夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

〈番外編〉高校野球観戦記

2009年08月13日 | 映画(番外編:映画とスポーツ)
映画と全然関係ありませんが、あまりに楽しかったので。

先週の土曜日、おそらく25年ぶりに、
甲子園で高校野球を生観戦してきました。
しかも、開会式をその場で観るのは初めてです。

歩き方って、学校によって全然ちがうものですねぇ。
やる気なさそうな学校も、いくつか見受けられます。(^^;
気持ちいいほど元気な歩きっぷりに、
声援を送りたくなったのが青森山田高校。

それにしても、世間の人がこんなに高校野球好きだとは。
6時半開門で8時前にはアルプス席完売。
500円のアルプス席チケットを買い損ねた人は無料開放の外野席へ。
私はかろうじてアルプス席に入ることができましたが、
試合と試合の間、再びアルプス席に空きができると、
外野からアルプスめがけて観客が大移動してきます。

最高気温36度。暑いなんてもんじゃありません。
日陰も風もなし。水を2リットルぐらい飲んでも全然足りない。
上半身裸の男性多数、ジリジリ焼けています。
女性は完全武装の人がやたら目につきます。
そないな格好をしてまで来んでもええやんと思いますが(私も含めて)、
それでも観たいのが高校野球なのでしょう。

1試合目の途中、このままでは倒れると思い、通路に出てみてホッ。
なんや~、ヨレヨレなん、私だけとちゃうやん。
食べ物屋さんの前でもないのに、
なぜか廊下に数カ所、人だかりのできているところが。
近寄ってみて納得。通風口の下なんですね。
廊下のその部分だけ押しくらまんじゅう状態で、かなり異様。
余計に暑そうだったりして。でもみんな幸せそう。

可笑しかったのは、お手洗いで耳にしたおばちゃん同士の会話。
1人が「あかん、暑すぎる」。もう1人が鏡を覗き込みながら、
「あかん。今日はあかん。どないしても、ぐちゃぐちゃや」。
ほんま、化粧なんてデロデロよ。

2試合目の沖縄興南高校の応援席は、
オレンジのポロシャツが目に鮮やかでした。
私の斜め前に座っていた男女二人連れは、
小柄でスリムなおっちゃんが普通に着ているのに、
少々太めのおばちゃんはどうしても焼けたくないと見え、
長袖シャツの上に無理やり半袖ポロシャツを着ているものですから、
背面に書かれた校歌がところどころ伸びて読めません。
二人のポロシャツが同じものとは到底思えませんでした。

……なんてことも楽しかった、久しぶりの高校野球。また行きたい!
もう一度『ひゃくはち』(2008)を観ようっと。

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『エレジー』

2009年08月10日 | 映画(あ行)
『エレジー』(原題:Elegy)
監督:イザベル・コイシェ
出演:ペネロペ・クルス,ベン・キングズレー,パトリシア・クラークソン,
   デニス・ホッパー,ピーター・サースガード他

全米図書賞、全米批評家協会賞、ペン/フォークナー賞など、
数々の文学賞を受賞しているフィリップ・ロスの短編小説、
『ダイング・アニマル』を映画化。
『死ぬまでにしたい10のこと』(2003)や『あなたになら言える秘密のこと』(2005)のスペイン人女性監督が、
もはや誰もが知るスペイン人女優となったペネロペ・クルスを起用して。

デヴィッドは老齢に入りつつある著名な大学教授。
心の結びつきより体。それが彼の信条。
レギュラー出演中のラジオ番組では、
文学を説く一方、軽妙な口調で快楽主義を唱えている。

ある年の最初の講義。
教室に入ってきた美貌の生徒コンスエラに、デヴィッドは目を奪われる。
生徒を招いたパーティーで、彼女に知的な話題で迫るが、
彼の心の中はただヤリたい、それだけ。
彼女が好みそうな演劇に誘うと、思い通りの展開に。

ところが、彼は、彼女の完璧な乳房の虜になるばかりか、
過去にはなかった嫉妬の感情に振り回されるようになる。

『砂と霧の家』(2003)での演技も圧巻でしたが、
本作のベン・キングズレーは意外なほどチャーミング。ハゲでチビなのに(失礼)。
30歳下のコンスエラに本気になってしまい、嫉妬を見せる演技はあっぱれ。
車の中でつくため息。天を仰ぐ表情。彼女の残り香を探す仕草。
彼女も自分のことを本気で好きだとわかっているのに、
老いと信条がどこか素直にさせてくれません。
自己嫌悪に陥っている姿など、可笑しさと切なさが見事に混在。

また、デニス・ホッパー演じる旧友ジョージも憎めません。
テニスコートで、サウナで、カフェで、
ジョージがデヴィッドに送るアドバイスは痛快。
デヴィッドと20年来の体だけのつきあいであるキャロラインや、
父親を憎みながら自らの不倫を相談しに来る息子ケニーなど、
脇の登場人物もいい味を出しています。

こう書くと、あまり重くなさそうですが、
邦題は「哀歌」の意味だし、原作の題名は「死にかけの動物」ですからね。
2年後に現れた彼女の告白。
彼はそれを受け止められるのか。ズシッと来ます。
音楽、風景も寂しく、美しく、余韻が心地いい。

