夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『K-20(TWENTY) 怪人二十面相・伝』

2009年01月16日 | 映画(か行)
『K-20(TWENTY) 怪人二十面相・伝』
監督:佐藤嗣麻子
出演:金城武,松たか子,國村隼,高島礼子,仲村トオル他

もう1枚、劇場チケットをいただいていたので、今度はシネコンで。
上映時間はやはり長めの137分。

監督は、『犬神家の一族』や『八つ墓村』など、
横溝正史作品のTVドラマ版の脚本で有名な佐藤嗣麻子。
同世代であるせいか、映像に郷愁をおぼえます。
本作は、江戸川乱歩が生み出したヒーロー、怪人二十面相を
斬新な解釈で再創造した同名ミステリーの映画化。

もしも第二次世界大戦がなかったら。
そんな設定で幕開け。

1949年、戦争を回避した日本では、華族制度の名残により、
極端な貧富の差が生まれていた。

町のサーカス団に所属する平吉は、下層階級であっても、
曲芸師として人生を歩んでいることに目一杯の幸せを感じている。
しかし、体調を崩している団長を医者に連れていく金がない。
仲間と途方に暮れていると、謎の男がやってくる。

男は大金をちらつかせ、平吉にある依頼をする。
その依頼とは、厳重な警戒下でおこなわれる、
羽柴財閥の令嬢・羽柴葉子と名探偵・明智小五郎の結納の儀を
こっそり撮影してきてほしいというもの。

当日、結納会場の天井から撮影を試みた平吉だったが、
シャッターを切った途端に会場で爆発音が。
平吉は、世間を騒がせていた怪人二十面相とまちがわれ、
たちまち取り押さえられる。
罠にはめられたと主張しても聞き入れられず、
警察官から拷問を受ける。

サーカス団の天才からくり師である源治の助けで、
刑務所から脱出した平吉は、汚名を返上するために、
怪人二十面相との対決に備え、特訓を開始する。

これぞエンターテインメント。キャストもばっちり。
金城武のちょっぴり情けない怪人二十面相もどき、
仲村トオルの憎たらしいほどイヤミな明智小五郎、
松たか子のお嬢様ぶりに、はたまた転じたおきゃんぶり。
國村隼演じる渋くて頼れるおっちゃんが作るからくりは、
どれもこれもユーモアに溢れた一級品。
大画面で、あれこれ言わずに楽しみたい、痛快アクションコメディです。

怪人二十面相が狙う無線送電システム“テスラ”については、
『プレステージ』(2006)をご覧になることをオススメ。
開発者のニコラ・テスラ役にデヴィッド・ボウイ。
瞬間移動装置として“テスラ”が登場します。

窓口で「K-20(ケー・トウェンティ)」と言うのが恥ずかしくて、
「怪人二十面相ください」と言った私です。

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『アラトリステ』

2009年01月13日 | 映画(あ行)
『アラトリステ』(原題:Alatriste)
監督:アグスティン・ディアス・ヤネス
出演:ヴィゴ・モーテンセン,エドゥアルド・ノリエガ,
   ウナクス・ウガルデ,ハビエル・カマラ他

今週半ばが有効期限の劇場チケットをいただきました。
映画館も映画も選ぶことができます。
選択できる映画館のほとんどがシネコンなのですが、
1館だけミニシアターが含まれています。なんで?

で、こんな機会には、こんな映画を選びたい。
上映時間が長くて、大画面で観たほうが迫力があるやつ。
さらには、本作は歴史的背景がややこしい。
DVDで観たら、睡魔に襲われるかもしれません。

17世紀のスペインを舞台に、
架空の主人公アラトリステと、実在した人物を混在させて描かれた、
本国の大ベストセラー冒険小説の映画化です。

当時のスペインは、八十年戦争のまっただ中。
スペインの統治下にあったネーデルラント地方(現オランダ,ベルギー)で、
スペイン国王に反発する貴族らが、オランダ独立軍を組織する。

少年時代から自分の腕だけを頼りに生きてきたアラトリステは、
ある戦いで亡くなった旧友の息子イニゴを引き取る。
アラトリステはスペインの歩兵として戦場に赴き、
休戦中は町に戻って、刺客としての仕事を請け負うことも。

孤高の剣士アラトリステを主人公に、
戦場で幕を開け、戦場で幕を閉じます。
中世の歴史に詳しくないと、めちゃくちゃ難解なのですが、
あまりの迫力に145分(およっ、『クライマーズ・ハイ』と同じだ)、
睡魔に襲われることなく、最後まで息をのんで観ました。

アラトリステを演じるのは、
“ロード・オブ・ザ・リング”シリーズのアラゴルン役で
一気に知名度を挙げたヴィゴ・モーテンセン
しかし、あんな超大作の後、渋めの作品にばかり出演して、私の心を鷲掴み。
そんなタイプじゃないはずなんですけど、なんか色っぽい。

仲間を大事にし、義理堅く、媚びず、裏切り者には容赦せず。
男の中の男っちゅう感じですが、
それでも好きな女性の前ではヘニャヘニャ。
そんな可愛らしさを持ち合わせています。

戦いであっても、相手に対する敬意は忘れない。
これが武士道というものなのでしょうか。
見上げる空がとても青くて美しい。

それにしても、みんなヒゲにモジャモジャの黒髪、勘弁して。
みんな同じ顔に見えるのも、一段と難解になった原因です。
はっきり見分けがつくのは、アラトリステほかわずか数名。

