みどりの一期一会

当事者の経験と情報を伝えあい、あらたなコミュニケーションツールとしての可能性を模索したい。

白井康彦さんのお話~<どう進める 困窮者支援>滋賀・野洲市の相談態勢/「実施しない」自治体が大半

2015-08-10 23:48:50 | ほん/新聞/ニュース
昨日の午後の市民派議員アドバンスコース・政策研究会が終わってから、
講師の白井さんとスタッの皆さんといっしょに、
地下でお茶を飲みました。

二日間の講座で一枚も写真を取ってないことを思い出し、
さいごに一枚、パチリ。


白井さんとアドバンスコースのスタッフのお二人です。

白井さんに話していただいたテーマは、
生活困窮者自立支援法のことだったので、
白井さんが、中日新聞生活面に連載された記事を
資料として配布されました。

資料やデータをもとにしたわかりやすい白井さんのお話を受けて、
参加された市民派議員の皆さんからも、
質問や現場の話が出されて、有意義な時間でした。

白井さん、ありがとうございました。

わたしもブログで紹介させていただいた記事なので、
その中のいくつかをあらためて紹介させていただきます。

先進自治体の滋賀県の野洲市のことです。

滋賀・野洲市が部署超えた連携 どう進める困窮者支援
2015年4月9日 中日新聞

 生活が苦しい人の自立を自治体が支援する生活困窮者自立支援法が今月1日に施行された。取り組みが遅れ気味の自治体が目立つ中、関連施策を次々に打ち出した滋賀県野洲市を参考に、制度のポイントを考える。まずは「相談をどう呼び込むか」。 

 人口約五万人の野洲市。市役所正面玄関を入ってすぐに、新法への対応を担当する市民生活相談課がある。課長補佐の生水(しょうず)裕美さん(53)や主任の宇都宮誠実さん(33)らが相談に来た市民の話に耳を傾ける。

 直接、同課を訪れる市民ばかりではない。社会福祉課、税務課、保険年金課といった他部署の担当者が、市民生活相談課に困窮者を連れてくることもしばしばだ。「『奈落の底に落ちそうだ』という市民のSOSを市役所のどこかの部署がキャッチし、その人をうちの課に紹介する。自分たちが生活状況をしっかり聞き取り、関係部署とも話し合って解決策を考えていく」と宇都宮さんは話す。

 市民が発するSOSの代表的な兆候は滞納だ。生水さんは「滞納は生活が行き詰まったサイン」と説明する。住民税や国民健康保険(国保)税、学校給食費などを滞納している市民がいたら、担当職員が、本人の同意を得た上で同課と滞納の情報を共有。滞納の原因が借金の場合は、法律家を紹介し債務整理をしてもらう。

 最近では、こんな事例もあった。労働に見合わない低賃金な企業に勤め、国保税などを滞納していた四十代男性が、同課への相談をきっかけに、市と滋賀労働局が連携し、就労と生活を一体で支援する窓口「やすワーク」に転職についても相談し、別の会社に再就職。危機を脱して国保税などが払えるようになった。

 病院や介護施設、民生委員など市役所以外から紹介されて同課に相談する市民も多い。同課が相談を受けた困窮状態の市民は、二〇一一年度からの四年間で九百人ほど。人口の2%近くが駆け込んだ計算だ。

      ◇
 生活困窮者自立支援法で、自治体に義務づけられた事業は、困窮者からの相談受け付けと、仕事や住まいを失った困窮者への家賃相当の住居確保給付金の支給だ。

 任意の事業には、就労に向けて訓練する就労準備支援や、家計管理をアドバイスする家計相談支援、生活困窮家庭の子どもへの学習支援などがある。

 野洲市は十年以上前から多重債務相談に力を入れ、それをきっかけに困窮者支援のノウハウを積み上げた。さまざまな部署が市民生活相談課に相談者を紹介する仕組みは、多重債務対策から発展させたものだ。

 この法律が施行される以前から、生活困窮者支援に熱心に取り組んできた自治体はほかにもある。しかし、全国の大半の自治体では、この法への対応は手探りだ。生水さんは困窮者支援について「おせっかいが基本」と話す。そういった気持ちが全国の行政マンに広まるだろうか。
 (白井康彦)   


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<どう進める 困窮者支援> 滋賀・野洲市の相談態勢    
2015年4月16日 中日新聞

今月、施行された生活困窮者自立支援法に基づき、困窮者支援の方策を探る全国の地方自治体。しかし、多くの自治体が「相談に対応する態勢が十分でない」という課題に直面している。そんな中、市役所の各課だけでなく、外部団体とも連携して困窮者支援を進めている滋賀県野洲市の例から、実際にどう対応するかを探った。

 「暮らしに困っていることはありませんか」。国民健康保険税を滞納していた四十代男性。野洲市の納税推進課員が、こう尋ねたことから男性が生活に困窮していることが分かった。市民生活相談課が聞き取ると、家族は妻と子ども三人。失業に加え、百数十万円の借金があり、家族の精神面も不安定など、多くの問題を抱えていることが浮かび上がった。

 「市役所には市民を助けるサービスがそろっています」。同課課長補佐の生水(しょうず)裕美さん(53)は口癖のように言う。

 同課から連絡を受け、保険年金課や税務課は国民年金保険料などの軽減に努力。学校教育課は子どもの就学を援助する制度の利用を男性に勧め、健康推進課は家族も含めメンタルの相談に乗った。

