夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

2021年3月に読んだ本まとめ

2021年04月01日 | 映画(番外編:映画と読み物)
2021年3月の読書メーター
読んだ本の数:13冊
読んだページ数:4588ページ
ナイス数:1262ナイス
https://bookmeter.com/users/762098/summary/monthly

■夜の声を聴く (朝日文庫)
帯と裏表紙とこの著者から、おどろおどろしいミステリーを想定していました。一家惨殺事件の真相が明らかになる段は確かに恐ろしいけれど、そこを除けば意外にも青春小説。そして長編の体を取りながらも、主人公の隆太がいくつもの謎解きを見せる短編の趣もあります。お調子者に見えて凄惨な過去を持つ大吾、彼を住み込みで雇うリサイクルショップオーナーの老女、何の用だかそこにしばしば顔を出す刑事。物語が進むにつれて皆に惹かれる。ここに描かれた1年を彼らと共に過ごした気持ちになりました。せつない。「君は水面を動かした小さな水滴」。
読了日:03月02日 著者:宇佐美まこと
https://bookmeter.com/books/16483765

■稲荷書店きつね堂 神田の面影巡り (ハルキ文庫 あ)
怪談は語られてこそのもの。語られなくなれば、あやかしは人々から忘れられてしまう。あやかしといえども忘れられると淋しいから、必死で現れようとする。そんな状況を思うと、恐ろしげなあやかしも健気で愛おしく。どのあやかしも忘れられないようにここにとどまって、それぞれが就いた(憑いたではなく(笑))商売が繁盛するように協力しあう姿も微笑ましい。200頁程度の薄さも読みやすくて、長編小説の合間に読むエナジードリンク的存在。でもやっぱり気になるんです。誰かヨモギに「学校に行かんでええんか」とツッコミ入れてくれませんか。
読了日:03月04日 著者:蒼月海里
https://bookmeter.com/books/16328736

■あきない世傳 金と銀(十) 合流篇 (ハルキ文庫 た 19-25 時代小説文庫)
ご安心ください、悪いことは何も起こらない巻。というのはネタバレになってしまうのかしらんと思うけれど、私は先に「大丈夫やで」と知らされてから読めたら嬉しい。結の件はトラウマ級でしたもの(笑)。どんな状況に追い込まれようと、そこでできる最善のことを。客がいま何をいちばん喜ぶかを考えて商売に臨む姿勢がこうして後の利益につながる。でも「利益」なんて言葉を使うのが恥ずかしくなるくらい、幸はいつも清々しい。儲けが勝手についてくる。しかし常に最後まで心配。また誰かすんげぇ裏切り者が出てくるのではないかって。ほっとした。
読了日:03月06日 著者:高田郁
https://bookmeter.com/books/17239517

■闇という名の娘: The HULDA TRILOGY #1:DIMMA (小学館文庫)
『死んだレモン』の読了後、似た雰囲気を探し求めていたらこれに行き当たりました。とても読みやすい。翻訳ものを避けている人もこれならとっとと読めそうな。しかし最後はどん底。映画『ザ・バニシング 消失』を観たときと同じく絶望的。定年まで数カ月というところでクビを宣告された女性刑事。悔しくて数日内に未解決事件を解決しようと意気込みますが、その事件以上に謎なのが彼女自身の生い立ち。続編は時を遡った物語とのこと。彼女のことを思い返して若かりし時代の話を読むのは辛そう。いや、読みますけどね。進んで凹みに行きましょうぞ。
読了日:03月08日 著者:ラグナル ヨナソン
https://bookmeter.com/books/14642759

■異常心理犯罪捜査官・氷膳莉花 怪物のささやき (メディアワークス文庫)
表紙から内藤了のシリーズを想像して思わず手が出る。負けず劣らずグロい事件に挑むのは若い女性刑事。死刑囚の心理学者に助言を求めにいくシーンに藤堂比奈子シリーズを思い出すと同時に、『羊たちの沈黙』を思い出さずにはいられない。まるでFBIの実習生クラリスとレクター博士。単独行動が多くてこの先も心配。まだ魅力的というところまでは行かないから今後に期待。「けれど」が多すぎる気がするんですけれど(笑)。それが気になりすぎて、見開きで何回出てくるか数えてしまったじゃないですか。私の中ではすっかり「けれどの莉花ちゃん」。
読了日:03月10日 著者:久住 四季
https://bookmeter.com/books/16700784

■〆切本
現在公開中の映画『心の傷を癒すということ』で柄本佑演じる主人公が、「理由がたくさんあるのは、ないのと同じ」と言っています。書けない、〆切に間に合わない理由をああだこうだと並べてはいるけれど、ないのと同じ。結局全部言い訳だ(笑)。新旧文豪や漫画家のそんな言い訳を集めて1冊にすると企画した時点でもう楽しい。もちろんちゃんと早めに書く人もいて、映画『三島由紀夫vs東大全共闘』に魅せられた私は、山口瞳が語る三島に泣きそうになりました。内田百閒には大笑い。一気に読破せずとも、気になる人を拾い読みしても愉しいのでは。
読了日:03月12日 著者:夏目漱石,江戸川乱歩,星新一,村上春樹,藤子不二雄Ⓐ,野坂昭如など全90人
https://bookmeter.com/books/11155921

