夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『かくしごと』

2024年07月12日 | 映画(か行)
『かくしごと』
監督:関根光才
出演:杏,中須翔真,佐津川愛美,酒向芳,木竜麻生,
   和田聰宏,丸山智己,河井青葉,安藤政信,奥田瑛二他
 
イオンシネマ茨木で『ルックバック』を観た後、109シネマズ箕面へ移動してレイトショー。
夕方にオンラインでチケットを購入した時点では私しか客がいなかったので、
もしやまた“おひとりさま”かと思ったけれど、結局あと3人いました。
 
原作は北國浩二のベストセラー小説『嘘』。
監督はテレビCMやMVを多く手がける関根光才。
同監督が趣里菅田将暉を主演に起用した『生きてるだけで、愛。』(2018)はなぜか未見(ほんとに何故!?)、
ドキュメンタリー作品『太陽の塔』(2018)は観たことがあります。
 
バツイチの絵本作家・里谷千紗子()は、久しぶりに田舎に帰る。
ほぼ絶縁状態にあった父親の孝蔵(奥田瑛二)が認知症で徘徊していたとの連絡を受けたため。
要介護認定に立ち会って施設を決めたら、孝蔵からとっとと離れるつもり。
 
郷里の親友・野々村久江(佐津川愛美)と酒を飲みに行ったところ、
頼んだ代行がなかなか来ないことに苛立つ久江が自分で車を運転して帰ると言う。
ビールを2杯飲んだだけだから酔っぱらっていないという久江の車に同乗して帰途に就くと、
途中、車にぶつかるものがあった。慌てて降車してみると、そこには少年(中須翔真)が倒れていた。
 
久江は公務員で、もしも飲酒運転で人をはねたことが知れたら間違いなくクビ。
救急車を呼ばないでくれと懇願する久江に負け、千紗子は少年を実家に連れ帰る。
 
ずぶ濡れの少年の服を脱がせてみると虐待痕がある。
目が覚めた少年は、事故のショックからか記憶を失っていて、自分の名前さえもわからない。
近くの川では少年の捜索が開始されているが、
あろうことかその両親は捜索を見届けずに東京へ帰ってしまったというではないか。
 
ニュースで知った少年の名前から両親の所在を突き止めた千紗子は、NPO法人職員を装って会いに行く。
応対した少年の父親(安藤政信)と母親(木竜麻生)の態度から虐待を確信し、
千紗子は少年に自分が母親だと嘘をつき、育てることを決意するのだが……。
 
ごめんなさい。これは好きじゃない。
 
まず序盤、福祉課の職員だという久江の台詞が鬱陶しい。
「お父さんを大事にしてあげなきゃ」とか、の生前、私が嫌だった言葉だなぁと思い出して苦笑い。
が亡くなったときも、「ご両親を大切にしてあげて」といろんな人から言われました。
もちろん善意からの言葉であることはわかっています。
せやけどそんなこと言われんでもやってるっちゅうねん、などと思っているときに、
私のことを心配してくれる言葉がどれだけありがたかったことか。
久江の「そんなんじゃ介護なんてできないよ」みたいな台詞も結構カチンと来る。
あなたのお仕事はそりゃ立派でしょう。でもこれ、介護経験のある人が書いた台詞なのでしょうか。
 
久江はこんな態度のくせして、子どもを置いて飲みに行き、結局飲酒運転。
千紗子にしても無戸籍のまま育てるとかあるじゃんなどと言ったりして、責任感があるのかないのかわかりません。
私はずっとシラけてしまって。
 
前々からうっすら思っていたことですが、杏って演技が上手いのかどうか私にはよくわからない。
たぶん役柄によるとは思うけれど、この役では上からな感じがよろしくない。
上手く演じようとしているのが伝わってきて、もう少し力を抜いてもいいのではと思いました。
常に優等生な印象を受けます。
 
奥田瑛二のボケぶりは見ているのがつらいほどで上手い。
子役の中須翔真くんはめちゃ可愛くて知的。
でも、記憶喪失なんて起こしていなかったというストーリーは見え見えで、
泣かせようとしているのが読めてしまう。私はこれでは泣けないのですよ。
カメオ出演の河井青葉は何のための登場だったのかわからず。
青葉姐さんをちらりとでも見られたのは嬉しかったけど。
 
