夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『スパングリッシュ』

2006年06月12日 | 映画(さ行)
『スパングリッシュ』(原題:Spanglish)
監督:ジェームズ・L・ブルックス
出演:アダム・サンドラー,ティア・レオーニ,パズ・ヴェガ他

「スパングリッシュ」とは、米国のラテン系移民が使う、
スペイン語と英語の混成語だそうです。

フロールはメキシコ人のシングルマザー。
娘を育てあげるため、故郷を離れて米国へ。
彼女が移り住んだのはロサンゼルスのメキシコ人街。
英語ができなくても安心な街。

以後、フロールはこの街から一歩も出ずに朝晩働いて生計を立てるが、
あるとき、年頃になった娘を夜間ひとりきりにするのは危険だと考える。
昼間の仕事だけで今までどおりの収入を確保すべく、
友人の紹介で豪邸の家政婦に応募する。

初めてメキシコ人街の外の世界へ。
訪れたクラスキー家は一見幸せな家庭そのもの。
主人はロサンゼルス随一のシェフと噂されるジョン。
その妻は完璧な体型のデボラ。気さくな祖母エヴェリン。
そして、心優しいふたりの子ども、バーニーとジョージー。
英語が通じないことも意に介さないふうで、
ただちにフロールは採用される。

ところが、フロールはクラスキー家の問題を目の当たりにする。
他人には干渉しないことを信条としてきたフロールだったが、
無邪気と無神経、紙一重のデボラがバーニーの心を傷つけたとき、
英語を覚えて「干渉」する決意をする。

爽やかな佳作。
女手ひとつで娘を育ててきた美しく強いフロールが
ジョンに対してスペイン語で怒りをまくしたてるシーンは傑作。
順調に英語の力をつけてきた娘のクリスティーナが、
熱くなっている当人同士の言葉を絶妙の間で通訳します。

コメディ俳優のアダム・サンドラーは本作でもやはり笑わせつつ、
優しい男性、温かい父親を演じて泣かせます。
娘であるバーニーのことを心配し、
「バーニーは大丈夫。あの優しさを彼女は持ち続ける」と
フロールから言われたときの彼の表情。
「心の中でわかっていても、それを他人から聞くとホッとする」とは
子どもを持つ親は誰しも共感するのでは。
って、子どものいない私が言うのもなんですけど。

ついでに、レストランの星の話もおもしろい。
料理評論家の来店に際してジョンが思うのは
「星1つは問題外。
 4つとれば後は減るのが心配。
 3つと4分の1なら完璧だ。
 ほとんど文句なくいいってことだし、
 今後の経営にはいい影響だけ残る。
 忙しすぎて自分を見失うこともない」。

夜中の厨房で作る料理は羊。ウマそ~。

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