二草庵摘録

本のレビューと散歩写真を中心に掲載しています。二草庵とは、わが茅屋のこと。最近は詩(ポエム)もアップしています。

菜の花の隣り  2022-03(6月26日)

2022年06月27日 | 俳句・短歌・詩集
世の中は目にはよく見えない無数の椅子でできていてね。
その椅子にはほとんどだれかが
すでに座っている。
ぺちゃくちゃぺちゃくちゃしゃべったり

むっつりと黙り込んだり。
そしてその椅子を蹴倒したり蹴倒されたり
物や人の壊れる激しい音が聞こえる。
昨日も今日も戦争があったんだってね。

ぼくは数本の色鉛筆で絵を描いている。
途中で投げ出してしまうから
いつまでたっても絵は完成しない。
完成しないから可能性だけの世界ともいえる。

完成してしまったら 立ち去るだけさ
つぎに座るべき椅子をさがして。
その涯のないくり返しだが
・・・よし 今日はここに座ろう。

あんな一日やこんな一日。
空の一角を切り裂いてモズが飛ぶ。
気がつけば菜の花の隣り。
ああ なんて明るいのだ。

さっきはスタッフをつれた司馬さんとすれ違った。
今日はどちらへお出かけだろう?
ここからしばらくは動かずにいよう。
真昼の白い月が聞き耳をたてているね。

日陰にいるのが心地いい。
そんなシーズンとはなった。
微風が襟足を撫でてゆくのがウソみたい。
ここからしばらくは動かずにいよう。

ぼくは菜の花の隣りに座っているのです。



※司馬遼太郎の忌日を菜の花忌という。1996年2月22日。

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