■インフルエンス (文春文庫 こ 34-6)
大好きでも読みにくい文体の作家はいます。たとえば森見さんとか京極さんとか。それに対して、リーダビリティが高いとはこれを言うのだなと思ったのが本作。止まらない。そこに友情と呼べるものがあったかどうかわからない、でも歪な絆は存在したように思える3人の少女の話。そのうちの1人により、時を経てから作家に持ち込まれる形で語られます。誰かと競争して幸福や豊かさを勝ち取るなんて別世界のことだと言いつつ、小学生のときから住む地域できっちり友人を分けている。それでも自分だけは誰かの「特別」なのだと信じたいのだなぁ、きっと。
読了日:03月14日 著者:近藤 史恵
https://bookmeter.com/books/17057088

■豆腐の角に頭ぶつけて死んでしまえ事件 (実業之日本社文庫)
思わず手に取ってしまいませんか、このタイトル。1編30ページから120頁ぐらいのミステリー6編。いろんな風合いがあり、それぞれ楽しめます。東野圭吾辺り、わりと近い年齢の作家の短編集などと共通する読後感。ちょっとレトロでブラックなユーモア、苦笑いしてしまいそうな意地の悪いオチ。いちばん楽しかったのは猫丸先輩の話で、この人でシリーズができそうだと思ったら、すでにシリーズなのですね。猫丸さんを存じ上げずにすみません。豆腐が凶器になるかどうかを知ることができました。この知識を披露する場があるかどうかは疑問(笑)。
読了日:03月18日 著者:倉知 淳
https://bookmeter.com/books/17321545

■絶体絶命ラジオスター(毎日文庫) (毎日文庫 し)
勝手にスマホミステリー作家と呼んでいる志駕さんが今度はタイムスリップもの。でもちゃんとスマホを落としちょっと一杯では済まずに泥酔しています。過去と未来の「自分」が入り乱れて3人も。事情をわかっている未来の自分が、トイレのドアを開けたらそこに座っていた過去の自分に思わず謝ってしまうのが可笑しい。SFには若干苦手意識がありますが、この程度のややこしさならついていける。しかしビルという名前の人が一瞬ボブになっていたのはタイムスリップのせいじゃないですよね(笑)。書き下ろしにこの手のミスが多い気がしなくもない。
読了日:03月21日 著者:志駕 晃
https://bookmeter.com/books/17028844

■ひと喰い介護 (集英社文庫)
もともとは『ある高齢者の豊かな生活』だったそうですが、えげつなく改題されたものです(笑)。宅配弁当の申込者の中からターゲットを絞り込む。定年前の肩書きが生涯通用すると信じる老人。この介護施設に目を付けられたら最後、監禁されて全財産も正気も失う。しかし認知症がこんなにも人為的に発症させられるものだとしたら、これほど恐ろしいことはありません。現実にないことだとも言い切れず、ぞっとする。財産を食い尽くされたとしても、本人が幸せな気持ちで死ねるのならそれはそれでいいのではなんて思っていましたが、これは悲惨すぎる。
読了日:03月23日 著者:安田 依央
https://bookmeter.com/books/17644559

■掟上今日子の推薦文 (講談社文庫)
“掟上今日子”シリーズの主人公は毎回変わる。真面目で気弱で、こんなはずじゃなかったのに事件に巻き込まれ、忘却探偵・今日子さんに頼ることになってしまう主人公。神木隆之介みたいな風貌を想像しながら読んでいたけれど、今日子さんの踏み台になってもびくともしないぐらいガタイのいい青年なのですね(笑)。驚くような事件は起こらず、何か凄い謎解きがあるわけでもない。なのに彼らのやりとりにしばしばクスッと笑わされ、最後の頁をめくり終えたときには「私はやっぱり本を読むのが好きだ」と思えるのです。次に巻き込まれるのは誰ですか。
読了日:03月26日 著者:西尾 維新
https://bookmeter.com/books/13367021

■騙し絵の牙 (角川文庫)
【再読ではなく、映画版を観たので書き込み】予定通り昨年公開だったならば原作の内容をもう少し覚えていただろうに、すっかり忘れています。だけど原作と大いに違うことはわかる。大泉洋が当て書きされた本だったというのに、映画用に原作を解体して脚本を作り上げたそうな。ほくそ笑む大泉洋はどこへやら、予告編に騙された(笑)。結局、最も本と書店を愛していたあなたが最後は微笑む。町の書店の店主役で塚本晋也を見られたのが嬉しい。吉田大八監督作品では『紙の月』でもそうでしたが、小林聡美がいい味を出しています。が、ちょい消化不良。
読了日:03月26日 著者:塩田 武士
https://bookmeter.com/books/14785386

■噂 殺人者のひそむ町 (集英社文庫)
10歳の少女が5歳の少年を刺殺。何十年も経過した今、その少女が名前を変えてこの町に暮らしていると知ったら、住民はどんな反応を示すのか。ママ友の仲間入りをしたくて自分の知り得た情報を流したら、噂はあっというまに広まり、大人になったあのときの少女と疑われた女性が迫害を受ける。口は災いのもととしか言いようがない。ところで、このエピローグは要りますか。こんな悪意ある終わり方にしなくても。どんな酷い親であろうと子どもは心の底では親を愛しているから、虐待者は長年何の罰も受けずにいられるという一文にも違和感を覚えます。
読了日:03月30日 著者:レスリー・カラ
https://bookmeter.com/books/16356806

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