夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『推理作家ポー 最期の5日間』

2012年10月20日 | 映画(さ行)
『推理作家ポー 最期の5日間』(原題:The Raven)
監督:ジェームズ・マクティーグ
出演:ジョン・キューザック,ルーク・エヴァンス,アリス・イヴ,
   ブレンダン・グリーソン,ケヴィン・マクナリー他

ジョン・キューザック、大好きです。
これまた私の好みのタイプとは一致していないはずなのですが、
『セイ・エニシング』(1988)の頃からなぜか目が離せません。
顔からは小柄な印象を受けますが、意外に長身の190cm。
『コン・エアー』(1997)の連邦捜査官役は珍しく格好良かったけれども、
どんなにシリアスな作品であろうと、いつもどこかお茶目です。

そんなわけで、本作はR15+指定のグロいシーンありと聞いてはいたものの、
ジョン・キューザック主演なんだから大丈夫と判断して観に行きました。

世界初の推理小説家と言われ、偉大な詩人でもあるエドガー・アラン・ポー。
1849年10月7日に酔っぱらっているのか患っているのかわからない、
瀕死の状態のところをボルティモアの某所で発見され、病院へ運び込まれるも帰らぬ人に。
発見される前の5日間、どこでどうしていたのかがまったく謎であるうえ、
死ぬまぎわに「レイノルズ」という言葉をくり返していたとのこと。
ならば5日間に起きたことを想像してみました、というのが本作です。
原題はポーの有名な詩“The Raven(=大鴉)”。

1849年のボルティモア。
著名な作家で詩人のエドガーは、妻を病で亡くしてからというもの、
小説も詩も書かず、ペンを取るのは評論だけで、酒とヨード浸り。
出版社や新聞社からもほとんど見限られて、貧苦にあえぐ状態。

ある夜、響き渡る女性の悲鳴に、駆けつける警察官たち。
密室のはずのアパートの部屋に踏み込むと、母娘の横たわる惨殺体。
この部屋のトリックに気づいた刑事フィールズが部下に調べさせたところ、
あらゆる状況がエドガー・アラン・ポーの小説の模倣であると判明する。

フィールズらはポーのもとを訪れ、協力を要請。
すると、同一犯によるやはりポーの著作を模倣した事件が再び起こる。
犯人が残したヒントから、次の事件の舞台は仮面舞踏会だとポーが推察。
舞踏会を開催するハミルトン大尉邸でフィールズらが待機するが、
その目の前で大尉の愛娘、しかもポーの恋人エミリーがさらわれる。

エミリーを生きて返してほしくばと犯人が要求してきたのは、
翌日からの新聞紙上にこの事件を推理したポーの小説を連載せよとのことで……。

グロいっす。猟奇殺人の描写はホラーそのもの。
首かき切られる、腹かっさかれる、舌ぬかれる。まったく直視できず。
でも、それ以外は結構楽しめました。

映画サイト等の評価を見てみるとイマイチで、
それにひきかえ『ツナグ』は絶賛だったりするので、
私はよほど見る目がなかろうと思うのですけれど、
どうもフツーだと感じた作品が絶賛されるとシラけてしまうフシがあります。(^^;
ま、冷静に考えれば、私でもやはり『ツナグ』のほうが好きでしたけれど。

犯人がわかったときにはなんだか無理やりな感じがふつふつと。
謎だった「レイノルズ」の件も含め、こじつけた印象はありあり。
それでもこんなふうに想像してみるのはおもしろい。
その人の人生が幸せだったかどうかなんて他人にはわからないし、
残された側がそう思いたいだけかもしれませんが、
もしも本当にこんな最期の5日間だったなら、ポーは満足だったろうと思うのです。

フィールズ役のルーク・エヴァンスがめっぽうカッコよかったことを付け加えます。
要注目だと思って調べたらゲイなんだ!
女にはチャンスがないのですね、残念だぁ。

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『ムンクの叫び』

2012年10月18日 | 映画(ま行)
『ムンクの叫び』
監督:葉山陽一郎
出演:中野淳史,亜矢乃,沖正人,黒田耕平,林田麻里,赤沼夢羅他
 
8月末にシアターセブンでの上映時に観そびれて。
2カ月待たずにDVD化されました。
 
監督は『ちびまる子ちゃん』の脚本家。
やはり常人の発想では人気番組の脚本家は務まらないのかも。
 
エドヴァルド・ムンクの名画『叫び』、あの顔そっくりに生まれた赤沼カズオ。
生まれたときにはあまりの醜さに両親が絶句したほど。
父親は息子に整形手術を施すことも考えたが、麻酔アレルギーのカズオには無理。
帽子にサングラス、マスクといういでたちで中学校に通うが、
登校すれば容赦ないイジメが待っている。
ただ一人、優しく接してくれるレイコにカズオは想いを募らせる。
 