そうですか、そういうもんですか。(^^;
はい、やっぱりこれも素直な人が観るのがいいと思います。

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『朽ちないサクラ』

2024年07月08日 | 映画(か行)
『朽ちないサクラ』
監督:原廣利
出演:杉咲花,萩原利久,森田想,坂東巳之助,駿河太郎,遠藤雄弥,
   和田聰宏,篠原悠伸,藤田朋子,豊原功補,安田顕他
 
TOHOシネマズ西宮にて、前述の『数分間のエールを』の次に。
 
原作は柚月裕子の同名ベストセラー小説。まだ読んでいません。こりゃ絶対読みたいやつですね。
監督はなんと『帰ってきたあぶない刑事』の原廣利と知ってビックリ。
あんなのからこんなのまでお撮りになる人とは。
 
愛知県平井市に住む女子大生がストーカー被害に遭ったうえに殺害される事件が発生する。
被害者からストーカーについて届け出があったにもかかわらず、
担当の米崎県警平井中央署生活安全課が署員の慰安旅行を優先して受理を先延ばしにしていたと、地元の米崎新聞がスクープ
不満をあらわにする市民県民たちから米崎県警本部にも苦情の電話が殺到し、署員たちはその対応に追われる。
 
いったい誰が慰安旅行のことを米崎新聞にたれ込んだのかと署員らが訝しむ様子を見て、
県警本部広報課の職員・森口泉(杉咲花)は気が気ではない。
というのも、泉に気があるらしい平井中央署生活安全課の巡査・磯川俊一(萩原利久)が、
慰安旅行の土産をくれた話を親友の津村千佳(森田想)に話したことがあったから。千佳は米崎新聞の記者。
女子大生殺人事件が起きる前の話で、まさかこんなことになるとは思わずに話してしまったのだ。
 
きっと千佳は喉から手が出るほどスクープがほしかっただろう。
本人は親友を裏切るようなことはしないと憤る素振りを見せていたが、実際のところはわからない。
泉が信じられないと言うと、ならば記事の出どころを突き止めてその疑いを晴らしてみせる、
もし自分でないとはっきりしたときは謝ってほしいと言って千佳は立ち去る。
 
ところがその1週間後、今度は千佳が変死体となって発見される。
泉が信じなかったせいで千佳が死んでしまうことになったのではないか。
身の潔白を証明しようとした千佳は真相に近づいて殺されたのではないだろうか。
自責の念に駆られる泉は、俊一の協力を得て独自に調査を始めるのだが……。
 
杉咲花が良いのはもちろんのこと、彼女の上司で広報課の課長・ 富樫隆幸を演じる安田顕と、
県警本部捜査一課の課長・梶山浩介を演じる豊原功補が素晴らしい。
きつい仕事の中にあって、こんなに人間味のある上司に囲まれていたら、などと思っていました。
 
ここからは超ネタバレです。
 
いちばん怪しくない人が本当は怪しいというのはミステリーの定番なので、
もしかしたらと思ってはいたものの、それこそ信じたくはない(笑)。
えーっ、そんな展開ってありですか。
 
「サクラ」とは公安のことなのですね。
すべて公安が仕組んだことで、多くの命を救うためならば、何人かの犠牲が出るのはなんともない。
誰かに罪を着せ、真実にたどりつきそうな人間はいとも簡単に消す。
 
だから「私は警察官になる」、正せないかもしれないけれど、泉の姿が力強い。
後味は良くないけれど、面白かった。
 
正義って何でしょう。

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『九十歳。何がめでたい』

2024年07月02日 | 映画(か行)
『九十歳。何がめでたい』
監督:前田哲
出演:草笛光子,唐沢寿明,藤間爽子,片岡千之助,中島瑠菜,オダギリジョー,
   清水ミチコ,LiLiCo,宮野真守,石田ひかり,三谷幸喜,木村多江,真矢ミキ他
 
