SFやファンタジーの作家、ル=グウィン(ゲド戦記の作者)は80歳の今も精力的に活動を続けています。
このフアンタジー3部作(それぞれ独立して読める)には若い人たちに向けて、
作者が考えていること、言いたいことが詰めこまれています。
その思いが直接的過ぎて、生っぽくて少々疲れますが、
9,11以降のアメリカに住む一人の女性として、
どうしても言っておきたい、やむにやまれぬ気持が伝わってきます。
舞台はゲド戦記や指輪物語を彷彿とさせる世界ですが、
作者は、「他国の宗教や文化を知ろうとせず、
自分の信じる宗教や文化を唯一の正義として
圧倒的な力(暴力)でおしつける愚かな行為」を告発しています。
まさに愚かなアメリカの姿です。
自由とは何か、そして男女差別の問題も大切なテーマになっています
高地に住む人の中に、生まれながらに特殊な力「ギフト」を持っている人がいた、
「魔法」ではなく「ギフト」と作者は表現し話は始ります。
一番ぶ厚い「パワー」は記憶力のギフトを持った少年ガヴィアの辛い旅の物語、
ぐいぐいひきこまれ一気に読みました。
『 西のはての年代記「ギフト」「ヴォイス」「パワー」 』
Ursula K.Le Guin
河出書房新社2008年