夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『逃げきれた夢』

2023年06月25日 | 映画(な行)
『逃げきれた夢』
監督:二ノ宮隆太郎
出演:光石研,吉本実憂,工藤遥,杏花,岡本麗,光石禎弘,坂井真紀,松重豊他
 
前述の『プチ・ニコラ パリがくれた幸せ』の後、同じくシネ・リーブル梅田にて。
 
オンライン予約して行かずに劇場窓口でチケットを購入しました。
作品名をうろ覚えで、『逃げきれぬ夢』と言ってしまった。全然ちがう話になってまうがな(笑)。
 
北九州市の定時制高校で教頭を務める末永周平(光石研)。
教員たちとの関係は良好、生徒たちからも一応慕われているはず。
しかし家では妻の彰子(坂井真紀)と娘の由真(工藤遥)からまったく相手にされていない。
老人ホームに入る父親(光石禎弘)に面会に行っても反応なし。
 
日々になんとなく空しさを感じていたある日、
元教え子の平賀南(吉本実憂)が働く定食屋で会計をし忘れて退店し、
後を追いかけてきた南に自分は病気だと口走ってしまう。
 
自分のことを見つめ直したくなった末永は、校長に嘘をついて年休を取り、
幼なじみの石田啓司(松重豊)に会いに行くのだが……。
 
序盤の末永はかなりキモイです(笑)。
今までろくに話もしなかった娘に対して、突然「彼氏はいるのか」とニヤケ顔で聞いたり、
「最近加齢臭が気になるからアロマオイルを買ってきてほしい」と頼んだり。
台所に立つ妻に後ろから抱きついて「スキンシップが大事だってネットに書いてあった」とか。
当然のごとく妻から突き飛ばされた後、交際時代の話を始めて妻ドン引き。
 
女性の目で見ると、「はぁ?」と言いたくなるところが多い作品ですが、
もしかすると同世代の男性は共感できるところがいっぱいあるかもしれません。
特に、これまで仕事一筋で、酒オンナ博打いっさいなし、
みんなに好かれたい一心で生きてきた男性は、本作を観るとツライはず。
 
がんばってきたのに家族はそれを認めてくれない。
定年まで1年を残して「仕事を辞める。どう思う?」と妻と娘に尋ねたら、労いの言葉がない。
腹立たしい気持ちをぶちまけると、「辞めたいけどどう思う?ならともかく、
辞めるって決めてるんでしょ。だったらこっちがどう思うか関係ないでしょ」と言われ、
「で、辞めて何かしたいことがあるの?」と聞かれると、何も思いつかない自分に気づきます。
 
相当面倒くさい父親ですが、寂しげな顔を見ていると同情の気持ちも湧いてくる。
でもねぇ、実際には可哀想かなと思うと、たいていロクなことにはならんのです。
 
後悔のないように生きればいい。でも、ひとつも後悔のない人生なんてやっぱり無理だと思う。
イチローじゃあるまいし。(^^;

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『プチ・ニコラ パリがくれた幸せ』

2023年06月24日 | 映画(は行)
『プチ・ニコラ パリがくれた幸せ』(原題:Le Petit Nicolas: Qu'est-ce Qu'on Attend Pour Etre Heureux?)
監督:アマンディーヌ・フルドン,バンジャマン・マスブル
声の出演:アラン・シャバ,ロラン・ラフィット,シモン・ファリュ他
 
家の近くの劇場ではほぼ観るものがなくなったので、シネ・リーブル梅田まで行きました。
2本ハシゴの1本目は、フランスのアニメーション作品
 
『プチ・ニコラ』、私はまったく知りませんでした。
ルネ・ゴシニとジャン=ジャック・サンペによる、世界中で愛されている絵本なのだそうで。
『プチ・ニコラ』(2009)と『プチ・ニコラ 最後の夏休み』(2014)、過去に実写映画化もされているのに、
どうして私は知らなかったのか。と思って自分のブログで検索をかけたら、ちゃんと観てるやん。(^^;
「ちびども、がんばる。」というタイトルで書いていました。12年前のこと。
 