TOHOシネマズ伊丹にて。
 
同名のエッセイは6年以上前に読んでいます。そのときの感想はこちら
昨年百歳の誕生日をお迎えになった作家・佐藤愛子、今も健在。
そして彼女の役を演じた草笛光子も実際90歳。
本作は草笛光子の生誕90年を記念する作品でもあるそうです。
どうですか、この婆ちゃんパワー。凄すぎて驚く。
 
2014年、長編小説『晩鐘』を最後に断筆宣言をした90歳の佐藤愛子(草笛光子)。
のんびりとした生活を満喫するはずったのに、なんだか日々に張り合いがない。
口を開けば面倒くさいを連発し、同居する娘の響子(真矢ミキ)や孫の桃子(藤間爽子)も呆れ顔。
 
そんな愛子を訪ねてきたのがベテラン編集者の吉川真也(唐沢寿明)。
吉川は編集長を務めていた部署で部下からパワハラを訴えられる。
誰も引き取り手がなかったところ、後輩のよしみで倉田拓也(宮野真守)が自分の部署に吉川を迎え入れる。
 
パワハラで訴えられたというのに、異動先でもその態度はほぼ変わらず。
自分に否などないと思っていた吉川だが、家に帰ると妻の麻里子(木村多江)と娘の美優(中島瑠菜)がいない。
机の上には麻里子の記入済みの離婚届が置かれていて呆然。
 
麻里子に連絡を取ろうと必死になる一方で、
若い編集者が断られたというエッセイ連載の企画を携え、吉川は愛子のもとを訪れるのだが……。
 
はい、前田哲監督の作品は、私にとって微妙です。
たいてい無難に面白いけど、好きになれない作品もままあって。
でも年に何本も撮っていたりするから、避けては通れない監督なのです。
 
90歳になってなおパワフルで可愛らしいおばあちゃん、草笛光子には敬意を払います。
しかし、『九十歳。何がめでたい』を出版したら町ゆく誰もがその本を手にしている光景とか、
同書がベストセラーになると押しかけるメディアの様子とか、結構うざい。
こういう笑うに笑えない演出は好きになれません。
しかも、記者役の人たちみんな、笑うのが下手に見えてしゃあない。
記者会見会場の模様なんてドン引きです。
 
笑いの路線としては三谷幸喜風とも言えるけど(彼もタクシー運転手役で出演)、
ヨイショだらけなのは冷めちゃいます。
申し訳なくも言わせていただくと、予告編のほうが面白かった。
と、私は思うのですけれど、万人受けするでしょうねぇ。素直な人には薦めます。

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『グレート・スクープ』

2024年06月12日 | 映画(か行)
『グレート・スクープ』(原題:Scoop)
監督:フィリップ・マーティン
出演:ビリー・パイパー,ジリアン・アンダーソン,ルーファス・シーウェル,キーリー・ホーズ,ロモーラ・ガライ,
   リチャード・ゴールディング,アマンダ・レッドマン,コナー・スウィンデルズ,チャリティー・ウェイクフィールド他
 
2024年のイギリス作品。先々月よりNetflixにて独占配信中です。
 
「実話を基にした創作」と冒頭にロップが出ます。
そういえばこんな禍々しいニュースで世界中に激震が走ったのだったなぁと思い出す。
 
2000年代にアメリカ人実業家のジェフリー・エプスタインが児童買春の罪で逮捕されました。
謎の大富豪と言われていたエプスタインの交友関係は華やかで、
各国の首相やら王太子、そして英国王室のヨーク公アンドリュー王子も含まれていました。
 
性犯罪者のエプスタインが釈放された後もつきあい続けたアンドリュー王子について、
自身も未成年だった少女と性交渉を持ったのではないかという疑惑が取り沙汰され、
2019年にBBCが『ニュースナイト』という番組で独占インタビューをおこなうことに成功。
そこに至るまでの模様が描かれています。
 
