晴れ、11度、66%
2泊3日で福岡に帰っていた。福岡と香港の直通便が復活して、4時間ほどの飛行時間で行き来できる。
今回は所用で、土地感のない町に出向くことになった。私、福岡を離れたのは18のとき。時々帰るといっても、町の広がりは西に東に海を埋め立てるはで、まったく付いて行ける筈がない。同じ区内なのだが、福岡の南にある油山のほうに向かう。朝早く、イエ、暗かったのでそう思うだけ、朝の8時半ごろ、9時の約束の時間に向けて教えられたバス停で降りる。
我が家より、少し山に向かっただけなのに風の冷たさが違う。バス停からすぐと思っていた私、歩いても歩いても目的の住所に行き着かない。そのうち山道に差し掛かる。その上、人の姿などどこにもない。民家の並ぶ道を歩いているのに。そして見えたのが、上の電信柱。
イノシシが出るらしい。 どうしよう?寒いので着膨れている上に、靴も走るのには適していない。いやいや、走って逃げてはいけないのかしら?いろいろ思い巡らす。
香港にもイノシシはいる。九龍サイドの西貢の山間。冬場は地元の人がやはりイノシシを捕まえて鍋にする。実は、私も西貢の山中を歩いているときイノシシに遭遇したことがある。でも、あの時は家人と一緒。イノシシ一家は、おとなしく道を横切って山に入ってくれた。怖い私は後ろを振り返り振り返り、家人に着いて歩いた。 今日は私一人。もしイノシシが、出てきたらと、大事な用件よりもそのことで頭はいっぱい。
うっすらと雪をかぶった油山の山肌がぐっと目の前に広がった。ヤット目的の建物にたどり着く。イノシシ、イノシシと思って歩いていたのでとても長く感じたのだが、バス停から15分ほど。
考えてみると福岡にイノシシが出ることすら私は知らないで、この町で育ったのだ。産まれ育った土地が急に遠くに感じられた。