本作はその絵本そのものをアニメ化したわけではなく、
原作者ふたりを主人公とした『プチ・ニコラ』誕生の物語が描かれています。
 
ルネ・ゴシニとジャン=ジャック・サンペは親しい友だち同士。
イラストレーターのサンペは文才がないことを自負していて、
作家のゴシニと組めば面白い絵本を作ることができるのではと考えます。
 
パリのささやかなアトリエで、キャラクターから一緒に創作を始めたふたりは、
やんちゃな男の子の名前をニコラと決め、迷った末のタイトルはシンプルに『プチ・ニコラ』に。
ゴシニが書いた文章にサンペが絵をつける形で、ニコラの日常が描かれます。
どんな家にする? 両親はどんな人で何をしている人にする? その過程が楽しい。
 
ニコラは絵の中から飛び出してきて、ゴシニとサンペに話しかける。
ふたりもニコラに自分たちのことをいろいろと話します。
 
1926年生まれのゴシニと1932年生まれのサンペだから、ずっと幸せだったわけじゃない。
まだ子どもだった彼らに襲いかかる戦争の陰や、親からの虐待など、
つらい思い出も交えながら、自分たちの人生と向き合って行きます。
 
でもニコラが体験するのは、そんな彼らの楽しかった思い出ばかり。
臨海学校のシーンは、話をきかない子どもたちのわんぱくぶりに笑ってしまう。
教官陣を気の毒に思うほどでした(笑)。
 
半世紀以上にわたって読み継がれる絵本である理由がわかる作品です。

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『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』

2023年06月23日 | 映画(さ行)
『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』(原題:Spider-Man: Across the Spider-Verse)
監督:ホアキン・ドス・サントス,ケンプ・パワーズ,ジャスティン・K・トンプソン
声の出演:シャメイク・ムーア,ヘイリー・スタインフェルド,ブライアン・タイリー・ヘンリー,
     ルナ・ローレン・ベレス,ジェイク・ジョンソン,ジェイソン・シュワルツマン,
     イッサ・レイ,カラン・ソーニ,ダニエル・カルーヤ,オスカー・アイザック他
 
109シネマズ箕面のIMAXシアターにて字幕版を鑑賞しました。
 
関連作品が多岐に渡りすぎている“スパイダーマン”
“アベンジャーズ”のメンバーでもあるし、実写版もあればアニメ版もあり、
しかも実写版の主演俳優はこれまで3人にて、初代はトビー・マグワイア
卒業するとスーパーヒーロー役のイメージを払拭したいのか、
最近の作品だと、トビー・マグワイアが裏社会のボスを演じていた『バビロン』で目が点になりました。
顔色が悪すぎて、ヤク中そのものでしたから。(^^;
 
本作はアニメ版の『スパイダーマン:スパイダーバース』(2018)の続編。
 
ピーター・パーカー亡き後、スパイダーマンを継承した男子高校生マイルスは、
各ユニバースから選抜されたスーパーマンが集うマルチバースの中心へとたどり着く。
そこでマイルスが知ったのは、愛する人と世界を同時に救うことはできないということ。
 
いいや、そんなことはない、両方守ってみせると断言するマイルスだったが、
もしも本当にそうしたならば、マルチバース全体が崩壊する危険がある。
マルチバースを守るためには愛する人を犠牲にするのも致し方ないと考える、
マイルス以外のスパイダーマンたちは、マイルスを止めようと攻撃をしかけてきて……。
 
絵も美しいし、テンポも良いし、最初のうちは楽しく観ていたのですけれど、
過去のスパイダーマンを復習してから観に行っているわけではありませんから、
こんなふうにとにかく登場人物が多いうえに誰でも彼でもスパイダーマンやスパイダーウーマンだと、
途中から話について行けなくなって、どうでもよくなるというのが正直なところ。
 