原作は、インタビューの権利を勝ち取った編集者サム・マカリスターの“Scoop”。
本作ではビリー・パイパーが演じています。
サムは自分の使命は「インタビューに応じない人を引っ張り出すこと」だという信念を曲げません。
それができれば誰になんと言われようがかまわないという態度で、遅刻も日常茶飯事。
番組は視聴率さえ取れれば何でもいいというスタンスで、サムをよく思わない人と揉めます。
 
しかし、サムがアンドリュー王子の個人秘書アマンダとの接触に成功し、
アンドリュー王子へのインタビュー実現が見えてくると、皆が興奮。
世紀のスクープの現場に自分たちが居合わせることを想像するわけです。
 
アンドリュー王子がインタビューに応じるに当たり、
国民の疑念を払拭すべく答え方をレクチャーするアマンダやブレーンたち。
シナリオどおりに答えた王子を見て安堵するけれど、
こんな答えが誠意あるものに映っていると思うこと自体がおかしい。
このインタビューをきっかけに、公的地位をすべて失うこととなったアンドリュー王子。
 
ルーファス・シーウェルがあまりにもアンドリュー王子に似せられていてビックリ。
 
見応えがあります。

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『告白 コンフェッション』

2024年06月09日 | 映画(か行)
『告白 コンフェッション』
監督:山下敦弘
出演:生田斗真,ヤン・イクチュン,奈緒他
 
前述の『碁盤斬り』を109シネマズ大阪エキスポシティで観た後、イオンシネマ茨木へ移動して。
21時半も過ぎてから劇場を移動してのハシゴなんてしんどいこと極まりないのですが、
見逃したらどうしようという強迫観念に駆られて行ってしまいました。(^^;
 
長尺作品が多いなか、80分を切る作品は結構珍しい。74分。
福本伸行・原作、かわぐちかいじ・作画の同名漫画を山下敦弘監督が映画化。
山下監督は最近撮りまくりですね。
『カラオケ行こ!』『水深ゼロメートルから』から一転してサスペンスフル。
近頃はホヨヨ~ンとした雰囲気の作品が多かったから、こういうのを観ると、
『松ヶ根乱射事件』(2006)の頃の同監督を思い出します。
 
出演者はほぼ3人、いや、2人と言っていいでしょう。魅せますねぇ。
 
浅井(生田斗真)とジヨン(ヤン・イクチュン)は大学時代からの親友。
学生時分、同じく山岳部に所属していたさゆり(奈緒)といつも3人で過ごしていたが、
16年前のある日、さゆりが遭難して死亡する。
以降もふたりはさゆりの慰霊の意味で毎年欠かさず雪山に登り続けている。
 
今年も変わらず登りにきたが、吹雪の中でジヨンが負傷し、動けなくなる。
死を覚悟したジヨンは浅井に自分がさゆりの首を絞めて殺したのだと告白。
ところがその直後、開けた視界の中に山小屋を発見。
浅井がジヨンに肩を貸してそこに到着。なんとか死なずに済みそうだ。
 
しかし、死ぬはずだったからこその告白。
言わなければよかったと悔やんでいる様子のジヨンに、浅井は「聞かなかったことにする」と言うが、
そんなことにできるわけがないとジヨンが怒り出して……。
 
ホラーという触れ込みの『関心領域』よりもよっぽどホラーです(笑)。
ヤン・イクチュンの鬼気迫る演技が怖いのなんのって。
普通に行けば生田斗真を応援したくなるところ、以下ネタバレです。
 
ジヨンが怒るのも当然の、浅井がクズだと途中でわかる。
脚の怪我のせいで身動きを取りにくいジヨンと、高山病を発症したらしい浅井。
外は大雪で逃げ出すのは無理。いったいどうなるのかとドキドキします。
見せられているものすべてが実際に起きていることなのか、浅井の妄想なのかがわからないから、余計にドキドキ。
 
山下監督、明るくてあったかい作品を撮るのと、こんな陰鬱な作品を撮るのとどちらがお好きですか。
今後もどちらも撮ってほしい。
 
ジヨンの「やっと息ができる」という台詞は、ヤン・イクチュンの初監督作にして大きな話題となった、
『息もできない』(2008)に掛けて遊んでいるのだと思われます。粋だなぁ。

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