写真家のMさんから電話があった。
用件は結崎のマツリである。
今年は当家を務めることになったMさん。
それをきっかけに村のマツリについて整備したいという。
例えばオカリヤ(※お仮屋)である。
民俗的には一般的な表現であるが、結崎ではこれを仮屋と表記しているが、それでいいのだろうか、という相談である。
地域、地区によって名称はそれぞれ。
宇陀市栗野ではオスヤ。
充てる漢字は御簾屋であろう。
民俗史表記では「オハケ」をよくみる。
生駒山口神社ではオハキである。
春日若宮さんのおん祭・お旅所に一時的に設営する神さんが佇まう仮屋を一時的に設営する仮御殿を「若宮神の行宮(あんぐう)」と称している。
結崎のトーヤを充てる漢字は当家であるが、かつては頭屋であった。
平成23年10月9日に取材した糸井神社の御遷座祭。
Mさんから頂戴した資料に基づいて執筆したが、その資料にあったトーヤ表記は、頭屋であった。
また、頭屋家当主をトーニンと呼び、漢字は頭人であった。
県内事例のトーヤ表記は、当家、頭家、頭屋、当屋以外にもさまざまな事例がある。
村の人たちが昔から言い伝えてきたとおりに表記していたが、何らかの事象によって変化をもたらした。
連綿と記してきたトーヤ帳の表記に、漢字名が変化した事例は割合にみる。
結崎に近い川西町の吐田のトーヤ帳も同じような歴史であった。
取材したマツリを新聞記事化ずる際に、当時お世話になったH総代と相談し、トーヤ帳表記を重視しながら記事用の漢字を決めざるを得なかった。
二人で決めたトーヤ表記である。
結崎の事例も、またそれに近いように思える。
と、いうのもMさんから渡された資料は、村執筆・発行でなく、あるとき調査に来た学者が残していた書物であった。
学者が聞き取った当時の結崎人がどうような伝え方をしたのか、わからないが、学者が一般的解釈をした可能性も考えられる。
このような事例は、いくらでもある。
整備するにあたって、注釈を付記する手も要るだろう。
民俗表記の話題はそこまで。
その結崎でも、実は・・ウンカ被害が広まっている、という。
まさかのウンカ。
川西町に田原本町、天理市など県内各地に拡がっているというウンカ被害。
穴のような状態で育っていた稲を荒らして枯らす。
それを坪枯れと呼ぶ。
初めて耳にする坪枯れである。
大和高原など東山間辺りは9月に稲刈りをしていたから被害にあわなかったそうだ。
平坦盆地部より、一か月も早い東山間の稲作地。
大昔は平たん部と同じ時期にしていたが、いつしか早生品種に移り、早米に切り替わっていた関係で、稲刈りも、平たん部より1カ月早い。
それが明暗を分けた収穫量である。
Mさんが伝えてくれた、坪枯れ。
そういえば、例年なら10月に入ってから2週目辺りが一番多い稲刈り。
それが9月末に早くも動いていた。
大和郡山市の富雄川沿いのご近所農家さんも、知り合いの農家さんも、電話があったこの日にも稲刈りをしていた。
大和中央道に沿って走らせた車窓から見るご近所田畑を見渡したら、ある、ある・・。
円形に枯れた坪枯れもあれば四辺形も。
また筋状に枯れている田畑もある。
ウンカの被害状態を初めて見た。
これまで、文献資料とかでしか意識していなかったウンカ被害が大規模な様相になっていた。
9月24日付けのJA情報によれば、大規模被害をもたらすウンカの種類はトビイロウンカ。
害虫被害が拡がる前に、とにかく収穫しないと、JAは「奈良県病害虫防除所は9月17日、9~10月にかけ、県内全域のおもに中晩生品種の栽培地域でトビイロウンカの発生が多くなるとして注意報を発した」とアナウンスしていた。
第一報の注意報は7月31日付け。
新型コロナウイルス対策情報ばかりを伝える各社報道にウンカ被害はどことも知らぬ顔だった。
9月に入ってから、ウンカ被害坪枯れが次々と確認されていたとは・・。
初めて知ったトビイロウンカ映像。
形態、被害状態、生態、防除対策などを記す愛知県の病害虫情報を参考にした。
FB知人のFさん。
両親が稲作する天理市南六条にも被害が出始めたと伝えていた。
収穫間際の被害に手も出ない、という。
