『夜想曲集 音楽と夕暮れをめぐる五つの物語』
カズオ イシグロ著 土屋政雄訳 2009 早川書房
カズオ イシグロは現代のイギリスでもっとも高名な作家のひとりだそうです。
図書館の英米文学の棚の前で何度か手にとって見ては、
また書棚にしまっていたこの作家の短編小説集を初めて読みました。
この「夜想曲集」はそれぞれ独立した5つの物語に題名の通り「音楽」がそれぞれの物語と絡まってちょうど一枚のLPやCDアルバムのように一冊になっています。
中でも「モールバンヒルズ」と「夜想曲」を面白く読みました。
「夜想曲」では主人公の才能あるサックス奏者がお前はブ男であるがゆえにメジャーになれないのだと妻やマネージャーにいわれます。
いろいろあってその男が突然整形手術を受けることになります。
隣の病室に才能は無いけれど有名なセレブリティがいて主人公と同じように術後の包帯ぐるぐる巻きになって入院していました、そのセレブリティと過ごす数夜の出来事の物語です。
才能ってなんだ!才能がなんだ!才能って謎、才能は人格と関係ないのに…などと思うことがよくあります。
そんな気分も飲み込んで見事な短編になっています。
どの短編にも落ちがないのが気にいりました。
どこかですれ違ったことがあるようなドラマ、あるいは人生の断片をさらっと、、
けれど綿密に組み立てられた物語をきめ細かく描いています。
音楽を聞いた後に残る余韻のようなものがこれらの物語にはあります。
うまいなーと感心しました。
この本は初の短編集だそうですが、
これから、長編をどんどん読んでみようと思います。