夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『ツナグ』

2012年10月10日 | 映画(た行)
『ツナグ』
監督:平川雄一朗
出演:松坂桃李,樹木希林,佐藤隆太,桐谷美玲,橋本愛,大野いと,
   遠藤憲一,別所哲也,本上まなみ,浅田美代子,八千草薫,仲代達矢他

封切り日にTOHOシネマズ西宮にて。

好きな作家とは言えないのに、ついつい読んでしまう辻村深月
本作もどうせなら原作を読んでから観ようと思い、先週読了。
これまでの作品同様、イライラさせられる部分もありましたが、
いつも感じずにはいられなかったイタさは消えた気がします。

高校生の渋谷歩美(♂)は、幼いころに両親を亡くし、祖母のアイ子に育てられた。
いつまでも元気だと思っていたアイ子だが、老いは着実に忍び寄っているよう。
そんなある日、アイ子から“使者(ツナグ)”の仕事を引き継いでほしいと言われる。

ツナグとは、生者と死者との再会を叶えるための窓口となる案内人。
都市伝説のごとく口コミで静かに広がるツナグの噂を聞きつけた、
死者との再会を切望する人びとが、アイ子のもとへ電話をかけてくる。
アイ子は死者と連絡を取り、会いたがっている人がいることを伝える。
死者側が了承すれば、会う段取りを整える。それがツナグの役目。

ただし、生者側も死者側も、会えるのは一度だけ。
誰かに会ってしまえば、ほかに会いたい人がいたとしても、二度目の再会は叶わない。
また、死者側から会いたいと申し出ることはできず、
いくら会いたい人がいても、生者側が願わないかぎり会えないのだ。
いわば相思相愛の関係でなければ再会は果たされない。

歩美はアイ子の後継者となるかどうかを考える間、
生者である依頼人と会って話を聞く役目を引き受けるのだが……。

依頼人はこんな人たち。
癌で亡くなった母親(八千草薫)に会いたいと願う自営業者の畠田(遠藤憲一)。
気まずくなったまま事故死した親友の御園(大野いと)に会いたいと願う女子高生の嵐(橋本愛)。
7年前に失踪した婚約者のキラリ(桐谷美玲)に会いたいと願うサラリーマンの土谷(佐藤隆太)。

茶髪でチャラチャラしたイメージだった桃李くん
こんなにも真面目で誠実な役柄がピッタリでびっくり。

ほかのキャストもピタッとはまっていますが、
原作を読んでからのほうがそれぞれの表情に背景を読み取れて面白いかもしれません。
長男の意識が強い畠田と息子、映画には登場しない弟家族との関係、
御園と嵐が親しくなったきっかけやこれまでの高校生活など、
役者の表情から原作に想いを馳せることができます。
もっとも「はしょられ度」が低いのは土谷の話で、「でも、大好きだよ」には泣きました。

ちなみに、原作は急死したアイドルに会いたいと願うOLの話で始まります。
その後、上記の人たちが別々の章で描かれ、
最後の歩美の章では、それぞれの人たちとのやりとりが克明に。
最初の章のアイドルは、飯島愛を思わせるような女性でした。
自殺も考えているOLが「世の中は不公平」とつぶやくのに対して、
アイドルが「世の中が不公平なんて当たり前。
みんなに公平に不平等」と言うシーンが心に残っています。

映画では街頭で歩美に声をかけるのは嵐でしたが、原作ではこのOLでした。
そうそう、御園の嵐への「伝言」は、映画では優しさに捉えられなくもないけれど、
あれは決してそうではないと思います。

で、原作と比べてどうだったかという点は関係なく、
映画としての満足度がどうだったかというと、「フツーによかった」。
どうも私の場合、感動するのが当たり前みたいな無難に高得点の作品には
心が射抜かれるところまでは行かないようで。(^^;

終映後、明るくなった場内で、私の前にいたカップルから聞こえてきた会話。
たぶん、感動しまくりだったであろう彼女に対して、
彼のほうが「う~ん、感動したかしなかったかと聞かれたら、確かに感動したけれど」。
私もキミのその感想に一票。

