(講談社学芸文庫に付された室生犀星の写真よりスキャンさせていただきました)
けふはえびのように悲しい
角やらひげやら
とげやら一杯生やしてゐるが
どれが悲しがつてゐるのか判らない。
ひげにたづねて見れば
おれではないといふ。
尖つたとげに聞いて見たら
わしでもないといふ。
それでは一体誰が悲しがつてゐるのか
誰に聞いてみても
さつぱり判らない。
生きてたたみを這うてゐるえせえび一疋。 . . . 本文を読む
「御宿かわせみ」は現在第3巻「水郷から来た女」をクルーズしているところ。
「湯の宿」は少しおもしろかったけど、ほかはそれほどでもない。あまりに型にはまっているのが多いせいか、読書をしながらスリルがまったく感じられない。
これを書きながら平岩弓枝さんは事件というか、ミステリにすり寄っている。海外作品をしばらく読んでいたせいか、いかにも物足らないなあ(´Д`)
「お茶を濁しているんじゃないの」と、つい . . . 本文を読む
(「御宿かわせみ読本」に付された関係図からコピー)
御宿かわせみは大川端にある。
永代橋の対岸が深川であり、そこに長寿庵というそば屋がある。この時代設定と背景が、本シリーズの成功の秘訣だろう。
全篇を6回も読みなおしたという豪傑がいるようである。わたしの友人の奥さんも、2回読み返し、お気に入りの作品を、また読むといっていた。
「蓬田やすひろさんの挿絵がいいのよ♪」と。
どちらかといえば . . . 本文を読む
平岩弓枝さんが「小説サンデー毎日」で「御宿かわせみ」の連載を開始したのが、1973年(昭和48)である。33話までいったところで雑誌が休刊(廃刊)となったため、「オール讀物」に舞台を移し、1982年4月号から連載が再開された。
文春文庫では「幽霊殺し」からあとが、文藝春秋に変わったのちの作品集のようである。
第34巻「浮かれ黄蝶」の刊行(2006年4月)をもって正編が終了し、「新・御宿かわせみ」 . . . 本文を読む
■仕事人藤枝梅安 三「梅安最合傘」講談社文庫(新装版)
同 四「梅安針供養」 同 (新装版)
ジャック・ヒギンズを読みながら、そうだなあ、日本のハードボイルド小説あたりへ戻ってみようか・・・と思いはじめた。例によって、わたしの“気まぐれ”ですけどね~。
少々我慢して「深夜プラス1」は読み了えたんだけど、どういうわけか気分が飛んでしまうので、本棚をあちこちと探し回った。
探し . . . 本文を読む
ちょっとした気まぐれから、池波正太郎への関心が蘇ってきた(*´ω`)
「鬼平犯科帳」が11-2冊、「剣客商売」と「仕掛人・藤枝梅安」はそれぞれ数冊。今回はまずは梅安から。
その昔、台東区役所の資料館へ出かけたこともあった。文字が大きくなった新版を、気がついたら20冊ばかり買い直していたよん。
どういうわけか、日本のハードボイルドというと、まず、時代小説の池波正太郎を思い出す。
文庫本で、現在5 . . . 本文を読む
大岡昇平といえば、“ケンカ大岡”と呼ばれたほどの文壇有数の論争家である。
湯川豊さんの「大岡昇平の時代」河出書房新社(2019年刊)も、いずれ読もうとかんがえて、ストックしてある。
戦後派作家のなかで、ただお一人を択べといわれたら、わたしは躊躇なく、中原中也の伝記を書いた大岡さんに指を屈する。
そのうえ「野火」は、ドストエフスキーの「死の家の記録」とならび、二度読みしてもまだ読み足りないと思わせて . . . 本文を読む
梅雨に逆戻りしたような天気で気温が下がり、このところ肌寒いくらいですね^ωヽ*
ところで先日、古書店で中里恒子「水鏡」を探しあてて買い、まもなく読み終わりまする。
おいらはネットでものが買えない(買わない)実店舗派♪
幸田文さんに比べると、中里さんの本は本当に少ない。
まだ「時雨の記」の余震が続いている。
「水鏡」は生まれつき目の見えない男が、若くしてマッサージ師となり、やがて三弦の名手とな . . . 本文を読む
(右は文春文庫現行版。文字の大きさは変わらない。)
しつこいようだが、中里恒子「時雨の記」について、もう少し書かせていただこう。
さきに述べたように、“視点の移動”には、結局最後まで違和感がぬぐえなかった。
しかし、本書は紛れもない秀作。
しかも、恋愛小説の秀作である(´ω`*)
これが中里さんご本人の体験をどこまで踏まえたものか、そのあたりがとても気になる。
おそらく体験記、私小 . . . 本文を読む
幸田 文(こうだ あや 1904年明治37~1990年平成2)
中里恒子(なかざと つねこ 1909年明治42~1987年昭和62)
こうしてみると、中里恒子さんは、幸田文さんより5歳年下。
いままで、幸田文は数編読んでいるが、中里恒子には縁がなく、作品は手許に2~3冊しかなかった。読みたいという欲望にかられる作品が見いだせなかったのだ、ただ1作をのぞいて。その1冊こそ「時雨の記」。
そしてこ . . . 本文を読む