早朝に天理市東井戸堂の集荷場へ集まってきた数名のハツオサンの世話方。
今日は毎年4月15日に行われるハツオサンの日だ。
ハツオサンはハツオージサンとも呼ばれている八王子塚に高張提灯を設えることから始まる。
大字八軒屋の周辺に点在する八ヶ所の塚は川堤や田んぼのなかにありコンクリートで囲われている。
世話方は二つの班に別れて提灯の設営作業。
中央に二個のモチを供えると、次の場所へと提灯設えに忙しく駆け回る。
30年ほど前は子どもたちが当日までにお米貰いやお金を集め、それをハツオサンのヤドでよばれる費用に賄っていた。
杵と石臼でモチを搗くのも提灯設えをするのも子どもたちで、対象となるハツオサンの子どもは12歳の中学生から25歳の青年男子だ。
現在はその親たちが提灯張りなどの作業を担っている。
年長の家と決まっているヤドは長男が原則だが実際は次男でも構わないそうだ。
作業を終えると夕刻までは何もない。
再び集荷場に集まって、朝と同様に分担して提灯の蝋燭に火を点していく。
お参りに来る人もなく火が消えたら提灯を撤収し、用意したモチは一個ずつ47軒に配っていく。
モチは店で買うようになったが、今でも続けている村の行事は五穀豊穣や子どもたちの成長を祝ったのであろう。
奈良の東山間部では数少なくなった子どもの涅槃が行われている。
少子化時代の昨今、数年前まで行われていた地区も中断している現状にある。
その子ども涅槃はハツオサンと同じように子どもが主体の行事で年長の家がヤドとなって接待をする。
お米集め(お金の地区もある)して、それを売ってお金に換えて行事の費用にした。
子どもらのこずかいにもした。
その日の一日は親が面倒をみない子どもの遊びの日で村の行事としている。
涅槃の掛け図はみられないが、提灯張りが特徴になっているハツオサン。
いずれも子どもが主役の村の行事にかわりない。
お寺の行事のホンコ(報恩講)も同じ形態だと思料される。
類似性がみられる子どもが主体のノガミ行事も、子供から大人へ成長して村の仕事ができるようになったと村入りを認める村の行事なのでしょう。
(H21. 4.15 Kiss Digtal N撮影)