Fさんが活動する範囲にある地域。
葛城市、明日香村、橿原市も同じ状態にあるという。
他にも三宅町、大和高田市、吉野町などの情報もある。
50年間も稲作をしてきたが、今回のようなウンカ被害は初めてだという人が多い。
農家さんの習俗取材とか、年の初めに神仏に願う初祈祷行事でさえも、村の人たちからウンカ被害が酷かったというような話題はまったくなかった。
豊作を願う水口まつりや、植え初めでも、ウンカそのものの話は出なかった。
80歳以上の人たちでも、ウンカのことはこれぽっちも聞かなかった。
つまりは、あったとしても小規模。
限られた地域だけだったのかもしれない。
西日本のある新聞によれば、今年のウンカ被害に見舞われた西日本・中国地方、九州地方。
梅雨時に中国大陸南部の国、ベトナム紅河デルタ域から風にのって飛来するトビイロウンカの最終着地点が日本。
日本国内で、稲に害をもたらすウンカは、主にトビイロウンカ、セジロウンカ、ヒメトビウンカの3種類。
秋の収穫前に坪枯れ被害をもたらすトビイロウンカ。
山口県内のなかでも下関は地元産の米がない、という。
江戸時代末期の享保(1716~1735)、天保年間(1830~1843)の大飢饉の原因は、ウンカだった。
今年は、例年より飛来時期が早かった上に、飛来量も多かったことから、影響した地方は多方面に亘る。
各県の病害虫防除所が発令した警報は、山口、広島、岡山、愛媛、大分、福岡、佐賀、熊本、京都、愛知の10府県。
注意報は、大阪、兵庫、奈良、和歌山の近畿圏をはじめ、鳥取、島根、香川、徳島、高知、宮崎、鹿児島、長崎に東日本の静岡県を含む13府県。
警報は、「直ちに防除するように・・」だ。急を要する対応に迫られる。
広島県は22年ぶり、京都府は33年ぶりのウンカ警報である。
山口県が警報を発したのは8月3日。
飛来確認は6月26日だった山口県。
昨年が9月13日だったというから1カ月以上も早かった。
しかも、その量は例年の120倍というから、恐ろしいほどの大群飛来である。
22年ぶりの被害になった愛知県は、10月上旬の現在、ほぼ全域で坪枯れを確認したという。
9月11日付けの日本農業新聞によれば、兵庫、京都、奈良、和歌山の近畿に愛知、岐阜、静岡の中部が平年より、多くなると予想を図示していた。
9月初めに発していた大量のウンカ情報である。
近年では、平成25年に大量のトビイロウンカが発生し、兵庫県以西が被害を被った。
これほど爆発的大量発生になった原因に防除については、同新聞に載っているので参照願いたい。
ウンカ研究データなどついては、農研機構・九州沖縄農業研究センターが詳しい。
興味のある方は、『九州沖縄農業研究センターニュース No.51<ウンカ類研究特集号>』が参考になるだろう。
10月3日、毎日新聞が伝えていた奈良県状況のトビイロウンカ被害。
記事中に「JAならけん(県農協)によると、少なくとも平成以降で最悪の被害規模」とあった。
10月6日は、産経新聞・奈良版に。
奈良新聞は10月9日。
その他、毎日、産経以外の一般紙はどの社も伝えていない。
危機感がまったくないのかな、と思えるほどの静観さに呆れかえる。
奈良テレビは10月6日に報道したそうだが、10月12日の夕方のニュース報道をみて唖然とした。
報道は奈良NHKのならナビ。
「なら空中さんぽ」と称するコーナー紹介の映像は明日香村の秋の棚田。
ヘリコプターに乗って伝えるSカメラマン。
刈り取った稲を天日干し。
地元の人たちが「はぜ干し」と呼んでいる稲かけの仕組みに亡くなった志村けんさんを忍んで立てたジャンボかかし。
そのヘリコプターからとらえた棚田。
稲刈りがまだのところ、である。
枯れた稲田が、いっぱいある異常さなのに、局に居て報道する二人のYとGキャスターとも気がつかない坪枯れ状態。
今、農家の人たちがどれほど苦しんでいることも知らずにいるのが悲しい。
なお、NHKの報道は10月14日。
やっとこさ重い腰をあげた。
また、読売新聞もまた14日報道だった。
(R2.10. 1 ~ 10.14 記)
(R2.10. 3 EOS7D撮影)
