チクチク テクテク 初めて日本に来たパグと30年ぶりに日本に帰ってきた私

大好きな刺繍と大好きなパグ
香港生活を30年で切り上げて、日本に戻りました。
モモさん初めての日本です。

「 THE PIANO TEACHER 」JANICE Y,K,LEE

2016年05月12日 | 

曇り、23度、84%

 香港で生まれ育ったJANICE Y,K,LEEの最初の小説の舞台もやはり香港です。私は彼女の最新作である2作目の[THE EXPATRIATES」をはじめに読みました。舞台は香港ですが、「THE PIANO TEACHER」の時代は1940年代半ばから1950年代半ばにかけての話です。第二次世界大戦の始まる前から戦後に渡ります。その間、香港は日本に占領された時期があります。少し入り組んだ恋愛小説です。

 1942年、イギリス人Willは香港にやって来ます。WillはTrudyという資産家の娘で中国人とポルトガル人のハーフの女性と恋に落ちます。ところが日本に占領された香港では、イギリス人はキャンプ生活を余儀なくされ隔離状態に置かれます。Trudyは日本の軍隊の幹部に見初められ、日本人の愛人になりその日本人の子供を身ごもったまま行方不明となります。戦後Trudyの行方を探すWillですが、確とは掴めないままに香港でお抱え運転手として働きます。

 戦後7年、イギリスから結婚して間もなくやって来たClarieは、中国人家庭の娘にピアノを教えることになります。そして、その家のお抱え運転手のWillと出会います。WillはClarieの中に喪った恋人Trudyの面影をみ、ClarieもまたWillを好きになります。ところがWillがみているのは自分ではなく亡くなったTrudyだと気付いたClarieは、夫からもWillからも離れ自立するところで話は終わります。

 戦中日本軍が香港でした残虐な行為の数々、中国の骨董を日本に持ち出そうと企てていたことなどが話を複雑にします。言葉では書かれていませんが、Trudyは日本人によって殺されたと暗黙で分かります。Willが一筋にTrudyを思い続ける恋愛小説に違いありませんが、日本人で香港に住む私は、戦時下の日本軍のことに思いを馳せます。あくまでのフィクションですが、作者、Janiceは当時のことを随分調べたようです。そしてまた、巻末にある彼女のインタビューの中には、この本を日本人にも読んで欲しいとあります。2009年に刊行されたこの本、まだ日本語の翻訳は出ていないようです。

 時代は半世紀以上も遡りますが、この香港を舞台にした話は、私が毎日通る道やピークから見える景色の描写が今と変わらぬことに身近に感じる話でした。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする