イチロー、2000安打
敵地ファンの祝福に「感慨深い」
安打記録を追って DAY3
■グリフィーは記念ボールに落書き
目を細めたのは、単にまぶしかったからか。
2001年に入団以来、アスレチックスのファンにしてみれば、パブリック・エナミー(民衆の敵)ナンバーワン。
その彼らが、昨日も紹介したように、スタンディングオベーションを送る。一塁側内野席で先頭になって大きな拍手を送っていたのは、アスレチックスのユニホームを着ていたファン。
かつては、激しいブーイングを浴びせてきたファンらが、ここまで変わる。イチローはそのギャップに戸惑いを覚えたよう。
「最初の遠征で僕はコインを頭にぶつけられたり、アイスが飛んできたりしたんですけど、この場所で、今日ヒットを打って、観客の人が祝福してくれたっていうのは、ちょっと感慨深いものがありましたね」
痛烈な当たりだった。
1ボールからの2球目は、内角のベルト付近。
91マイル(約146キロ)のストレートを振り抜くと、右方向に目の覚めるようなライナーが飛んだ。
電光掲示板にお祝いのメッセージが流れる代わりに、スコアボードのモニターは、日本人ファンらが持ち込んだ「祝2000安打」のプラカードを映し出していた。
そのとき、ブルペンの味方投手が万歳三唱。
「まあ、うれしいですよね。チームメートのそういう反応は」
イチローは、頬(ほお)を緩めた。
しかし、こんな言葉を付け加えている。
「グリフィー以外はね」
なんとケン・グリフィーは、2000本の記念ボールに落書きをしたそう。
なんて書いたのか? イチローが笑いながら言った。
「『レフトへのシングル、ジオ・メトロからのヒットおめでとう』。ハハハハハ、名前間違ってる(実際はライトへの二塁打、相手投手はジオ・ゴンザレス)。それは意図的だけど」
■9シーズンでの安打数ではダントツ
さて、メジャー2000安打。ウェブサイト『ベースボール・リファレンス』によれば、イチローは259人目。よって、この順位そのものが注目されることはないだろう。しかし、特筆すべきはそのスピード。
試合数そのものは1402試合目で史上最速のアル・シモンズの1390試合にわずかに及ばない。
イチローは、そんな記録について「知らなかった」と話したが、メジャ-9年間で2000安打を放った選手は過去にいない。
9年というスパンで見たとき、イチローの次にヒットを打っているのは、ウィーリー・キーラーの1905本(1894~1902年)。なんと現時点では95本も差がある。
イチローと同じ2001年からの9年で見れば、9月6日(現地時間)現在、イチローを除いて最もヒットを打っているのはデレック・ジーター(ヤンキース)だが、その彼でさえ、1710本に過ぎず、そこには300本近い差がある。
おそらくこの数字は、今後、破られない記録として君臨し続けるのではないか。
ホームランなどに比べれば注目度が低いが、これはいかにも玄人好みの記録と言えそうだ。
●9シーズンでの最多安打記録
1:2000本(2001~09年9月6日現在)イチロー
2:1905本(1894~1902年)ウィーリー・キーラー
3:1891本(1893~1901年)ジェシー・バーケット
4:1882本(1894~1902年)ジェシー・バーケット
5:1846本(1895~1903年)ウィーリー・キーラー
●2001年以降の9シーズンでの安打数(9月6日現在)
1:2000本 イチロー
2:1710本 デレック・ジーター
3:1686本 アルバート・プホルス(カージナルス)
4:1657本 ミゲル・テハダ(アストロズ)
5:1656本 マイケル・ヤング(レンジャーズ)
さて次は、9年連続200安打。あと5本に迫った。
アナハイムでのエンゼルス3連戦が待っている。
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