カズオの父親はアパレルメーカーを経営する著名なデザイナー。
その血を引いたのか、カズオの持つ服飾デザインの才能が開花。
レイコのドレス姿を夢見て描いたデザイン画が父親の目に留まり、
父親は新コレクションにそれを採用、大評判となる。
しかし、あくまでも父親の作品として発表され、カズオの名前などどこにも出ない。
それでも父親のためにデザインを考案しつづけるカズオ。
 
あるとき、母親が二人目を妊娠。カズオに歳の離れた弟ツギオができる。
イケメンのツギオは溺愛されて成長、どら息子の王道をゆく。
大学を卒業したら本格的にデザインを勉強したいと言い出すが、
ツギオにその才能はないと見込んでいる父親は、
経営陣としての仕事を任せるから専念するようにと言い渡す。
 
その頃、33歳になったカズオは相変わらずの毎日を送っていたが、
ふとしたことからホームレスのカジモトと知り合う。
初めて友だちと呼べる相手ができたカズオは大喜び。
また、偶然レイコと再会し、心を躍らせるのだが……。
 
醜く生まれついた男の生涯を描く、切なくも美しいドラマ、
と言いたいところですが、キワモノ的な印象は否めません。
イジメのシーンは今時えげつないものがいくらでもあるので控えめなほうですが、
ツギオとお手伝いさんが結託しておこなうイジメのひとつにはオエ~ッ。
 
レイコだけは心根を見てくれる人だと思いきや、
これがなかなかのビッチで笑っちゃいます。
彼女が実はそうだったとわかった瞬間、キレたカズオが取る行動。
喜んで手を貸すカジモトとの友情はいいんですけれど。
 
老けメイクも含め、いわゆる特殊メイクには、コメディやホラーじゃないかぎり、
私は引き気味になってしまうからなのでしょうね。
おもしろいアイデアだとは思いましたが、
メイクにまず引き、甲高い声にもドン引き、テンション低め。
 
レイコ役の女優がバリ一重まぶたであることには親近感を感じます。
友情出演のカイヤには、「中村屋」を思い出してウケました。
5年以上前、アホほどくりかえし見て笑ったことが懐かしい。
「中村屋」はこちらにて。
貼り付けたついでに聴いたら、阿部サダヲの声、やっぱりワラけます。

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『WIN WIN ダメ男とダメ少年の最高の日々』

2012年10月16日 | 映画(あ行)
『WIN WIN ダメ男とダメ少年の最高の日々』(原題:Win Win)
監督:トム・マッカーシー
出演:ポール・ジアマッティ,アレックス・シェイファー,エイミー・ライアン,
   ボビー・カナヴェイル,ジェフリー・タンバー,バート・ヤング他

現在、シネマート心斎橋にて公開中ですが、
すでにDVDレンタルも開始されています。
『扉をたたく人』(2007)の監督による、またしても優しさの詰まった物語。
沈んだ心にちょっぴり元気を取り戻せそうです。

顔ぶれは実力派なれども地味であることは確かですから、
日本ではDVDスルーの憂き目に遭いそうだったところ、
ポール・ジアマッティが『ロック・オブ・エイジズ』のマネージャー役でちょい目立ち、
ほなら公開してみよか……っちゅう感じなのかと勝手に想像しています。

ニュージャージー州の小さな町。
高齢者福祉を専門とする善意の弁護士マイクは、不況のせいで仕事が激減。
事務所のやかましいボイラーやすぐ詰まるトイレを修理する金もない。
地元高校のレスリング部のコーチとしてわずかな収入を得る程度。

ある日、認知症の兆候が出はじめた資産家の独居老人レオがやってくる。
本人は自宅に住みつづけたいと主張するが、一人娘とは音信不通。
州が選出した後見人を付ければ、介護施設に入れられるのは目に見えている。

