こんな本が出版されるのを待っていました。
グリム童話や西洋の多くの物語の中で、ハシバミやネズやニワトコやモミノキやボダイジュ、ノバラやイラクサやチシャやヒナギクや様々な木や草花が重要なカギを握っていることがよくあります。
それらの木や草の名を目にする度にどんな植物なのかなー、よく似た名の日本の木と違うのかなーとか思いながら、時には植物図鑑を開きながら読んでいました。
この本の著者は北ドイツ在住、ドイツのメルヘンの中に描写される植物を実際に目にして、それらの木や草がドイツで古来からどのように人々の暮らしと結びついてきたか、
伝説や詩や歌などもひも解きながら語っています。
そこからはドイツの自然風土と人との密接な関係が浮かび上がって来ます。
各章のはじめに各メルヘンの要約、章末にはその植物についての詳しいメモがあり読みやすく便利です。
日本でももちろん、世界中でその土地に暮らす人々にとって特別な意味を持つ木や草、
直接食べたりするわけではないけれど、生活になくてはならない役割を持つ木や草があるというのは面白くて楽しいことです。
圧倒的な自然の力の前の小さな人間の営みをそれぞれの物語は実に見事に紡ぎあげてきたものだと思います。
メルヘンと動物、メルヘンと虫たち、さらに、その日本編、アフリカ編…なども読んでみたいな。

『メルヘンの植物たち』江村一子著 研成社 2010