と言いつつも、JUJUのエンディングテーマ曲の歌詞まで覚えちゃってたりして。
出逢えたことにいま、ありがとう。

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『ある夜のできごと』

2012年10月09日 | 映画(あ行)
『ある夜のできごと』
監督:鈴木聖史
出演:秦秀明,松尾敏伸,内山信二,高部あい,田村愛,中山絵梨奈他

TSUTAYA DISCASでちょっと気になってレンタル。
これが長編デビューとなる監督の2010年の作品で、8月末にレンタル開始。

出演者はそれなりにファンも多い若手俳優らしいですが、
名前を聞いてスッと顔が思い浮かぶのは内山くんぐらい。
『森崎書店の日々』(2010)に出ていた松尾敏伸くんとやらも、
稲垣吾郎ちゃんとGACKTを意識したような印象で、
かなり引き気味で観はじめました。

カッちゃんは都内で雑貨店“BRAND NEW ROCKT”を経営する32歳の男。
ある日、故郷の山梨から知人の訃報が届き、慣れない喪服を着て通夜に赴く。

通夜からの帰り道、中学の同窓生だったヤスタカとケンさんに出会う。
彼らは社会に出るまでは、マユミやナオという女子とともに、
5人で毎週のように集まっては酒を飲んでいた仲。
それがいつしか疎遠になり、久々の再会となったわけだが、
なんとなく漂う距離感を振り払えず、話も盛り上がらない。

一方、3人がかつてかよっていた東中学校では、
校庭の木の根元に埋められたタイムカプセルを男子生徒らが発見。
たまたまそこを通りかかった女子生徒ユカは、
タイムカプセルに入っていた写真の主が気になって仕方がない。
写真を持ち歩くうち、葬祭会館の場所を聞いてきたオジサンこそが、
カッちゃんと同一人物であることに気づき……。

学生時代の居酒屋でのくだらん話に、こんな時期もあったなぁと思いつつ、
松尾くん演じるヤスタカのエラそうな態度が鼻につき、
主人公カッちゃんの煮え切らん様子にもイライラ。
常時ハイテンションのマユミとブリブリのナオちゃんもしんどく、
別に内山くんも見とうないし。

……てな状態だったのですが、
ユカたち女子生徒が早朝の中学校で彼らに会うシーンはイイ。

雑貨店の経営が実は思わしくないカッちゃん、
マユミと結婚したものの離婚を考えているヤスタカ、
医学部入学のために今も受験勉強をするケンさん。
昔の仲間だからこそ言いたくても言えない思いをそれぞれに持っていて、
それをぶつけあった後に学校に忍び込んで屋上で飲むビール。
夜明けを見ながらなら、確かにコーヒーのほうがよかったでしょうけれど。

過去は不意にやってくる。
それが明日に向かって歩き出す力になることだってある。
ちょっと幸せなオチ付きです。

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『ハンガー・ゲーム』

2012年10月07日 | 映画(は行)
『ハンガー・ゲーム』(原題:The Hunger Games)
監督:ゲイリー・ロス
出演:ジェニファー・ローレンス,ジョシュ・ハッチャーソン,リアム・ヘムズワース,
   ウディ・ハレルソン,エリザベス・バンクス,レニー・クラヴィッツ他

カナダに渡って22年、帰国中の友人とお昼ごはんを食べることになり、
待ち合わせ時間までに1本観ようと企てました。
あちこちの劇場のHPを開き、ついでに週末の計画も立てようとしたら、
誤って週末の本作をネット予約。
その事実にまったく気づかず劇場へいそいそと向かい、
発券後もロビーで本を読みながら待ちつづけ、
さすがに呼び出しがないのは変だと気づいたのが開映3分前。

こういうときに限って、上映館はTOHOシネマズ梅田別館アネックス
本館から走りましたがな。チケットもないのに。
結局たまっていたポイントで鑑賞しました。嗚呼、むなしい。

巷の評価イマイチの本作ですが、予告編をさんざん見せられ、
『ウィンターズ・ボーン』(2010)のネエちゃんが、
“I volunteer! I volunteer as tribute.(=私が代わりに出ます)”と挙手するシーンがめちゃ男前で、
これは観なくっちゃと思いまして。

未来の独裁国家パネムは、富裕層が暮らす先端都市キャピトルと、
それに隷属する12の貧困地区で構成されている。
独裁者はどうすれば反乱を抑止できるかを模索。
その結果、毎年12地区から12~18歳の男女各1名の計24名を選出、
最後の一人になるまで殺し合いをさせるイベント“ハンガー・ゲーム”を企画。
それを完全生中継して人気を博していた。

第12地区からはプリムという少女が選ばれるが、
彼女の姉カットニスは即座に挙手、代わりに出場することを志願する。
男子の中から選出されたのは、同学年のピータ。
別れを嘆き悲しむプリムを男友達のゲイルに託し、
カットニスとピータはキャピトルへと向かうのだが……。