後見人になれば月額1500ドルの報酬を受け取れることを偶然知ったマイクは、
レオの付き添いで裁判所へ出向いたさい、自分が後見人になるとつい申し出る。
しかも、「自宅でレオの世話をする」という検事との約束を反故にして、
レオをとっとと介護施設に入居させてしまう。

主のいなくなったレオの自宅へ立ち寄ると、ポーチにたたずむ一人の少年。
彼はカイルという高校生で、オハイオ州からまだ会ったことのない祖父を訪ねてきたと言う。

カイルの話では、母親のシンディ、つまりレオの娘は薬物中毒で入院中。
行く当てのないカイルの面倒をしばらくマイク一家がみることに。
ところが意外や意外、カイルはレスリングの実力者で……。

“Win Win”とは、自分も勝ち、相手も勝つこと。
交渉や取引などにおいて、両者ともに利得を享受することを指すのだそうです。
切羽詰まってのこととはいえ、片方だけがオイシイ思いをしようとすれば上手く行かない。
けれども双方に利得があれば、交渉事は上手く行く。
マイクがそれをよくよく考えて、見せるワザは鮮やかです。

ぶっきらぼうなカイルがレスリング部で居場所を見つけ、
メンバーに徐々に受け入れられていく姿も嬉しい。
天井に貼られた紙、「これが読めたらフォール負け」は笑えますね。

私より年下とは思えないポール・ジアマッティ、かねてから大好きです。
ますます腹が出てきて、タイプとは言えませんけれど。
劇場ではなくDVDにて鑑賞しましたが、DVDは特典映像がなかなかの充実ぶり。
インタビューにうつむきかげんで答える彼は、意外にシャイなようで。

エイミー・ライアン演じるマイクの妻ジャッキーの母性に脱帽。
“We love you”、背中に向けて最高に効く台詞。

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『アイアン・スカイ』

2012年10月14日 | 映画(あ行)
『アイアン・スカイ』(原題:Iron Sky)
監督:ティモ・ヴオレンソラ
出演:ユリア・ディーツェ,ゲッツ・オットー,クリストファー・カービイ,ペータ・サージェント,
   ステファニー・ポール,ティロ・プリュックナー,ウド・キア他

予告編等で興味を持った人はとっくにご覧になっていることでしょう。
『ハンガー・ゲーム』のチケット予約時に、日にちを誤ったのはこれのせい。
こんなヘンテコな映画は早くに終映してしまいそうで、
先週末の上映予定をズラズラと並べて開けていたら、ミスを犯しました。
そんなわけで、TOHOシネマズ梅田にて。
実はこの日も3本ハシゴ、これ→『くろねこルーシー』『ツナグ』の順でした。

ぶっ飛びのフィンランド/ドイツ/オーストラリア作品です。
よくもこんなことを思いついたものだと呆れ、大笑い。

2018年のアメリカ。
再選を目指す女性大統領が、国民の人気を勝ち取るべく考えた政策は、
黒人の男性ファッションモデル、ジェームズを月面へと送り込むこと。

ところが、無事に月面へと到着したジェームズが見たものは、
第二次世界大戦後に月へと逃亡したナチスの残党が月の裏側に築いた帝国の秘密基地。
彼らは幼少の時分から徹底した洗脳教育を受け、総統には絶対服従。
着々と軍備を強化し、地球侵略の機会を窺っていたのだ。

次期総統の座を狙う月面ナチス准将クラウスや、科学主任博士リヒターは、
ジェームズのスマホを取り上げ、これがコンピュータだと聞いて驚愕。
スマホさえあれば開発中の最終兵器「神々の黄昏」号を完成させられる。
捕虜の身となったジェームズは、あろうことか色を抜かれて白人にされ、
月面ナチスのガイド役として地球への同行を余儀なくされる。

クラウスの出発に、彼の婚約者で地球学者のレナーテがいつのまにか同乗。
大統領と会わせろと言うクラウスをホワイトハウスへ連れて行くわけにもいかず、
ジェームズはまずは選挙キャンペーンの責任者ヴィヴィアンに引き合わせる。