用件は結崎のマツリである。
今年は当家を務めることになったMさん。
それをきっかけに村のマツリについて整備したいという。
例えばオカリヤ(※お仮屋)である。
民俗的には一般的な表現であるが、結崎ではこれを仮屋と表記しているが、それでいいのだろうか、という相談である。
地域、地区によって名称はそれぞれ。
宇陀市栗野ではオスヤ。
充てる漢字は御簾屋であろう。
民俗史表記では「オハケ」をよくみる。
生駒山口神社ではオハキである。
春日若宮さんのおん祭・お旅所に一時的に設営する神さんが佇まう仮屋を一時的に設営する仮御殿を「若宮神の行宮(あんぐう)」と称している。
結崎のトーヤを充てる漢字は当家であるが、かつては頭屋であった。
平成23年10月9日に取材した糸井神社の御遷座祭。
Mさんから頂戴した資料に基づいて執筆したが、その資料にあったトーヤ表記は、頭屋であった。
また、頭屋家当主をトーニンと呼び、漢字は頭人であった。
県内事例のトーヤ表記は、当家、頭家、頭屋、当屋以外にもさまざまな事例がある。
村の人たちが昔から言い伝えてきたとおりに表記していたが、何らかの事象によって変化をもたらした。
連綿と記してきたトーヤ帳の表記に、漢字名が変化した事例は割合にみる。
結崎に近い川西町の吐田のトーヤ帳も同じような歴史であった。
取材したマツリを新聞記事化ずる際に、当時お世話になったH総代と相談し、トーヤ帳表記を重視しながら記事用の漢字を決めざるを得なかった。
二人で決めたトーヤ表記である。
結崎の事例も、またそれに近いように思える。
と、いうのもMさんから渡された資料は、村執筆・発行でなく、あるとき調査に来た学者が残していた書物であった。
学者が聞き取った当時の結崎人がどうような伝え方をしたのか、わからないが、学者が一般的解釈をした可能性も考えられる。
このような事例は、いくらでもある。
整備するにあたって、注釈を付記する手も要るだろう。
民俗表記の話題はそこまで。
その結崎でも、実は・・ウンカ被害が広まっている、という。
まさかのウンカ。
川西町に田原本町、天理市など県内各地に拡がっているというウンカ被害。
穴のような状態で育っていた稲を荒らして枯らす。
それを坪枯れと呼ぶ。
初めて耳にする坪枯れである。
大和高原など東山間辺りは9月に稲刈りをしていたから被害にあわなかったそうだ。
平坦盆地部より、一か月も早い東山間の稲作地。
大昔は平たん部と同じ時期にしていたが、いつしか早生品種に移り、早米に切り替わっていた関係で、稲刈りも、平たん部より1カ月早い。
それが明暗を分けた収穫量である。
Mさんが伝えてくれた、坪枯れ。
そういえば、例年なら10月に入ってから2週目辺りが一番多い稲刈り。
それが9月末に早くも動いていた。
大和郡山市の富雄川沿いのご近所農家さんも、知り合いの農家さんも、電話があったこの日にも稲刈りをしていた。
大和中央道に沿って走らせた車窓から見るご近所田畑を見渡したら、ある、ある・・。
円形に枯れた坪枯れもあれば四辺形も。
また筋状に枯れている田畑もある。
ウンカの被害状態を初めて見た。
これまで、文献資料とかでしか意識していなかったウンカ被害が大規模な様相になっていた。
9月24日付けのJA情報によれば、大規模被害をもたらすウンカの種類はトビイロウンカ。
害虫被害が拡がる前に、とにかく収穫しないと、JAは「奈良県病害虫防除所は9月17日、9~10月にかけ、県内全域のおもに中晩生品種の栽培地域でトビイロウンカの発生が多くなるとして注意報を発した」とアナウンスしていた。
第一報の注意報は7月31日付け。
新型コロナウイルス対策情報ばかりを伝える各社報道にウンカ被害はどことも知らぬ顔だった。
9月に入ってから、ウンカ被害坪枯れが次々と確認されていたとは・・。
初めて知ったトビイロウンカ映像。
形態、被害状態、生態、防除対策などを記す愛知県の病害虫情報を参考にした。
FB知人のFさん。
両親が稲作する天理市南六条にも被害が出始めたと伝えていた。
収穫間際の被害に手も出ない、という。
