雨、25度、93%
小さい頃はあんものが食べれませんでした。白いあんも小豆のあんもダメでした。それなのにきみしぐれだけは喜んで食べていました。なぜだったのでしょうね。
日本から持ち帰った手亡の白豆。 大納言をやや大きくした白豆にしては小振りな豆です。柔らかく炊いたこの豆を漉しては水に晒し、さらしで絞り上げます。豆柄はなくなりますから、実際の豆の重さよりずっと少なくなるこしあんです。こしあん作りの醍醐味はこの絞り上げるところにあります。さらしを開くと、
さらさらのでんぷん質が。この時、手間暇かけた喜びが胸一杯に拡がります。さあ、後は砂糖を加えて練り上げるだけです。砂糖から出た水分が飛んで、いい艶が出始めると
こしあんの出来上がりです。もちろん中に入れる小豆のあんもこしあんでなくては、きみしぐれは美味しくありません。そこで、2日に分けてあん作りをしました。
きみしぐれは白あんに卵の黄身を混ぜた黄味あんで、小豆のあんを包み蒸し上げて作ります。蒸すのは5分程ですが、その間決して蓋をとりません。うまくひび割れてくれますようにと、蓋をとります。 みんな笑ってるように、ひび割れてくれました。ちょっとしたあんの水気の具合で、割れないことも何度かありました。
少し冷めたところを、作った人の役得でお口にポイ。もちろんモモさんにも黄味あんをあげました。少し暖かみの残っているきみしぐれを食べたとき、卵の黄身の香りが拡がります。あー、これだわ。あんこが嫌いだった小さい時に、きみしぐれだけは喜んで食べれたのは、この卵の黄身の匂いだったのです。やさしい匂いがします。
さて、このきみしぐれを持って、今日も飛行機に乗ります。あんこの夢を見るという私の母親に届けます。このひと月、食が細くなっていると施設から連絡がありました。喜んで食べてくれますように。