wowow 2021/4/16
「ラ・ボエーム」はプッチーニの一番の人気作で、METで最多上演の作品でもあります。パリの放浪芸術家(ボヘミアン)を描く物語で、病に冒されたお針子のミミと売れない詩人のロドルフォが恋に落ちます。舞台は19世紀半ばのカルチェ・ラタン。若者が芸術と愛に酔いしれていた場所です。第1幕は芸術家達の住む屋根裏部屋で、第2幕はクリスマス・イブのパリの夜、街は二層構造になっていて豪華絢爛。観客をバリの虜にさせるべくF・ゼフィレッリの演出はMETの舞台機構をフル回転させます。1981年の初演から人気を博す理由も一目瞭然です。脇を固めるのはムゼッタ役でコケットなSフィリップスやマルチェッロ役のM・カヴアレッティに100人以上のキャスト 彼らが今も色あせない青春の悲恋物語へと誘います。
作曲:ジャコモ・ブッチーに
演奏:メトロポリタン歌劇場管弦楽団 指揮 ステファーノ・ランザーニ
演出:フランコ・ゼフィレッリ
出演:
クリスティーヌ・オボライス ・・・ ミミ お針子
ヴィットーリオ・グリゴーロ ・・・ ロドルフォ
スザンナ・フィリップス ・・・ ムゼッタ マルチェロの恋人
マッシモ・カヴァレッティ ・・・ マルチェッロ 画家
パトリック・カルフィッツィ ・・・ ショナール 音楽家
オレン・グラドゥス ・・・ コルリーネ 哲学者
時間:3時間7分(休憩2回含む)
MET上演日:2008年3月29日
言語:イタリア語
【あらすじ】
第1幕
クリスマス・イブ夜、ミミはローソクの火をもらいにロドルフォのいる部屋を訪ねてくる。
ロドルフォは「冷たい手」を歌う。
ミミは「私の名はミミ」を歌う。
第2幕
クリスマス・イブでにぎわうパリの街(カルチェラタン)に出かけたミミとロドルフォ。芸術家の仲間達も合流する。
2層になった街、1層はカフェ・モミュス。前の通りには出店が並ぶ。
子供達に人気のパルビニョールの屋台など賑わいを見せる。他にも足長おじさん(竹馬使用)が登場する。
そこに、マルチェロのかっての恋人ムゼッタがパトロンと共にやって来てアリア「私が街を歩くと」を歌う。
最後は2階から降りてくるフランス軍楽隊の行進でお祭り気分が絶頂に達する。
第3幕
2ヶ月後、雪の降りしきるムゼッタが経営する居酒屋の前、「ミミは肺病を患い症状が悪化しているが、貧しさのために助けられない」とロドルフォはマルチェッロに話す。二人は愛を確認しながら 別れることになる。手前左マルチェッロ、左ロドルフォ。奥で話を聞くミミ。その後、マルチェッロとムゼッタの喧嘩が始まる。
第4幕
それから数ヶ月、男四人はまた元の屋根裏部屋に過ごしている。
ロドルフォとマルチェッロは昔の恋人が忘れられず,ふざけて気を紛らわしている。
そこに、ムゼッタに連れられてミミが運び込まれてくる。なんとか助けようとするが間に合わず、ミミは愛するロドルフォのそばで息絶える。
【感想】
プッチーニの美しいアリアと音楽によってパリの学生街に花開く恋と友情。METで半世紀近く、同じプロダクションで演じられる舞台は、クリスマス・イブの華やかさで花開き、冬の寒さに凍り付ついて愛と悲しみが広がる。
ミミ役の代役となったクリスティーヌ・オボライスは前日に蝶々夫人を歌い、当日にミミ役を引き受けたというが、上手くこなせるかという不安を払拭するかのように素晴らしい歌唱を見せた。ロドルフォ役のヴィットーリオ・グリコーロも出来るだけのサポートを心がけたと言うが、良いチームワークで公演をやり終えたと思う。
ムゼッタ役のスザンナ・フィリップスはMETでの初演はムゼッタだったと言うが魅力たっぷりな演技は第2幕の花形というのにふさわしかった。
やはり、フランコ・ゼフィレッリの演出は第2幕のパリのクリスマスイブの雰囲気がまさに絢爛豪華、第三幕の雪降るシーンは悲しみ・切なさを倍加させるに効果的な設定であった。
解説者のJ.ディドナードが第4幕で涙がで出来そうなのでティシュを持ってきているとも・・・。そういうオペラなのかも知れない。
(了)