めいすいの写真日記

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映画「山椒大夫」・・・ 巨匠溝口健二監督 4Kデジタル修復版

2021-06-01 | 映画

                                  NHK BS4K プレミアムシネマ

 有名な民話をもとにした森鴎外の同名小説を、巨匠・溝口健二監督が映画化。
 平安時代の末、母とともに旅をしていた幼い安寿と厨子王は、人攫(さら)いにあい、母と離ればなれになってしまう。2人は丹後の大地主・山椒大夫の荘園で過酷な労働に苦しめられ、ついに逃げ出す決意をするが…。名コンビのカメラマン・宮川一夫とともに繊細で美しい光と影のモノクロ映像で描き、ベネチア映画祭銀獅子賞を受賞。


【監督】溝口健二,
【原作】森鴎外,
【脚本】八尋不二,依田義賢,
【撮影】宮川一夫
【音楽】早坂文雄
【製作】1954年製作/日本 
    126分
【原題】:Sansho Dayu
【出演】
 玉木・・・田中絹代
 厨子王・・・花柳喜章
 安寿・・・香川京子
 平正・・・清水将夫
 山椒大夫・・・進藤英太郎

 筑紫へ左遷された平正氏の妻玉木、その子厨子王と安寿の幼い兄妹、女中姥竹の四人は越後の春日を経て今津に出る道の旅を続けていた。
 しかし、人攫いにあい母玉木と安寿、厨子王は違う船に乗せられて引き離される。母は佐渡へ売られ、姥竹は身を投げた。

子供二人は丹後の大尽の山椒大夫に奴隷として売られて来る。

兄は柴刈、妹は汐汲みを始めとして苛酷な労働をやらされ、苦しみながら日々を送っていく。

芝刈りをやらせられる厨子王

 佐渡から売られて来た小萩の口ずさんだ歌に「安寿恋しや・・・厨子王恋しや・・・」と安寿と厨子王の名が呼ばれているのを耳にして、兄妹は遊女となった母の消息を知った。安寿は厨子王に逃亡を勧め、自分は追っ手を食止めるため後に残った。

安寿は厨子王の逃亡を首尾良く見送った後、池に入水し自ら命を絶つ。

追っ手は丹後国「国分寺」までやって来るが、住持曇猛律師が厨子王を匿(かくま)う。

 その後、守り本尊と曇猛律師が書いた推薦状を持ち、都に上った厨子王は元服し正道と名乗る。後に関白師実により、丹後の国主に任じられた。

国主最初の政(まつりごと)として、丹後一国内で人の売買を禁じ、奴婢を解放して給料を払うことにする。

 正道は仮寧(休暇)をとり、佐渡に渡り母を探しまわり、盲󠄃(めしい)となった母を見つける。母は守り本尊を手にし、目に潤いが出て目を開け「厨子王」という叫び声が出る。

【感想】文庫本に森鴎外「山椒大夫、高瀬舟」があり、高瀬舟の方は読んでいたのだが、子供心に「安寿と厨子王」の話を知っており、とても悲しい話であると分かっていたので読む気にならなかった。
 今回、溝口健二監督の映画「山椒大夫」が放映されるというので、映画を見ることにし、その後、小説も目を通した。
 映画は人間の営みを見ることが出来るので自然とこの物語を理解出来た。
 平安時代末期とは言え母玉木とその子、厨子王と安寿の幼い兄妹、女中姥竹の四人が人攫いにあったことは悲惨以外の何ものでもない。しかし、厨子王が正道となり、丹後の国主になり、まがりなりにも母を探し出し、安寿を手厚く弔われたことは心が安まった。
 映画では山椒大夫が国外追放となり、屋敷が燃え落ちるとなっているのは合点がいく。
 しかし、小説では山椒大夫は人の売り買い禁止を受け入れ、奴婢を解放して給料を払うことにした結果、予想に反し農作も工匠(たくみ)の業(わざ)も前にも増して盛んになって、一族はいよいよ富み栄えたとある。こちらは何かしっくりしない結末だ。

 映画そのものは、宮川一夫の映像が綺麗だったこと、香川京子の安寿がとても魅力的で良かったことなど。出演者も好演が目立った。さすが溝口健二監督の作品といえる。

(了)