『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』
(原題:Birdman or (The Unexpected Virtue of Ignorance))
監督:アレハンドロ・G・イニャリトゥ
出演:マイケル・キートン,ザック・ガリフィナーキス,エドワード・ノートン,アンドレア・ライズボロー,
エイミー・ライアン,エマ・ストーン,ナオミ・ワッツ,リンゼイ・ダンカン他
日曜日にTOHOシネマズ梅田にて。
第87回アカデミー賞の作品賞、監督賞、脚本賞、撮影賞の4部門を受賞。
本命視される作品が作品賞と監督賞を分け合う年も多いなか、
どちらも受賞するなんて、ひとり勝ちと言っていいでしょう。
監督はメキシコ出身のアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ。
長編映画監督デビュー作の『アモーレス・ペロス』(2000)を高く評価され、
多作ではないものの、『21グラム』(2003)、『バベル』(2006)、
『BIUTIFUL ビューティフル』(2010)と、撮るたびに話題に。
どれも批評家受けしそうな面白さがありますが、はたして一般受けするのか。
TOHOシネマズ梅田では、いちばん大きなスクリーンがあてがわれていましたが、
う~ん、これは無理があると思います。
オスカーを獲った作品だから良いにちがいないと踏んで、
もしも日頃あまり映画を観に行かない人が観に行ったら、
「なんじゃこりゃ」で終わってしまいそうな気が。(^^;
大人気のスーパーヒーローもの“バードマン”の主演俳優だったリーガン。
そのイメージにすがりついたまま年を重ね、ほかにはヒット作がないまま今に至る。
私生活もみじめなもので、妻のシルヴィアとは離婚、
ヤク中でリハビリ施設から戻ってきたばかりの娘のサムを付き人にしている。
ここは一発逆転、再起を狙おうと、ブロードウェイに打って出ることに。
レイモンド・カーヴァーの短編小説『愛について語るときに我々の語ること』を原作に、
リーガン自ら脚色・演出・主演で芝居を製作する。
ところが、共演者のひとりがリハーサル中に負傷する。
いまさら代役など立てられないと、公演中止を考えるが、
客を呼べる実力派の俳優マイクのスケジュールが空いていることを知る。
声をかけたところ、マイクから即OKの返事。
同じくこの舞台に出演する女優レスリーの稽古につきあってきたマイクは、
すべての台詞を完璧に覚えているうえ、よりよい台詞へのアドバイスも。
リーガンは舞台の成功を確信し、小躍りする。
しかし、本公演前のプレビュー公演の舞台上で、なんとマイクは飲酒。
酔っぱらったマイクはリーガンの言うことなど聞かず、大暴れ。
負傷した元共演者からは訴えられそうだと弁護士のジェイクから聞かされるわ、
交際中の女優ローラから妊娠したと告白されるわ。
ブロードウェイ公演がすぐに打ち切られるか否かを握るタイムズ誌の批評家はひたすら冷たく、
サムは相変わらずドラッグに手を出しているうえ、マイクに興味を示している様子。
踏んだり蹴ったりの状態のリーガンの目の前に、たびたび“バードマン”が現れては嘲る。
これはリーガン自身の心の声なのかと悩まされるようになるのだが……。
“バットマン”シリーズでバットマンを演じたことがあるマイケル・キートン。
それだけでもう可笑しいでしょう。
マイク役のエドワード・ノートンのキレ味が抜群で、
レスリー役のナオミ・ワッツ、ローラ役のアンドレア・ライズボロー、みんな○。
いつも下ネタに走りすぎるザック・ガリフィナーキスがジェイク役で、
こんなマトモな人の役もできるんだと目からウロコでした。
冒頭、負傷した役者の代役は誰にするかというときに名前が挙がるのが、
ウディ・ハレルソン、マイケル・ファスベンダー、ジェレミー・レナー。
それぞれ『ハンガー・ゲーム』や『X-MEN』の続編撮影に忙しいなんていう会話もあります。
マイクが控え室で見るテレビに映るのはロバート・ダウニー・Jr.で、
「あんなブリキ男に負けるなんて」のような台詞もあって、遊び心満載。
だけど、こういった遊び心も、名前を聞いても誰だかわからない人にはつまらない。
楽しいなぁと思う反面、知らなきゃまったく面白くないだろうとも。
落ち目の俳優がなんとか表舞台に返り咲きたいと願い、
不安に駆られ、妄想に取り憑かれながら進んでゆく物語。
ラストにはニヤリとしましたが、これも「はぁ?」という感想の人が多くても仕方なし。
万人受けはしないのではないかと思われます。