見世物となる殺戮ゲームというと、
『バトルランナー』(1987)や『GAMER』(2009)などを思い出しますが、
本作のおもしろいところは、見世物が始まるまでのあれこれ。
無駄に長いとも言える143分のうち、
60分以上が経過しないとゲームは始まりません。
それまでの間、教育係に師事して勝つための作戦を練ります。

また、出場者24人が取り組む過酷なトレーニングでは駆け引きいろいろ。
弱いところを見せれば、本番で真っ先に狙われるかもしれない。
そこで、トレーニングの段階で自分の強さを感じさせておくわけです。

単に強いだけでは駄目で、観衆の人気を得ればスポンサーも付く。
スポンサーが付けば、ゲーム中に困ったときの差し入れを見込むことができ、
無愛想なカットニスがどのように好感度をアップするかなど、興味を惹かれます。

最初はただの酔っ払いかと思われた教育係にウディ・ハレルソン。
カットニスの印象を良くするために斬新なアイデアを出す衣装係にレニー・クラヴィッツ。
このふたりの愛情に満ちた表情がとても好きでした。

そんなわけで、これも結構楽しめたのですが、さすがに続編は要らんやろ~。
エンドロールの『ハンガー・ゲーム2』公開決定の文言にガクッ。
続編なんて考えるなら、公式HPは『ハンガー・ゲーム』のくせして、
ポスターは『ハンガーゲーム』、このテキトーさをまずなんとかしなはれ。

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『スノウマゲドン』

2012年10月05日 | 映画(さ行)
『スノウマゲドン』(原題:Snowmageddon)
監督:シェルドン・ウィルソン
出演:デヴィッド・キュービット,マイケル・ホーガン,マグダ・アパノヴィッチ,
   ジェフリー・バラード,ローン・カーディナル他

2011年のカナダ作品。
7月初めにレンタルが開始されたので、TSUTAYAではそろそろ準新作になりそうな頃。

どうです、このB級、いや、C級感いっぱいのタイトル。
ウケを狙った邦題ではなく、原題そのまんまです。
監督はTVM(テレビ放映用の映画)を主に撮っている人のようです。
これももちろんTVMで、出演陣も誰も知らん。
『ブレーキ』に続いてネタバレ100%で書きますよ~。(^O^)

クリスマス目前のアラスカの町ノーマル。
ジョンはあちこちへのクリスマスプレゼントの手配におおわらわ。
その妻ベスは、ヘリコプターのパイロットを務めている。
ふたりの間には娘のジェニファーと息子のルディ、
それにシベリアンハスキーのモーも大事な家族。

その日、玄関のベルが鳴り、ジェニファーが出ると誰もいない。
扉の前にはラッピングされた箱が置かれているのみ。
クリスマスまで待てないルディが開けてみると、
ノーマルの町を見事にミニチュアで再現した玩具、スノードームだった。

翌朝、町を見下ろすサルバーグ山にスノーボーダーがやってくる。
それが超人気ボーダーのデリックとその弟分グレッグだと聞き、ジェニファーは大興奮。
山頂まで彼らを案内することになったベスに、自分も同乗させてくれとねだる。
ジョンの援護発言によりベスは渋々承知、ジェニファーを連れて出発する。

ところが、留守番のルディがスノードームの台座のボタンを何気なく押したところ、
地割れするほどの地震が起きる。そして、スノードームの中でも同じ現象が。
次に氷の隕石が降ってきたかと思うと、大規模な雪崩。
ルディが言うには、これはスノードームの呪いで……。

最初の地震の時点でワラけます。
町はめちゃめちゃに潰れ、地面がパッカ~ンと割れているのに、
在宅のジョンは「揺れた?」。そら鈍すぎるやろ。

ベスたちの乗ったヘリコプターは氷の隕石に襲われて墜落しますが、死にません。
ジョンが雪上車で彼女たちを探しにくれば大規模な雪崩が起こり、
雪上車は雪の奥深くに埋もれてしまいますが、死にません。不死身か!

