小雨、26度、92%
滋賀県の信楽にMIHO MUSEUMという美術館があります。桃源郷を模したという山間の美術館だそうです。この美術館でこの秋、陶工尾形乾山の特別展示が行われるそうです。秋口から年末にかけてこの私チョイと忙しくなります。そんな事情を知っている友人がMIHO MUSEUMから出版されている乾山の図録を贈ってくれました。
乾山の焼き物も絵も好きです。なかなか本物を見る機会がありません。日本にいませんから当たり前ですが、いつもこうして写真を眺めるばかりです。この本は、乾山の焼き物に実際に日本の四季折々の料理が盛り付けられています。見るのも楽しい器ですが、どんな高価な器でも使うためのものだと思います。そして使い手の料理の腕に盛りつけに器の価値はまた変わって来ます。そんなことを思いながら、溜め息混じりにページをめくります。初めて見る器も数個、目を見張ったものと言えば、「色絵阿蘭陀写市松紋猪口」江戸の時代に青と白の市松紋です、口は一線金が引かれています。今の時代に見てもモダンの一言。写真には十個のその猪口にそれぞれ違った珍味が盛られています。大きな椿はよく見る図柄ですが、写実とは違って一息呼吸を抜いたその絵には微笑ましさも感じます。
古い物ですから貫入、欠けも見られますがそれがまたひとつの姿に納まっています。日本の持つ静けさを料理に器に感じる図録です。
そして、彼女がもう一冊忍ばせてくれていたのが、葉室麟「乾山晩愁」。 恥ずかしい事に葉室麟という作家を知りませんでした。ここ20年、ほとんど日本の小説から遠ざかっています。どんな作家かも知らないで読み始めました。乾山とその兄光琳を乾山の晩年に時代を当てて書かれたものです。乾山、京の陶工ですが晩年は江戸でも窯を持ったことを知りました。この本は4つの短編からなっています。4話とも江戸の絵師の話です。最初の乾山晩愁と最後の一蝶幻景にうまく赤穂浪士の討ち入りの話を絡ませています。久しぶりに面白い話を読みました。葉室麟、若干私よりお年が上ですが福岡の大学を出た方で、この乾山晩愁がデビュー作だそうです。
実は、この乾山の本をルーシーリーの本と代わる代わるに読んでいました。ベットの上でひっくり返ってはいますが、読みながらなんと贅沢な時間かと感じます。こんな贅沢をいつもさりげなく私の手元に届けてくれる友人です。