夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『悲しみが乾くまで』

2009年01月22日 | 映画(か行)
『悲しみが乾くまで』(原題:Things We Lost in the Fire)
監督:スサンネ・ビア
出演:ハル・ベリー,ベニチオ・デル・トロ,デヴィッド・ドゥカヴニー他

大々的に宣伝中の映画で、
チェ・ゲバラを演じているベニチオ・デル・トロ。
ヤク中あるいはアル中患者を演じさせたら天下一品、
マジで中毒なんじゃないかと見紛うほどの役者なので、
『チェ』の宣伝を見るたびに、
あんなに爽やかなデル・トロでいいのか!?と思ってしまいます。

本来のイメージどおりのデル・トロが見られるのはこちら。
デンマーク出身の女流監督のハリウッド進出作です。

オードリーは、不動産業で成功を収めた夫のブライアンと
2人の子どもに恵まれ、幸せな結婚生活を送っている。
ただひとつ、不満なのは、ブライアンがことある毎に
親友のジェリーへの気遣いを見せること。

ジェリーはドラッグからなんとか抜け出そうとしているヤク中患者。
誰からも見放され、治安の悪い地区で暮らすジェリーを
ブライアンだけは面倒を見続けている。
夫婦でゆっくり過ごせそうな夜ですら、
ジェリーに会いに行くブライアンを、オードリーは理解できない。

ある日、子どもにせがまれてアイスクリームを買いに行く途中、
喧嘩の仲裁に入ったブライアンは銃弾に遭う。
葬儀の日、オードリーはジェリーの存在を思い出し、
電話も持たない彼に知らせに行ってくれるよう、弟に頼む。

弟に連れられて来たジェリーは、
サイズの合わないスーツを着た、よれよれの男。
夫が大事にしていた人だからという理由だけで
彼を招いたオードリーだったが、
葬儀から数日が経ち、突如、ジェリーに同居を持ちかける。

主演2人の演技が抜群なのはもちろん、
先入観に囚われない一部の登場人物がとてもいい。
それに、男心も女心もわかっているんじゃないかと思える、
監督の見せ方の素晴らしさ。

たとえば、ブライアンはジェリーに与えるばかりだと
オードリーは思っていますが、ちょっとした会話から、
ジェリーがブライアンのことを気に懸けているのがわかります。
一方通行でない、男同士の友情。

不眠に陥ったオードリーがジェリーに添い寝を頼むシーンは、
おそらく男性なら、誰もが誘っていると思うにちがいありません。
あんなナイスバディの女性が、自分にぴったりくっついて、
ああしてこうしてと頼んできたら。
男性は「嘘やろ」、女性は「そう!」なシーンでしょう。

心の機微に触れられる作品です。
善は受け入れよ。

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