夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『地上5センチの恋心』

2008年10月01日 | 映画(た行)
『地上5センチの恋心』(原題:Odette Toulemonde)
監督:エリック=エマニュエル・シュミット
出演:カトリーヌ・フロ,アルベール・デュポンテル,
   ファブリス・ミュルジア,ニナ・ドレック他

フランス/ベルギーの作品。
原題は主人公の名前である“Odette Toulemonde”で、
よくもこんな邦題を考えついたものだと思いますが、
恋をすると、ふんわり5センチ浮いた気分に。
そんな気持ちを上手く表しています。

オデットは10年前に夫を亡くした、50代の主婦。
昼は百貨店の化粧品売場でパート勤め、
夜は舞台衣裳の羽根飾りを作る内職をしている。
心優しき息子のルディはゲイの美容師、
いつもふてくされている娘のスー=エレンはフリーター。
子どもたちが連れて来る恋人のことは、ときには気に入らないが、
それでも来る者は拒まず、一緒に食卓を囲んでいる。
ささやかながら、楽しく幸せな毎日。

人気の恋愛小説作家バルタザールのサイン会の日。
彼の大ファンであるオデットは、会場へと急ぐ。
しかし、緊張のあまり、サインしてもらうための自分の名前さえ言えない。
情けなさに鼻を垂らして泣くオデットに、
ルディはファンレターを書くことを勧める。

バルタザールは金にも女にも不自由ない暮らしをしているが、
ライバル作家のオラフから新刊を酷評されて以来、人気が急降下。
しかも、そのオラフが妻の浮気相手だと知り、自殺を図る。
一命は取り留めたものの、傷心のバルタザールは家出。
行くあてもなく街をさまよっているときに、
胸ポケットに入れたままになっていたファンレターに気づく。
バルタザールは差出人のオデットを訪ね、不思議な同居生活が始まる。

名言だと思った友人の言葉に、
「無邪気と無神経は紙一重やから」というものがあります。
同性から見て、天真爛漫で可愛いと思っていた後輩が
なぜか異性には人気イマイチで、男友達に理由を尋ねたところ、
上記の言葉をボソッと。なるほどなぁと思いました。

このオデットは、自分が無知なのを知っていますが、
無神経ではありません。
無知ゆえと思われていたオデットのお気楽ぶりも、
話が進むにつれて、そうではないことがわかり、
いつのまにか、こんな女性と一緒なら、
どんなことも幸せに感じられるのではと思うようになります。

ルディの台詞も密かに説得力あり。
執筆が本業の作家につたない文面の手紙を送ることを躊躇うオデットに、
「ハゲの美容師もいるよ」。

幸せは、足もとに転がっている。

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