夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『ウォールフラワー』

2013年12月11日 | 映画(あ行)
『ウォールフラワー』(原題:The Perks of Being a Wallflower)
監督:スティーヴン・チョボスキー
出演:ローガン・ラーマン,エマ・ワトソン,エズラ・ミラー,メイ・ホイットマン,
   ケイト・ウォルシュ,ディラン・マクダーモット,ポール・ラッド他

これももうじき終映です。もうちょい早くUPしておくべきだったか!?

全館停電の日の3本目も大阪ステーションシティシネマにて。
前述の『サプライズ』がなんぼ笑える痛快ホラーだといえども、
締めくくりはほんわかした作品のほうがいいです。

原作の舞台舞台となっているのは1990年代初め、ピッツバーグ郊外。
発売された1999年にはアメリカ図書館協会が選ぶ「最も推奨する本」の第3位を獲得したそうです。
それを原作者本人がメガホンを撮って映画化。
こういうケースはたいていコケるものですが、本作では成功じゃないでしょか。

内気な少年チャーリーは、親友だったマイケルが昨年自殺し、大変な時期を過ごす。
ほかに友人はひとりもおらず、高校入学が怖い。
高校デビューできればいいが、きっと上手くは行かない。
不安な思いを亡くなったマイケルへの手紙として綴り、なんとか気持ちを保っている。

案の定、高校デビューに失敗。
男子だけでなく女子からすらいじめの標的にされ、暗澹とした日々。
そんな状況にあろうとも成績は優秀で読書が大好きな彼に、
国語教師のアンダーソン先生だけは声をかけてくれる。

新入生のチャーリーが受講する図工の授業に、
上級生のくせに単位を落としつづけて出席するパトリック。
お調子者で友人も多く、場を盛り上げる力を持っている。
そんなパトリックをまぶしそうに見つめるチャーリー。

ある日、チャーリーはアメフト部の試合観戦の席でパトリックを見かける。
思いきって声をかけてみると、何の隔たりも感じさせぬ態度。
そこへパトリックの義妹だという美しく明るいサムも現れる。

ずっと壁際にいて、誰にも気づかれることのなかったチャーリー。
そんな彼をパトリックとサムはみんなの前に押し出してくれる。
ふたりとの出会いにより、チャーリーの高校生活は輝きを放ちはじめるのだが……。

「最も推奨する本」にランキングされたそうではありますが、
映画を観るかぎり、この原作は退屈かもしれないと思ってしまいます。
チャーリーの高校生活がつらつらと書かれているだけで、
起伏にも乏しい気がして仕方ありません。

けれども本作はおそらく著者が執筆しながら思い描いていた世界がそのまま、
切なさ、辛さ、美しさ、温かさが見事に表現されていて、
本や音楽に救われるチャーリーの心にも十分に共感できます。

青春恋愛ものでちょっと駄目な主人公を演じるのが得意だったポール・ラッドが、
チャーリーの気持ちの支えとなる国語教師を演じているのに感激。
こんな先生がひとりでもいれば、生徒の気持ちは救われるのかも。

ネタバレになりますが、チャーリーが大好きだったはずのヘレン叔母さん。
しかし実は幼い頃のチャーリーが叔母さんから性的いたずらを受けていたとわかる段は衝撃的。
それゆえに傷ついていた彼の心を解きほぐす医師にはジョーン・キューザック
一瞬だけの出演ですが、やはり存在感があります。

みんなどこかで傷ついて大人になってゆく。
退屈かもしれないけど、原作を読んでみたいと思いました。

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