Fさんが活動する範囲にある地域。
葛城市、明日香村、橿原市も同じ状態にあるという。
他にも三宅町、大和高田市、吉野町などの情報もある。
50年間も稲作をしてきたが、今回のようなウンカ被害は初めてだという人が多い。
農家さんの習俗取材とか、年の初めに神仏に願う初祈祷行事でさえも、村の人たちからウンカ被害が酷かったというような話題はまったくなかった。
豊作を願う水口まつりや、植え初めでも、ウンカそのものの話は出なかった。
80歳以上の人たちでも、ウンカのことはこれぽっちも聞かなかった。
つまりは、あったとしても小規模。
限られた地域だけだったのかもしれない。
西日本のある新聞によれば、今年のウンカ被害に見舞われた西日本・中国地方、九州地方。
梅雨時に中国大陸南部の国、ベトナム紅河デルタ域から風にのって飛来するトビイロウンカの最終着地点が日本。
日本国内で、稲に害をもたらすウンカは、主にトビイロウンカ、セジロウンカ、ヒメトビウンカの3種類。
秋の収穫前に坪枯れ被害をもたらすトビイロウンカ。
山口県内のなかでも下関は地元産の米がない、という。
江戸時代末期の享保(1716~1735)、天保年間(1830~1843)の大飢饉の原因は、ウンカだった。
今年は、例年より飛来時期が早かった上に、飛来量も多かったことから、影響した地方は多方面に亘る。
各県の病害虫防除所が発令した警報は、山口、広島、岡山、愛媛、大分、福岡、佐賀、熊本、京都、愛知の10府県。
注意報は、大阪、兵庫、奈良、和歌山の近畿圏をはじめ、鳥取、島根、香川、徳島、高知、宮崎、鹿児島、長崎に東日本の静岡県を含む13府県。
警報は、「直ちに防除するように・・」だ。急を要する対応に迫られる。
広島県は22年ぶり、京都府は33年ぶりのウンカ警報である。
山口県が警報を発したのは8月3日。
飛来確認は6月26日だった山口県。
昨年が9月13日だったというから1カ月以上も早かった。
しかも、その量は例年の120倍というから、恐ろしいほどの大群飛来である。
22年ぶりの被害になった愛知県は、10月上旬の現在、ほぼ全域で坪枯れを確認したという。
9月11日付けの日本農業新聞によれば、兵庫、京都、奈良、和歌山の近畿に愛知、岐阜、静岡の中部が平年より、多くなると予想を図示していた。
9月初めに発していた大量のウンカ情報である。
近年では、平成25年に大量のトビイロウンカが発生し、兵庫県以西が被害を被った。
これほど爆発的大量発生になった原因に防除については、同新聞に載っているので参照願いたい。
ウンカ研究データなどついては、農研機構・九州沖縄農業研究センターが詳しい。
興味のある方は、『九州沖縄農業研究センターニュース No.51<ウンカ類研究特集号>』が参考になるだろう。
10月3日、毎日新聞が伝えていた奈良県状況のトビイロウンカ被害。
記事中に「JAならけん(県農協)によると、少なくとも平成以降で最悪の被害規模」とあった。
10月6日は、産経新聞・奈良版に。
奈良新聞は10月9日。
その他、毎日、産経以外の一般紙はどの社も伝えていない。
危機感がまったくないのかな、と思えるほどの静観さに呆れかえる。
奈良テレビは10月6日に報道したそうだが、10月12日の夕方のニュース報道をみて唖然とした。
報道は奈良NHKのならナビ。
「なら空中さんぽ」と称するコーナー紹介の映像は明日香村の秋の棚田。
ヘリコプターに乗って伝えるSカメラマン。
刈り取った稲を天日干し。
地元の人たちが「はぜ干し」と呼んでいる稲かけの仕組みに亡くなった志村けんさんを忍んで立てたジャンボかかし。
そのヘリコプターからとらえた棚田。
稲刈りがまだのところ、である。
枯れた稲田が、いっぱいある異常さなのに、局に居て報道する二人のYとGキャスターとも気がつかない坪枯れ状態。
今、農家の人たちがどれほど苦しんでいることも知らずにいるのが悲しい。
なお、NHKの報道は10月14日。
やっとこさ重い腰をあげた。
また、読売新聞もまた14日報道だった。
(R2.10. 1 ~ 10.14 記)
(R2.10. 3 EOS7D撮影)