マネジャーの休日余暇(ブログ版)

奈良の伝統行事や民俗、風習を採訪し紹介してます。
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安堵のいま・むかし~辻本忠夫氏スケッチ画より~in安堵町歴史民俗資料館

2019年08月16日 08時24分30秒 | 民俗を観る
民俗スケッチ画展示企画展を拝見したく立ち寄った安堵町歴史民俗資料館

奈良県生駒郡安堵町にある施設である。

これまで目と鼻の先まで近寄っているのに入館はしたことがない。

これまで何度か東安堵の六斎念仏講の取材をしたことがある。

随分前になるが、お盆のときに講中が檀家詣りするのについていって撮らしてもらっていた。

早朝の6時だったと思う。

段階参りの際に、安堵町歴史民俗資料館の前を通っていったことがある。

また、お盆の先祖さんを迎える習俗も取材させてもらった。

その日は田んぼに映るカンピョウ干しの状況も見ていた。



所要ついでに入館した安堵町歴史民俗資料館では3月28日から5月31日までの期間に企画展を開催していた。

企画展は「安堵のいま・むかし~辻本忠夫氏スケッチ画より~」。



安堵町出身の辻本忠夫氏が生前に描きつくした安堵町のさまざま風景・暮らし・生産・軽便鉄道などなど。

作品点数は相当な枚数のようだが、展示会場の広さ関係もあって70点の展示。

息子さんだと思われる人がテレビ報道に応えていた父親の偉業に興味を覚えたこともあってやってきた。

安堵町やその周辺などを描いたスケッチ画は大正時代から昭和30年代のかわりゆく季節や風景が多いそうだ。

展示作品の撮影は禁じているが、配布される列品リスト(写生・個人蔵)については特に注意書きもない。

ざっと展示章ごとにタイトルだけでも記録させていただく。

1章は同村の盟友でもある富本憲吉氏と関係事項だ。

学びの大阪市立実業高校のその作品や富本憲吉氏と関係する写生集など。

2章は昔の娯楽。

蓄音機、テンチャン遊び、ばいがち合ひ、べったの勝負である。

大阪生まれの大阪育ちの私ら子どものときに遊んでいたものと同じだが、我が故郷では“べった”でなく“べったん”と呼んでいた。

3章は安堵町の一大産地であった梨果実の生産である。

梨砧木の買出し、梨の薬剤散布、梨の花さかり、梨出荷帳簿(個人蔵)、梨の袋張り、梨そろへ、梨の市場、梨倒し、梨包紙図案と包紙。白い花の梨が広がる梨畑。

その絵を見て思い出すのが、安堵町より東にある大和郡山市の額田部町。

今では面影も見られないがここは桃色一面に拡がる桃の一大生産地。

両者が揃っていた時代は合致する。

もし、今でもあるならドローンを飛ばして眺めてみたいものだと思った。

4章は懐かしの風景。

大和川のようす、岡崎風景・埜神の森、名阪国道と岡崎、いせきの大工事、しんちゆの橋とドンドン、笠目の橋、馬場塚、土管ふせ、法隆寺自動車学校開校、西安堵風景、はしもと、名阪国道(西安堵側・架構橋工事)である。

5章の天理軽便鉄道。軽便鉄道の着く工事、天理軽便鉄道安堵駅、大和安堵駅南側周辺風景画、法隆寺駅前の運送店。

6章は行事と祭礼。

笠目の橋と明治大帝、奉祝、正月の大トンド、歳越の晩、野辺送り1、野辺送り2、盆踊り、競馬(くらべうま)<飽波神社の祭り>、父の還暦祝いのどれもこれも民俗そのもの。

じっくり眺めていたい今では見られない貴重な画である。

7章は戦争と暮らし。

応召、金属回収、食糧増産(富雄川堤防開墾)。

8章にお米ができるまで。村の川堀り、さなぶり、草取り、刈りぬけ、稲こき、籾干し、籾の乾燥、米つき。

これもまた生活のなかで見られる民俗。

“カリヌケ“の在り方は大和郡山市の田中町にお住まいの方の作法を取材したことがある。

また、桃畑の産地だった大和郡山市の額田部町在住の高齢者からも同名の在り方をしていたと聞いている。

さなぶりは、現在の平坦部ではもう話題にも上ることのない、節目の豊作を願う農家民俗。

逆に苗代作りにおける水口まつりを描いた作品はなかった、のかである。

刈りぬけにさなぶりが描かれているなら水口まつりはあっても良かろうと思うのだが・・・。

今では見ることのない当時の様相がわかるスケッチ画



キャプションがあるから画も生きている。

貴重な民俗資料であるが、無断転載はできない。

もう一度拝見したくともお目にかかれない。

できるのであれば、後世のためにも、この素晴らしいスケッチ画集を発刊していただければありがたい。

企画展だけではなく、さまざまな民具も展示されている。

ざっと挙げれば、農耕における収穫・脱穀・調整の道具に運搬、消防、竹と生活、漁撈と竹、生産に養蚕と竹の他、実にさまざまな食事用具がある。

軽便鉄道の縮尺モデルもあるし、安堵町は燈心生産が盛んだった地区だけに、今でも伝統を継承すべく講習会も開かれているようやに聞く。

盛りだくさんの民俗資料館は短時間の学習では追っつかない。



屋外にでれば東屋のある庭園で一服することもできる。

館の鑑賞を終えて外に出れば燈心作りに必要な材を育てている。

田主はその場にいる案山子ではないだろう。

(H30. 4.13 SB932SH撮影)