スノードームを届けたのが誰なのかはわからずじまいだけど、
ジョン一家に届けられたのは正解なんだそうで。
なぜならルディ曰く、「お父さんは勇者だから」。
自分が受け取ったスノードームが元凶だから、自分がカタをつけるというジョン。
ほかの住民が「どうやって?」と尋ねると、「わからない」。んなアホな。

結局どうするのかと言うと、これはルディの大好きなゲーム、
「王冠とドラゴン」と同じじゃあないかということになり、
呪いを消すためには火山に王冠を投げ入れなあかん。
ほならこの場合は王冠はスノードーム。

突如火を噴きはじめたサルバーグ山にジョンが向かい、
スノーモービルから放り出されて雪面に激しく叩きつけられようとも死なず、
雪に埋もれた雪上車を「おりゃー」と気合いで動かして噴火口へ。
スノードームを投げ入れて一件落着となるのでした。
『アルマゲドン』(1998)のブルース・ウィリスみたいには死にませんから。

89分と短めなのに、最後の10分は苦痛にすら感じました。
しかもラスト、これだけやるならもっと派手に喜べばいいものを、
なんか半端な盛り上がりようだし。
ま、卒倒覚悟でレンタルしたので、ネタになったからええねんけど。

ちなみに本作以外の同監督作品は、
『蛾人間モスマン』(2010)とか『キラー・マウンテン』(2011)とか。
う~ん、そそられる~。性懲りもなく借りてしまいそう。(^o^;

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『父の初七日』

2012年10月03日 | 映画(た行)
『父の初七日』(原題:父後七日)
監督:ワン・ユーリン
出演:ワン・リーウェン,ウー・ポンフォン,チェン・ジャーシャン,
   チェン・タイファー,ジャン・シーイン,タイ・バオ他

毎週土曜日の晩はたいてい飲み過ぎます。
だから、日曜日はほぼヘロヘロ。
ヘロヘロでTSUTAYA DISCASでレンタルしたDVDを義務のように観ます。
だもんで、つまらないと寝てしまいそうになります。
でも、寝てしまった分を1本と数えることは自分で許せないので、
寝てしまった部分を観直すこともしばしばです。

本作は台湾でロングランを記録した2009年の作品。
日本では今年の3月に公開され、8月末日にレンタル開始となりました。
ゆるゆると進むので、ところどころに寝かけたシーンあり。
それでもつまらなくはない、むしろとっても面白い作品でした。
初めて見る道教のお葬式に興味津々、笑って、しんみり。

台北で働く娘アメイは、父危篤の知らせに慌てて帰郷する。
兄のタージとともに病室へ駆けつけるが、父はすでに息を引き取っていた。
母の死後、男手ひとつで自分たちを育ててくれた父。
その亡骸に付き添って自宅へと戻る。

道士として生計を立てる叔父アイーの指示のもと、
伝統的な道教式の葬儀が執りおこなわれることに。
高校生の従弟シャオチュアンは、学校の課題制作にうってつけと、
この葬儀の様子をビデオカメラに収めはじめる。

暦を検討したうえで、野辺送りの日と決められたのは7日後。
古いしきたりに則った葬儀が進んでゆく。

こんなしきたりがあるのかと目が点になることしきり。
故人が好きだったものを供えるとき、好きだったものなら何でもあり。
息子は表紙にハダカのネエちゃんが大写しになったポルノ雑誌を堂々と進呈。
道士が真面目な顔をして「故人は喜ぶことでしょう」なんて言う。確かに。(^^;

娘は道士から「泣きなさい」と言われたらいつ何時でも、
棺桶にすがって泣かなければなりません。
食事中でも歯磨き中でも、「泣け」と言われればいつだって。
口の中にごはんが入ったままだったり、歯ブラシを持ったままだったり。
また、中国や朝鮮半島では伝統的な職業である「泣き女」も登場。
これがお祓いになるんですねぇ。

故人の知り合いが葬儀の飾りとして作るのは缶タワー。
これが空き缶ではないものだから、あまりの暑さで膨張し、
中身が次々にシュワーッと噴き出すところは笑えます。

台湾語で「疲れる」は「父の死を嘆く」と書くそうで
(本編ではわかりづらかったですが、特典映像の台湾語字幕を見て納得)、
悲しみにひたる時間もないままあれやこれやに追われる兄妹が、
ドッと疲れた就寝時にそのことを思い出してふきだす顔にこちらもニッ。

ようやく父を亡くしたという実感が湧くのは何カ月も経ってから。
父との想い出が紡がれるシーンは優しさに溢れています。

印象的な使われ方の日本語と梶芽衣子の曲。
後者は『歌謡曲だよ、人生は』(2007)の一編だとしても違和感なし。
こんな作品がロングランを記録する国ですよ。
『海角七号 君想う、国境の南』(2008)の大ヒットを振り返っても、
尖閣諸島の話を考えると、その台湾人はちがうんじゃあ……と思うのでした。

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