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チクチク テクテク 初めて日本に来たパグと30年ぶりに日本に帰ってきた私

大好きな刺繍と大好きなパグ
香港生活を30年で切り上げて、日本に戻りました。
モモさん初めての日本です。

「坊ちゃんのお嫁さん」

2021年05月04日 | 日々のこと

晴、14度、78%

 高齢者のワクチン接種がそろそろ始まります。義母の施設から接種は施設内で行うので郵送されて来る「ワクチン接種券」を届けて欲しいと連絡を受けました。主人の実家の郵便物の点検は月2回ほどの私の仕事です。郵便物は官公庁からの物ばかり、私信など一つもありません。チラシでいつもいっぱいです。

 「ワクチン接種券」はまだ届いておらず、いつものように家に入り戸締りを確認します。お天気が良かったので裏庭に回りました。草ぼうぼうの庭にアヤメが一輪咲いているのが見えました。雑草をかき分けて手折ったつもりが根っこまで付いて来ました。すると木戸口で「下川さん、おられますか?」と大きな声が聞こえます。家の前に停めたままの車が邪魔になっているのかと急ぎました。

 木戸口を開けるとワイシャツ姿の品のいいおじいさんが立っていました。おじいさんは私を見て一瞬戸惑います。間があって、「坊ちゃんのお嫁さんですか?」と聞かれました。瞬間、「坊ちゃん=64歳の主人」と理解しました。「はい、どちら様でいらしゃいますか?」と私。「隣の者です。」とそこからは義母の近況などを尋ねてくださいました。

 この家に嫁いで来て43年、地元に住んだことがなく主人の実家のご近所の方で知っているのは右隣のご主人だけです。義母と一緒に歩いていて声をかけてくださった方もすぐにお顔もお名前も忘れてしまっています。幾度か姿をちらっと見た左隣の目の前のおじいさんはすっかり失念していました。耳が遠いのでしょう、大声で町内のお知らせに目を通して欲しいと言葉を残されて帰られました。

 高齢者の住まいが空き家になると近隣の方達は火事などを心配なさっていると思われます。左隣のおじいさんも車が止まっているのを見て急いで出て見えたのだと思います。小さなことですが、昨年配布された「マスク」はポストから姿を消していました。どなたか家の事情を知る方が持って行かれたのでしょう。マスクが品切れの時期がありましたから。

 帰りの車の中、「坊ちゃんのお嫁さん」この言葉を繰り返していました。90歳を過ぎた方から見れば64歳の主人はまだ「坊ちゃん」なのでしょう。主人の今の顔を思い浮かべて、クスリと笑います。優しい響きの「坊ちゃんのお嫁さん」こんな言葉が出て来るおじいさんのお人柄も偲ばれます。そして何より「坊ちゃんのお嫁さん」こと私です。初めてこんな嬉しい呼び方をされました。

 一輪のアヤメと共に「坊ちゃんのお嫁さん」は心に残る言葉になりました。

コメント (2)
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