俄然、歴史の勉強がしたくなりました。

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『クライマーズ・ハイ』

2009年01月09日 | 映画(か行)
『クライマーズ・ハイ』
監督:原田眞人
出演:堤真一,堺雅人,尾野真千子,高嶋政宏,山崎努,
   遠藤憲一,田口トモロヲ,堀部圭亮他

昨年の話題作。元日にレンタル開始となりました。

横山秀夫の同名小説の映画化。
1985年の日航機墜落事故当時、地元新聞社の記者だった著者が、
実体験に基づいて書き上げたものです。

1985年8月12日。
群馬の地方新聞「北関東新聞」の記者、悠木は、
親友の安西とともに、谷川岳の衝立岩登頂に挑む予定だった。
ところが、退社まぎわ、
乗員乗客524人を乗せた羽田発大阪行きの日航機123便が、
群馬と長野の県境に墜落したらしいとの知らせが入る。

未曾有の大惨事に、社内は騒然。
社長命令で全権デスクを任された悠木は、
安西に連絡を取ることもできず、そのまま仕事に戻る。
各社の報道合戦となることは必至の状況下、
悠木は社員たちの指揮を執るのだが……。

当たり前のことですが、同じ新聞社内であっても、
そこには編集局、販売局、広告局といった、
いろんな立場の社員が存在します。
広告を削ってでもより多くの情報を載せようとする悠木に、
スポンサーの顔を潰す気かと激怒する広告担当者や、
営業所への配達を遅らせることに大反対する販売担当者など、
そのやりとりはとても興味深いです。

また、連合赤軍あさま山荘事件で活躍した古参の社員が、
ひがみとも取れる態度を示し、悠木と対峙するシーンはド迫力。
そんな対峙の後、いざというとき、
どの上司に相談するかなんてシーンはちょっとした見所。
緊迫した空気の中でも、堤真一や田口トモロヲの表情や会話には
どこか和める部分があって好き。

加えて、親友や親子の絆まで描かれているのですから、
最後の海外遠征シーン(?)は余計としても、
盛りだくさんで、145分もあっという間。
スクープに対する見方も変わります。

2005年にNHKがドラマ化し、DVD化されました。
そのときのキャストは、堤真一=佐藤浩市、堺雅人=大森南朋、
高嶋政宏=赤井英和、遠藤憲一=岸辺一徳、山崎努=杉浦直樹などで、
映画版とTV版、甲乙付けがたい出演陣が楽しませてくれます。

ものすごい余談ですが、
TV版を観たとき、元阪神の嶋尾康史を発見して驚喜しました。
亀山や新庄がブレイクした年に、中継ぎとしてかなり活躍した投手です。
ひじの故障で早々と引退し、役者の道に進んでいます。
だけど、阪神ファンに話しても「知らん」と言われることが多くて、がくっ。(--;

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『ぼくの大切なともだち』

2009年01月05日 | 映画(は行)
『ぼくの大切なともだち』(原題:Mon Meilleur Ami)
監督:パトリス・ルコント
出演:ダニエル・オートゥイユ,ダニー・ブーン,ジュリー・ガイエ他

あけましておめでとうございます。
今年になってから、まだ映画館に足を運んでいません。
フランスの名匠によるレンタル新作を。

「親友」って、実は私はなかなか使うことができない言葉です。
双方の気持ちが五分五分で「親友」と言い切れる関係って、
そうそうないような気がして。

美術商のフランソワは、顧客だった老人の葬式に参列する。
「夫はあなたのことが大好きでした」と語る未亡人に、
「私も彼が好きだった」と心にもないことを言い、
故人が蒐集した家具を見に行く段取りを早速整える。

その帰り、仕事仲間が集う席へ。
「陰気な葬式だった。参列者が7人しかいなかったんだ」と話すと、
出席者のひとりが「君の葬式の参列者は、確実にそれより少ない」と嘲笑う。
意味を問うと、出席者全員が口を揃えて、「君には友だちがいないだろ」。

フランソワは愕然とする。
「君たちは友だちじゃないのか?」。
みんなが首を振る。
「君は仕事のことしか考えていない。友だちとは言えない」。

友だちなんていくらでもいると憤るフランソワに、
ビジネスパートナーであるカトリーヌが賭けを持ちかける。
10日以内に「親友」を連れて来なければ、
フランソワがオークションで落札したばかりの20万ユーロの壺を
カトリーヌに引き渡すということに。

フランソワは「友だち」をリストアップ。
連絡を取ってみるが、誰もが素っ気ない態度。
友だちを作る方法が書かれた本を探し、
友だちを作るための講座を聴くがどれも功を奏しない。
そんなとき、誰とでも親しげに話すタクシー運転手ブリュノと出会い、
藁にもすがる思いで、人と親しくなる方法を教えてほしいと頼む。

こんな局面に置かれた中年男があたふたする様子には、
他人事と笑えない人もいるでしょう。
焦りつつも、とことんプライドが邪魔をします。
ブリュノという友だちを得てからも、
仕事仲間から証拠を見せるように言われると見栄を張り、
ブリュノを酷く傷つけることをしてしまいます。
一方、ブリュノのほうは、誰とでも友だちになれるけど、
つまりは誰とも友だちではないのだと、自分で気づいています。

互いになじめば、いつか大事な存在になる。
君は僕のたった一人の人。僕は君のたった一匹のキツネ。
『星の王子さま』の引用がとても温かく。
お正月明けの疲れた心に。

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