序盤ときおり説明は挟み込まれるものの、新規のファンを獲得しようとしているとは思えず、
一度ずつしか観ていない私のような者を意識しているとも思えない。
したがって、次第にワケがわからなくなり、睡魔に襲われてしまうのでした(笑)。
 
そもそもマルチバース自体がようわからんじゃないですか。
近頃なんでもかんでもマルチバースで、それって本当に行き来できる時代は来そうですか。
違うバースに自分がいるなら、話をしてみたいですねぇ。
 
“to be continues”ですって。140分の長尺で完結させずにまだあるんかいっ。
愛する人と世界を同時には救えないと聞くと、これを思い出します。
両方救うのは無理ですか。でもそのうちスパイダーマンはやってのける?
観に行くでしょうけれど、また寝るかも。(--;

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『忌怪島/きかいじま』

2023年06月22日 | 映画(か行)
『忌怪島/きかいじま』
監督:清水崇
出演:西畑大吾,生駒里奈,平岡祐太,水石亜飛夢,川添野愛,大場泰正,祷キララ,
   吉田妙子,大谷凜香,笹野高史,當真あみ,なだぎ武,伊藤歩,山本美月他
 
いくらホラーに耐性がついてきたからって、日本のホラーは観る気がしない。
だけど、仕事帰りにシュッと行ける劇場で観るには他に選択肢がないじゃあないか。
眠れなくなったらどうしようとビビりながら、109シネマズ大阪エキスポシティへ。
 
ホラーがお得意の清水崇監督だから、私はほとんど縁がない。
これだってスルーするはずだったんですけどねぇ。まさか観ることになるとは。
 
古い因習が残る孤島に建つVR研究施設“シンセカイ”。
若き天才脳科学者・片岡友彦(西畑大吾)はシンセカイのチーフ・出井文子(伊藤歩)に招かれ、
チームに参加するため、島へと渡る。
 
プログラマーの深澤未央(生駒里奈)、山本春樹(平岡祐太)、三浦葵(川添野愛)、
エンジニアの北島弘治(水石亜飛夢)は友彦を温かく迎えるが、
そもそも人と関わらない世界をつくりたくてVRの研究をしている友彦は冷ややか。
 
しかし、チームがつくっていた島全体の仮想空間に友彦が開発した技術を加えると、
なんと潮風までも感じることができる仮想世界に変わる。
友彦の態度は別として、その才能に舌を巻くメンバーたち。
 
友彦を招聘した文子の姿がないことを疑問に思って尋ねると、なんと文子は急逝したという。
急死直前に文子が見ていたはずの映像を友彦たちが確かめてみると、
同時期にやはり突然亡くなった園田哲夫(大場泰正)という男性が文子の研究に協力していたことがわかる。
 
哲夫の娘・環(山本美月)から父親の身に何が起きたのか調べてほしいと言われ、
友彦たちが研究に取りかかると、システムエラーが発生。
島のシャーマン・南トキ(吉田妙子)によれば、これは島に伝わる“イマジョ”の祟りで……。
 
最初から怖そうだったので、眼鏡をかけずに観ました
さらには、それっぽいモノが出てきそうなときとか、「キャー」という絶叫が聞こえたときとか、
「んぎょ」「ぶぼー」とかいう嫌な音が聞こえたときにはその前から目をつぶっていたため、
観たくないシーンはすべて直視していません(笑)。
 
島を呪うイマジョを演じるのは祷キララ
村八分に遭っている老人・シゲさん役に笹野高史。こんな暗い笹野さんを見ることありましたっけ。
イマジョに取り憑かれていたとされる幼きシゲの母親役、和田光沙のイメージが鮮烈。
島民がシゲを忌み嫌うなか、ただひとり彼に懐いている少女リン役の當真あみが可愛い。
 
ホラー苦手な私にはホラーとしての出来は全然わかりませんが、じゅうぶん怖かった。
途中で怖すぎて笑っている私がいたほど。こんなん直視したら風呂に入れん。
ネットで「ホラーを観るのは初めてだけど大丈夫でした」みたいな口コミを見かけましたが、
これってサクラじゃないの!? ホントにホラー苦手でも大丈夫でしたか!?(^^;
 