 外部団体の応援も大きな役割を果たした。司法書士ら法律家が債務整理に当たったほか、市社会福祉協議会が生活福祉資金の借入窓口となった。市と滋賀労働局が連携して困窮者を支援する市役所内の窓口「やすワーク」は、仕事探しを支援。こうした広範囲にわたる連携により、男性は就職先を見つけ苦境を脱した。

      ◇
 生活困窮者自立支援法が自治体に義務づけるのは相談への対応と住居確保給付金の支給。任意事業には、就労準備支援や家計相談支援、困窮家庭の子どもへの学習支援などがある。

 野洲市は二〇一一年度からモデル事業として困窮者支援に乗り出し、さまざまな悩みを一カ所で受ける「ワンストップサービス」の拠点として進化してきた。やすワークのロッカーには、困窮者が就職の面接で借りるスーツも用意されている。市役所には米など緊急支援物資の食料もある。

 蓄積した態勢によって、一三年度は相談に訪れた市民のうち百四十五人が就職。就職が決定しても、生活保護を受け続ける人も二十四人いたが、そのうち四人は生活保護から自立し、残る二十人も生活保護費が減った。

 生活困窮者が勤め先を確保して生活を再建すると、生活保護が要らなくなる。そのため、就労準備支援に関心を寄せる自治体も多いが、生水さんは「そればかりに注目してほしくない」と言う。各課が以前からある制度の利用を提案することも重要で、困窮者の状況によっては、生活保護の利用を勧めることも少なくないという。

 山仲善彰市長(64)は「生活困窮者は“社会災害”の被害者。自然災害の被災者同様に支援するべきだ」と強調する。一部からは「特定の人の支援に駆けずり回るのか」との声もあるというが「一人を救えない制度では誰も救えない。一人を救えたら、それをモデルに発展させればいい」。この哲学が、各部署や各組織をつなぐ背骨となっている。
(白井康彦)  


<どう進める 困窮者支援> 「実施しない」自治体が大半
2015年4月30日 中日新聞

 全国の九百一自治体で四月に始まった生活困窮者への支援。多くの自治体では、法で実施が義務づけられた二事業のみしか行っていない。高齢化と格差社会の広がりで増え続ける困窮者を支えていくには、自治体が就労支援などの任意事業を積極的に実施し、生活再建を支援する体制にできるかどうかがかぎだ。

 「困窮者支援に力を入れてほしいと市議会で訴えたが、市側の答弁はいつものらりくらりだった」。愛知県一宮市の市議、倉石義夫さん(75)は振り返る。

 先進市の滋賀県野洲市の取り組みを事前に視察し、市の関係部署間や市と外部団体とのスムーズな連携ぶりなどに感心した。議会で生活困窮者支援を求めたのは、過去二年余りで五回。「野洲市をお手本に」と力説したが、市は本年度、任意事業を実施しないことになった。

 倉石さんは、二十六日に投開票があった市議選に出馬せず、三十日に任期満了で引退する。「心残りは、市の生活困窮者支援体制が思うように充実しなかったことです」

 だが、全国の状況を見ると、任意事業を実施しない一宮市は特別ではなく、むしろ多数派だ。

 生活困窮者自立支援法では、福祉事務所を持つ九百一自治体が支援事業を行う。これらの自治体に義務づけられたのは、生活困窮者からの相談に対応する事業と、仕事と住まいの両方を失っている人に住居確保給付金を支給する事業だけ。

 失業中の人への就労準備支援、ホームレス状態の人に宿泊場所などを一時的に提供する一時生活支援、家計管理のアドバイスをする家計相談支援、生活困窮世帯の子どもへの学習支援などは任意事業だ。

 厚生労働省は昨年十二月、九百一自治体に任意事業に取り組むかどうか意向確認調査を行った。学習支援は約35%の自治体が実施予定だったが、その他の任意事業は三割未満と低かった=表参照。

 窓口業務に当たる自治体の担当者からは「支援メニューが少ないと、効果的な支援策をまとめにくい」という声が強く、任意事業を積極的に実施することが必要だ。しかし「地味な分野なので、財政課や首長の理解を得るのが難しい」(自治体職員)といった声も聞かれる。

 一方、これまで生活困窮者支援に取り組んできた森弘典弁護士(愛知県弁護士会)は「生活保護が受給できなくなるケースが増えるのではないか」と懸念する。市民活動家の中からも同様の意見が出されている。

 生活困窮者は、自治体などの支援を受けても、必ずしも自力で生活が立て直せるわけではない。高齢や心身の不調などの事情によっては、生活保護を受ける方が適切な場合もある。森弁護士は「支援を受けて就職し、自立することが唯一の道として勧めるのでは」と警戒する。生活保護費の急増と、保護を受ける困窮者への反発が国民の一部にあるからだ。

 厚労省は今年三月、自治体の生活困窮者自立支援と生活保護の担当部署が適切に連携するよう通知した。生活保護が適切なケースについては「必要な者には適切に生活保護につなぐことが必要である」と強調している。自治体が、生活困窮者の状況に応じて制度を運用するかどうかが問われている。
(白井康彦)  




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