夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『アントキノイノチ』

2011年11月25日 | 映画(あ行)
『アントキノイノチ』
監督:瀬々敬久
出演:岡田将生,榮倉奈々,鶴見辰吾,染谷将太,柄本明,
   堀部圭亮,吹越満,津田寛治,宮崎美子,原田泰造他

さだまさし原作の同名小説の映画化で、
第35回モントリオール世界映画祭でイノベーションアワードなる賞を受賞。
泣くことにかけては非常にハードルが低いはずの私が一滴の涙も流せず。
そこへ、数日違いで観に行った人から「ポロポロ泣けた」というメールをもらい、
う~ん、私の根性がひん曲がっているのかもと凹みました。(^^;

高校時代の辛い記憶に苦しみ、自分を責め続ける青年、永島杏平は、
父親の紹介で、遺品整理業「クーパーズ」に雇われる。
その仕事は、故人の部屋を遺族に代わって片付けるというもの。

就職して数日後、杏平は現場でさまざまな思いが交錯して動けなくなる。
誰とも話そうとしない杏平のことを気にかけていた先輩社員の佐相から、
飲みにでも行けと小遣いを渡された久保田ゆきは、終業後に杏平を誘う。
以来、やはり辛い過去があるゆきと心を通わせてゆくのだが……。

なぜ泣けなかったのかを考えてみました。

まず、描写がかなり直接的でグロテスクでした。
孤独死を思わせる部屋にはひからびたウジ虫やゴキブリ。
また、杏平の同級生が投身自殺するシーンは、
コンクリートに叩きつけられるさまがもろに映し出されます。

ネタバレ御免、こうして死をまざまざと見せつけるわりには、
最後の最後に主人公をあっけなく死なせてしまう。
その「死」が、次の「生」に繋がるということなのでしょうけれど、
この死に方にはその昔の月9ドラマ『ピュア』みたいに、目が点に。

ただ、いろいろ考えさせられはしました。
目の前で、死にたいほど憎い相手が、自分が手を下さなくとも死のうとしている。
そのときに自分はどうするか。
映画としては、同じく岡田将生が演じた『重力ピエロ』(2009)の彼の決断に同意したい。
けれど、『13階段』(2003)の山崎努の台詞を思い出して、またしんみり。

ちなみに、瀬々敬久監督は京大文学部哲学科卒でピンク映画出身、
当時は“ピンク四天王”の一人とも言われていました。
その後は『感染列島』(2008)のような大作を撮ったかと思えば、
ピンク映画の名残が感じられる『泪壺』(2008)や『愛するとき、愛されるとき』(2010)も。
『私は猫ストーカー』(2009)には「植木に水をやる男」の役で出演。
いやはや多才。バラエティーに富んでいます。
本人がいちばん楽しいのは果たしてどれ?

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