晴、8度、72%
昔の日本ではトマトは生で食べるものだったと思います。加熱してジュースにしたりケチャップを作ることはあってもトマトを炒めて食べるという発想がなかった40年近く前です。最近では中華料理の「トマトと卵の炒め物」に始まってトマトを炒めた料理はたくさんあります。
香港に移り住んだ当初、30数年前のことです。街の気軽な食べ物屋さんのメニューに「トマトと牛肉炒め」を見つけました。トマトは生で食べるものと固定概念がありましたから、物珍しく早速注文しました。中華料理の炒め物の野菜は軽く火が入っているだけです。野菜本来の歯ごたえが残っています。酸っぱいトマトの汁と牛肉が絡まってそんなに美味しい食べ物だとは思いませんでした。
市場に行くとトマトは大きなカゴいっぱい売られています。みなさん、たくさん買って行きます。香港人がトマトを食べるのに加熱をする、炒めたり、スープに入れると知ったのはその後のことです。そのはず、トマトを生で食べるにはあまりに美味しくないトマトでした。
帰国後、驚いたことに日本のトマトはあまりにもお値段が高い。炒めて食べるには勿体無い値段と甘さです。完熟の甘みのある小さなトマトを皮が弾けるくらい炒めると、汁の具合とプチュっと潰れるトマトが絶妙です。久々に「トマトと牛肉炒め」を作りました。
国によって素材の用い方が違うのをあの30年前の「トマトと牛肉炒め」は初めて私に教えてくれました。