もちろんヴィヴィアンは月面ナチスの存在など認めようとしない。
笑い飛ばしたものの、絵になる男クラウスと卓越した演説ぶりのレナーテを見て、
これは選挙キャンペーンに使えると考える。
レナーテの草稿どおりの演説をおこない、人気を取り戻す大統領。
同じ頃、ホームレスとなったジェームズは、
月面ナチスの襲撃に備えよと街頭で叫ぶのだが狂人扱いされ……。

はい、とってもバカバカしくて面白いです。
黒人のモデルが白人のホームレスへ……なんちゅうギャグや、
どこの国もこっそり核兵器を保持していたり……なんて様子や、
不謹慎ながら笑ってしまうシーンばかり。

レナーテがひょっとして自分たちのほうが誤っているのではと気づくきっかけが、
チャップリンの『独裁者』であるところもシャレています。
あれを10分に短縮して見せられたら、「総統はスバラシイお方」になるんですと。
そっちも見てみたいものです。

残念だったのは、冒頭から携帯を鳴らしまくっていた2席向こうのオッサン。
映画を観てバカ笑いするオッサンとは同じ箇所で笑うのが悔しく、
そのせいでもっと面白かったはずが控えめな笑いになってしまいました。
オッサンこそ月面ナチスに連れて行かれてしまえっ。
……てなこと、『汚れた心』のときにも言ってましたね、私。(^^;

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『くろねこルーシー』

2012年10月12日 | 映画(か行)
『くろねこルーシー』
監督:亀井亨
出演:塚地武雅,安めぐみ,大政絢,濱田マリ,峯村リエ,つみきみほ,
   直江喜一,山本耕史,京野ことみ,佐戸井けん太,生瀬勝久他

前述の『ツナグ』と同日に梅田ブルク7にて。

黒猫をメインキャストに据えた初の実写ドラマとの触れ込みですが、
TV版のほうは存在すら知らず、未見です。猫大好きなのに、不覚だぁ。
山本耕史演じるTV版の主人公、鴨志田陽は特別出演。
その父親である鴨志田賢がこの映画版の主人公です。

脱サラして占い師となった鴨志田賢。
ボウリング場が入るビルの一角に占いコーナーを持つが、
これといって特色もなく、閑古鳥が鳴いている。
テナント料を払えば常に赤字の状態で、とても家族を養えない。
妻の幸子からは別居を言い渡され、息子の陽も賢とは話そうとしない。

賢が何よりも苦手としているのは黒猫。
これまでの自分の人生の節目、しかも悪いほうへの転換期に、
賢の前をなぜか必ず黒猫が横切ってきた。
黒猫が目の前を横切ればまたしても災いが降りかかるのではないか。
そう思うと怖くてたまらず、黒猫を見ると避けている。

なのに近頃よく見かける大きな黒猫。
飼い主らしき男の呼び声から、“ルーシー”という名前だとわかる。
ある日、賢の住むアパートの前から鳴き声が。
どうやらルーシーが産んだらしい子猫2匹。当のルーシーはいない。
このままでは子猫たちはカラスに狙われてしまうと、仕方なく飼うことに。

“ルー”と“シー”と名付けた子猫2匹を連れて、占いコーナーへ出勤した賢。
ところがこれが思いがけず話題となり、「くろねこ占い」は大人気に。

猫が悪く描かれているのでなければ、
猫が登場する作品は何でも観たいですが、そんななかでもこれは格別。
黒猫好きでなくとも可愛いです。

渋々飼いはじめた猫なのに、耳もとやおなかの上を駆けずりまわられ、
「もおっ、寝かせてくれよぉ」とぼやく賢に大笑い。
猫を飼ったことのある人なら必ず経験があるでしょう。

行方不明だった親猫ルーシーがいつのまにか帰ってきて、
猫の家族とともに過ごすうち、賢は誰かを大切に思う気持ちに至ります。

隣のブースの奇天烈な衣裳を着た占い師役、濱田マリが可笑しくて、
彼女の「キャラ立ってなんぼのもんよ」に笑います。
また、『3年B組金八先生』の加藤優役、あの「腐ったミカン」の直江喜一が、
ビルを経営する会社の部長役で出演していて、
ずっとミカンを食べながらしゃべっているところもナイスギャグ。
あまりの見事なハゲっぷりに、最初は彼だと気づきませんでしたけれども。

これもまたちょっぴり幸せなオチがあって、ほっこりニッコリ。
弱いんだなぁ、こういうオチに。

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