夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『君のためなら千回でも』

2008年09月08日 | 映画(か行)
『君のためなら千回でも』(原題:The Kite Runner)
監督:マーク・フォースター
出演:ハリド・アブダラ,ホマユン・エルシャディ,
   ゼキリア・エブラヒミ,アフマド・ハーン・マフムードザダ他

久々にグッと来た邦題。
原題は“The Kite Runner”で、同名小説の映画化ですが、
映画に合わせて、小説の邦題も変更されたそうです。

1978年、アフガニスタンの首都カブール。
裕福な家庭に育つ、気弱な12歳の少年アミール。
彼の唯一の友だちが、同居する召使いの息子で、
ハザラ人(イラン系の少数民族)のハッサン。

この国の都市部のどんな子どももするのが凧揚げ。
ほかの凧の糸を切って落とした者が勝ち。
落とした別の者の凧を、勝利の証しとして拾いに行くのも慣わしだ。

恒例の凧揚げ大会で、
ハッサンの的確な指示を得て、アミールは優勝。
落とした凧を追いかけてゆくハッサン。

帰って来ないハッサンを探していたアミールは、
とんでもない光景を目にする。
ハッサンを取り囲むパシュトゥーン人(最多の割合を占める民族)が、
ハッサンに凧を寄越せと凄んでいる。
アミールの凧だからと頑として拒むハッサンは、陵辱されてしまう。

一部始終を見ていたのに、
物陰に隠れたまま出て行けなかったアミール。
その後ろめたさから、ハッサンと次第に距離を置くように。
アミールはハッサンに盗みの濡れ衣まで着せ、
それがきっかけで、ハッサン親子は家を出て行く。

やがて、ソ連によるアフガニスタン侵攻が始まり、
アミールは父親と共にアメリカに亡命。

2000年、作家となったアミールに、父親の旧友から電話が。
どうしても会いに来てほしいと言われ、
タリバン独裁政権下にある故郷へ向かう。
そこで知る衝撃の事実。

『隠された記憶』(2005)と物語の設定は似ているのに、
こうも異なる話になることに驚かされます。

臆病なのは自分なのに、その自分の臆病さを思い出させる相手のことが許せない。
目の前から消したはずが、頭の中からは決して消えない罪悪感。
独学で字を勉強したハッサンの、ひと言も責めることない手紙が胸を衝きます。
凧の行方だけでなく、人の心の行方を見抜いていたハッサン。

『ステイ』(2005)、『主人公は僕だった』(2006)、そして本作と、
この監督の作品は一見すべて違うタイプでありながら、
心の在り方を問うているよう。
重い事柄が詰まっていますが、後に残る爽やかさ。

君のためなら千回でも。

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