あっちの門とこっちの門を閉じたら終了のはずが、どうして最後にまたそんな不気味なことが。
エンドロールの途中で帰ればよかったよ。「あはれあはれ~」って歌、やめて~。ワロた。(T_T)

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『探偵マーロウ』

2023年06月21日 | 映画(た行)
『探偵マーロウ』(原題:Marlowe)
監督:ニール・ジョーダン
出演:リーアム・ニーソン,ダイアン・クルーガー,ジェシカ・ラング,アドウェール・アキノエ=アグバエ,
   コルム・ミーニイ,フランソワ・アルノー,ダニー・ヒューストン,アラン・カミング他
 
月曜日に西宮まで行くなんて、と思うものの、実は週初めのほうが元気です。
月、火と仕事帰りにはりきって映画を観に行ったら、週半ばには疲れ果てて直帰するという感じで。
 
一昨日、なんだかんだで職場を出るのが19時半近くなり、まっすぐ帰ればいいものを、
月曜日だ、まだ元気だ!とTOHOシネマズ西宮へ。
 
アイルランド/スペイン/フランス作品。
リーアム・ニーソンの出演100本目となる記念作でメガホンを取るのは、ニール・ジョーダン監督。
ロバート・デ・ニーロショーン・ペンが共演した『俺たちは天使じゃない』(1989)や
やはりニーソンを主演に起用した『マイケル・コリンズ』(1996)の監督です。御年73歳。
 
本作でニーソンが演じるのは、レイモンド・チャンドラーが生み出した私立探偵フィリップ・マーロウ。
原作は、チャンドラーの『ロング・グッドバイ』の続編として公認されている、
ジョン・バンヴィルがベンジャミン・ブラック名義で発表した『黒い瞳のブロンド』とのこと。
公認続編なんてあったんだと今さら知りました。
 
私立探偵フィリップ・マーロウの事務所に現れた美女クレア・キャヴェンディッシュ。
彼女の依頼は、突然姿を消した愛人ニコ・ピーターソンを探してほしいというもの。
 
かつて検事局に勤めていたマーロウがツテを頼って調べてみると、
映画業界に身を置いていたニコは、セレブが集うクラブの前で車に轢き殺されたらしい。
未逮捕の犯人はきっとクラブの客だから、金で揉み消せるほどの人物に違いない。
 
ニコがすでに死んでいることをクレアが知らないはずもなく、マーロウが尋ねると、
遺体の顔は見事に潰されていたから、あれはきっとニコの身代わりで、本人はまだ生きているはずだと。
しかもクレアはつい最近ニコを街で見かけたと言い……。
 
調べれば調べるほど、腐った真相が浮かび上がってきて、ドロドロになります。
少し退屈なぐらいの進行なのですが、キャストはみんな魅力的。
 
クレア役にはいくつになろうが美しいダイアン・クルーガー。本作の彼女はちょっと鼻につく嫌らしさ。
クレアの母で有名女優のドロシー・クインキャノン役にはジェシカ・ラング
汚職も絡むのかと思いきや、意外にも正義感あふれるベテラン刑事にコルム・ミーニイ
クラブのトップでいちばんのワルにダニー・ヒューストン。死ね!と思ったら死んだ(笑)。
彼と敵対するもうひとりのワルにアラン・カミング。久しぶりに見た気がして嬉しい。
 
最近のリーアム・ニーソンの出演作は、アクションにキレがなくなったことを言い訳するかのように、
孫と一緒に居たい爺の役だったり、認知症の兆候が出始めている殺し屋の役だったり、設定にずいぶん無理がありました。
でもこうして、アクションはごく控えめの本作を観ると、キレがなくても暴れ回るリーソンのほうが楽しい。
となると、結局ワンパターンな役を彼に望んでいるのは私のほうなのでしょうかね。(^^;

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