中日新聞で、本書の翻訳者を紹介する記事を読みました。
早速図書館に予約して、だいぶ順番を待ち、ようやく借りてきました。
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☆『カースト』アメリカに渦巻く不満の根源
イザベル・ウイルカーソン 著
秋元由紀 訳
2022、岩波書店
(18か国語に翻訳されたベストセラー・ノンフィクション・496頁)
☆上の青い文字をクリックすると、試し読みで、目次など23頁まで読むことが出来ます。
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私が子供の頃の教科書には、
コロンブスが1492年に「新大陸」を発見した、と書いてありました。
まるで何もない未開の大陸を発見したかのような記述でした。
事実は、その頃、現在の合衆国地域に住んでいた先住民の数は、200万~1800万人と推定され、
アステカ、インカ、マヤなどの都市には計7000~9000万人もの人が住んでいたと考えられています。
1世紀半後には、350万人くらいになってしまったそうです。
ヨーロッパからやってきた人たちが、
金も銀も土地も水も、人の命も、歴史も、ありとあらゆるものを奪い盗ったのです。
初期には先住民を奴隷に使おうとしたそうですが、
白人の持ち込んだ病気に感染してたちまち多くの人が亡くなってしまいました。
アフリカから連れてきた黒人は比較的ヨーロッパから持ち込まれた病気に強いことで、
奴隷船でどんどん送り込まれてきました。
アフリカでは、「黒人」はいません。それぞれの地域のそれぞれの名があるのです。
ベルベル人、ハウサ人、ヨルバ人、 イボ人、オロモ人、アムハラ人・・・
ヨーロッパで、ポーランド人とか、ドイツ人とか、オランダ人とかそれぞれの地域の名で呼ぶように。
けれど、アメリカ大陸では、黒か白かで分けられ、黒はアウト・カーストとして、
人格を剥奪され、暴力と虐待に曝され続けてきました。
ナチスは、ユダヤ人差別のために、アメリカの黒人を差別する様々な法律を研究し真似たそうです。
そのナチスでさえ、そこまではできない、と言ったほど、
アメリカでの黒人差別の実態は、理不尽で残虐非道だったそうです。
リンチはまるでカーニバルの見世物のように、子どもまでもが見に集まることもあったそうです。
また、遺体の一部を持ち帰ったり、死体のそばで写真を撮って、
絵葉書にして送り合ったりしたそうです。
自由も、民主主義も、ずーっと「黒人以外」の話でした。
しかしアメリカの土台を実際に築いたのは黒人だったのです。
ジム・クロウ法(差別法)が1964年に撤廃され
今では、スポーツや、音楽や、絵画や、あるいは研究や、ビジネスで地位を得、政治家やお金持ちになった黒人もいますが、
差別は無くならず、社会を腐らせ、混乱させ、多くの人が、苦しんでいます。
「差別があまりにも長く続いたために、多くの人々の心の奥に刷り込まれてしまっている・・・」
と著者は書いています。
重たい本でした。
今も続く欧米白人の、差別、そして際限のない強欲のルーツを見た思いがしています。
もう1冊、こちらも重たい本。
☆『収奪された大地』 ラテンアメリカ500年
エドゥアルド・ガレアーノ 著
大久保三男 訳
1991年、藤原書店(494頁)
*1997年 新装版
平和を求める中南米の人々の心を踏みにじってきたのも、
金や銀や石油やゴムやコーヒーや様々な資源を我が物にしようとするアメリカやヨーロッパの国々の「強欲」です。
でも、この本が書かれてから、32年経ちました。
ウルグアイ、コスタリカ、メキシコ、ブラジル、ベネズエラ・・・
ほんの少しづつですが、世界は変わりつつあるのかもしれません。