10年後に読めば、同じ本でも印象は変わる。
映画もきっとそうですね。

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『旅立ち 足寄より』

2009年08月07日 | 映画(た行)
『旅立ち 足寄より』
監督:今井和久
出演:大東俊介,尾野真千子,ペ・ジョンミョン,伴杏里,
   奥貫薫,石黒賢,泉谷しげる,萩原聖人他

その昔はラジオっ子でした。
中学、高校、そして大学に入学する頃までは、
ヤンタン、ヤンリク、オールナイトニッポンと、
テレビはほとんど観ることなく、ラジオばかり。
松山千春も当然のように聴いていましたから、
なぜに今、松山千春の自伝を映画化するのかと思いつつレンタル。

昭和50(1975)年、全国フォーク音楽祭北海道大会が札幌で開催される。
足寄町からやってきた19歳の松山千春は、
土方ファッションにサングラスという格好で登場し、会場中の失笑を買う。
しかし、聴衆を一喝したあと、歌い出した彼の声に誰もが魅入られる。
圧倒的な歌唱力と切ない歌詞。

審査員を務めるSTVラジオのディレクター竹田健二は、
千春に無限の可能性を感じるが、他の審査員は彼の態度の悪さを問題視。
落選が決まって、とぼとぼと会場をあとにする千春に、
「必ず連絡するから、たくさん曲を作っておけ」と竹田は声をかける。

竹田はなんとか千春を世に送り出そうと、
千春が1日2曲を披露するレギュラーコーナーを企画するが、
素人にいきなりコーナーを持たせられるかと、上司は首を縦に振らない。

事情を知らない千春が連絡をあきらめかけた頃、
やっと決まったレギュラー出演の話を携えて、竹田が訪れる。
竹田のクビを賭けて臨んだ初回、千春はトークと歌で聴衆の心を掴む。
こうして、千春と竹田は二人三脚で歩き始める。

千春は、新聞社のぼんぼんかと思われていましたが、
竹田が訪ねてみれば、それは父親ひとりで営む小さな小さな新聞社。
泉谷しげる演じるこの父親が実にいいです。
ジンワリきたのは、千春のラジオ初出演の日。
千春の姉が、出演を知らせようと電話をかけても、実家の父親は一向に出ない。
実家に走った姉は、いつもとかわらず仕事に打ち込む父親の背中に向かって
「今日だって言ったのに!」と怒鳴りつけますが、父親は振り返りもしません。
そして、父親がイヤホンでこっそりとラジオを聴いていることに気づきます。

全編に流れる曲が、昔に引き戻してくれます。
ちなみに、私の最も好きだった彼の曲は『失くした心』なんですけれど、
これはかなりマイナーなようで。

フォークソングはやっぱりいい。
ついでに、長渕剛が華奢な兄ちゃんで、
とっても素直な歌い方をしていた頃も懐かしくなりました。

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『大阪ハムレット』

2009年08月04日 | 映画(あ行)
『大阪ハムレット』
監督:光石富士朗
出演:松坂慶子,岸部一徳,森田直幸,久野雅弘,大塚智哉,
   加藤夏希,白川和子,本上まなみ,間寛平他

森下裕美の同名コミックを映画化。
光石監督の代表作は『富江 replay』(2000)ですが、
私の敬愛するロマンポルノの名匠、
神代辰巳監督の助監督を務めていたこともある人です。
私のロマンポルノ体験(?)についてはこちらをご参照ください。

両親と息子3人の5人家族、久保家。
ある日父親が急逝する。
葬式の席では口の悪い親戚たちが好き勝手なことを言うが、
持ち前の明るさでそれを笑い飛ばす母親の房子。

そんな中に駆け込んで来た男が1人。
仏前で「兄ちゃん」と泣き叫ぶ様子からすると、父親の弟の孝則らしい。
初めて見るこの男が本当に叔父なのかどうか訝る息子たちをよそに、
その日から孝則は久保家に身を寄せることに。

近所では忌中に男を連れ込んでいると噂されているが、
房子は気にもかけていない様子。
5人の同居生活が始まるのだが……。

3人の息子がそれぞれに個性を発揮していて魅力的です。
長男の行雄は、大学生に見えるほど老け顔の中学3年生。
次男の政司は、ケンカっ早いヤンキー中学2年生。
三男の宏基は、女の子になりたいと本気で望む小学4年生。

行雄は教育実習にやって来たファザコンの女子大生に恋をし、
彼女の父親の代わりで構わないからそばにいられたらと願います。
政司はふとしたきっかけでシェイクスピアの『ハムレット』に目覚め、
わからない漢字や言葉につまずきながらも、辞書を片手に完読します。
宏喜は同級生に恵まれて、他のクラスの生徒にバカにされながらも、
学芸会でシンデレラ役を演じきります。

彼らを大きな愛情で包むのが松坂慶子演じる房子。
昼は病院、夜はスナックで働き、彼女にかかればみんな子ども。
こんなお母ちゃんがホンマにいたら、
誰もが素直に育つにちがいありません。

しかし、なんぼ素直に育つと言っても、
父親の死後、即同居を始めたオッサンは誰なのかともう少し考えてもいいし、
母親が産んだのはいったい誰の子やねんと悩んでもいいでしょう。(^^;
そんなことどうでもええやん!というのが落としどころの映画なんですけどね。

信頼関係とはこうして築くもの。
大阪弁がキライでない人なら楽しめる、ほのぼの人情物語です。
あ、だけど、大阪人ならこの大阪弁にはダメだししますよ、きっと。
それもご愛嬌ということで。(^^)

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