出るはずがいまひとつ。

シャマランが監督した時ほど一発芸で終わっていない。
あとで考えるとかなり変なところはあるが、ともかくエレベーターに閉じ込められただけの話から大風呂敷を広げていく手際はまずまず。
まったく知らないキャストで固めているので誰の正体が何なのかわからないようになっているが、回想シーンでこの人誰だったっけと混乱するところあり。
(☆☆☆★)

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「悪夢探偵」

2011年08月06日 | 映画


夢の中に入っていく手順というかノウハウがどうもはっきりしなくて、荒唐無稽なりのルールとか法則がないとうまく場面が展開しない。
とはいえ、ノイズィな音響効果は強烈で、単純なスプラッタとは一線を画す。

警視庁のキャリアーにモデル型美女というのはあまりにリアリティがないが、文句言っても始まらない気はする。だけど警察権力をふるうわけでもないから、なんでこういう設定にしたのかと思う。

松田龍平のもともと異人がかった柄(父親ゆずりと言うべきか)が、悪夢に入り込める探偵という役にはまっている。
(☆☆☆)

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「無宿人御子神の丈吉 牙は引き裂いた」

2011年08月05日 | 映画
原作が同じ笹沢佐保(特別出演もしている)ということもあって、完全に「木枯し紋次郎」のエゴピーネン。
それだけならまだしも、中村敦夫がやはり流れ者で出てきて突如として主人公の丈吉に助太刀と戦ったり、突如として助太刀したりする。眼帯をしているから紋次郎ではないというつもりなのか、あまりに唐突な出方。

女性で時代劇はやたら女を手篭めにするからイヤだという意見があるけれど、これもそう。確かに特に70年代のはそういうのやたら多いね。女といえば菩薩みたいか、やる相手かどっちかみたい。今では女性客集めなければまるで商売にならないから持ち上げるようにしているが、本質的にはどんなものか。

原田芳雄のアウトローというのは柄に合っているけれど、いささか情緒的にべたついてテンポが悪いのは見ていてうっとうしい。
「御子神」と書いて“みこがみ”と読むのだが、映画のタイトルとするとこう読みにくいのはちょっとまずいのではないか。

撮影が宮川一夫だけれど、特にどうということのない出来。
(☆☆★★★)
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「復讐捜査線」

2011年08月04日 | 映画
殺される前に娘が吐いたり鼻血を出したりしているからどこか疾患があったのは明らかで、司法解剖で何らかの所見が認められなかったのだろうかとひっかかった。父親のメル・ギブソンもどこか悪かったのか何も聞かないし。
異常が認められたけれど上からの圧力で握りつぶされたとかいったフォローが本当なら要るところだろう。

母親(つまりギブソンの妻)はどんな人で、どうしていなくなったのか、という大事なところの書き込みがないのはどんなものだろう。早くに亡くなって男手一つで育てた(だから殺された怒りが増幅した)のかと思っていたら、幻想シーンの四つくらいの時の娘に髭をそるところを見せる会話で小さい時は母親がいたらしいのがわかる。どうなっているのか、それとも寝ぼけていて見逃したのか。

アクション・シーンはあまりなく、ショッキングな効果を狙ってかいきなり撃たれたり轢かれたりで、そこにいくまでのわくわく感の盛り上げが手薄。

なんかおっぽり出すみたいな公開の仕方だったが、丸の内の劇場は結構混んでいた。ただし年齢層、高し。九割は男。こういう客層は冷遇されます。
(☆☆☆)

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主演 メル・ギブソン
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「エッセンシャル・キリング」

2011年08月03日 | 映画
セリフのまったくない緊迫感というのは、いかにもこれが映画という感じになる。
音響デザインが卓抜。最初の方で近くで爆発があったため耳が聞こえなくなった主人公の主観で尋問官が恐ろしげな顔で怒鳴る顔は見えても何言っているのか聞こえない、というのがラストの方の聾唖者の女性とつながってきて、声=言葉のない世界を作っている。

主人公の食べるもの。蟻、木の皮、生の魚、母乳。幻覚作用があるのではないかと思わせる赤い実。母乳はともかく、これ消化できるのか、かえって腹壊さないかと思えるものばかり。
人も動物も平気で殺す。火の起こしかたや動物の捕らえかた・さばきかたなど、精錬されたサバイバル・テクニックなどまるで出てこない。
自分が動物用の罠にかかったりしてしまうのも、動物と人間とで区別がないのを実感させる。
ただ、ラストがよくわからなかった。

エンド・タイトルを見ていたら、key gripのJerzy Nogalという人の名前にだけ四角く枠がはまっていた。なんだろう。まさか亡くなったのか?ものすごく過酷なロケだと思えるだけに、なんだか気になる。
(☆☆☆★★)

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監督 イェジー・スコリモフスキー
紀伊國屋書店

「ロッキー・ホラー・ショー」

2011年08月02日 | 映画
原作の舞台は古い映画館のスクリーンとカーテンをそのまま装置として使い、昔のB級怪奇・SF映画のパロディを展開するという趣向だったそうだが、その映画化もライブ感を大事にして観客がスクリーンの中と一緒になって騒ぎながら見るという体験型映画として定着して、1975年の製作から30年以上経った今でも上映されている。

それをビデオで見ても肝腎のライブ感はすっぽ抜けてしまうので、まあ芝居をビデオで見るようなもの。純粋に映画として見ると(というのも変なので、映画館で騒いで見る方が純粋とも言える)、ミュージカルセンスはかなりたるい感じ。

もともと昔のB級怪奇・SF映画っていうのが気楽なデートムービーとして見られていた名残ではないかと想像する。大予算で作るという選択肢もあったが、あえて低予算で作ったのがかえってよかったのだろう

スーザン・サランドンの若いこと。役もかなり軽薄な女の子といったところで、今日の姿はまず想像できない。


2011年7月に読んだ本

2011年08月01日 | 
prisoner's books2011年07月アイテム数:15
<中東>の考え方 (講談社現代新書)酒井 啓子読了日:07月09日{book['  rank'  ]

珍獣の医学田向 健一読了日:07月09日{book['  rank'  ]

死に方の上手な人 下手な人 (集英社文庫)フレディ 松川読了日:07月22日{book['  rank'  ]

人間の覚悟 (新潮新書)五木 寛之読了日:07月22日{book['  rank'  ]

悲劇の名門 團十郎十二代 (文春新書)中川 右介読了日:07月27日{book['  rank'  ]

大いなる眠り (創元推理文庫 131-1)レイモンド・チャンドラー読了日:07月30日

秘史「乗っ取り屋」 暗黒の経済戦争 (だいわ文庫)有森隆,グループK読了日:07月30日

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「サンザシの樹の下で 」

2011年08月01日 | 映画
チャン・イーモウがおなじみの強烈な色彩を排して、モノトーンに近い抑えた画調で、ヒロインのチョウ・ドンヨィに華奢な身体で肉体労働させるところを何度も見せたり、何かの冗談かと思うくらい性知識がなかったりと、これでもというくらい純情可憐な初恋物語が描かれる。純情可憐のてんこ盛りという感じ。

鼻の頭を押してへこんだまま戻らなかったら処女、なんて処女判定法(?)が出てきたのにびっくり。中国にもあるのね(あるいは中国から伝わったのか)。

文化大革命で農村がこんなに親切に学生を受け入れたのかいな、という気はする。労働力にはならないし食い扶持はかかるしで、迷惑がられたと聞くけれど。ちなみにイーモウ自身は文革で下放された時の生活になじめたらしい。
(☆☆☆★)

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