曇、19度、92%
春の瀬戸内地方の名物、「いかなごのくぎ煮」をいただきました。関東では「小女子」と呼ぶ小魚です。香港時代、春になると神戸のご実家からお母様手作りの「いかなごのくぎ煮」が送られてくるご家庭がありました。その「いかなごのくぎ煮」を数年、春になると頂戴しました。日本のこういうものをいただくと、海外に長く住んでいる者には身に沁みて嬉しく思います。
久しぶりの「いかなごのくぎ煮」を炊きたてのご飯だけでいただきました。 「いかなご」の味だけを楽しみたい思いです。佃煮ですから味が濃い食べ物ですが、やはり素材によってその香りが違います。お茶請けか、こうして白いご飯で食べるのが私の好みです。福岡でも生の「いかなご」を先月見たばかりです。広島からやってきた「いかなご」でした。「いかなご」と見ると香港時代に数年通ったそのご家庭を思い出します。
実は「いかなご」と「小女子」が同じものだと知ったのはつい最近、帰国後でした。日本を離れる前に住んでいた街には駅前に「佃煮屋さん」がありました。月末主人のお給料が入るとちょっと贅沢にその「佃煮屋さん」を訪れました。小エビや貝の佃煮を買います。そこの売りは「うなぎ」の佃煮でしたが、お値段が高くて手が出ませんでした。小さなビニール袋に入れられ輪ゴムできゅっと締められた小袋を2つ買うのが楽しみでした。40年前の生活が小さい頃の話です。そこで幾度か買った「小女子」が「いかなご」と同じだと知った時はなぜか嬉しく思いました。「有明家」という佃煮屋さんは今も昔の店構えで営んであります。
歳を重ねると、食べ物一つにも思い出がついてきます。その思い出も一緒に庭の山椒の葉をパラリと振って「いかなごのくぎ煮」を美味しくいただきました。