二草庵摘録

本のレビューと散歩写真を中心に掲載しています。二草庵とは、わが茅屋のこと。最近は詩(ポエム)もアップしています。

かなしいしょうねん 2021-07(7月25日)

2021年07月31日 | 俳句・短歌・詩集
  (撮影 2016年)



ゆあーんゆよーん
ゆやゆよんと ブランコはゆれる。
十歳の坊やだった中也をのせてゆれる ゆれる。
おや 水平線がかたむいているね。
牛が七頭 八頭と群れて
おいしそうに草を食んでいる。

中也はなぜ悲しいのか
そういう宿命のもとに生まれたからか?
自分から不幸を招き寄せたんだ と
友人たちがそう証言している。
ゆあーんゆよーん
ゆやゆよん とブランコはゆれて

ニヒルなハシブトガラスが騒ぐ。
母の雑巾となった少年が胸をそらす。
銀が金をうらやむ。
体育が苦手だったなあ そういう少年にとって世界とはこんなものさ。
「朝の歌」をつくったとき
運命に先回りされちまってね。

子どもにさきだたれた中也の悲しみを
そんな経験したこともない者がわかるはずない。
中也は中也という悲哀を生きた
生きざるをえなかった
ひとりの人間の名だ。
かなしいしょうねん なかはら。

なかはらの魂は
空中でゆれる。
いつまでたっても ゆれやまない。
冬の長門峡は流れる
その上に広がる雲ひとつない青い空。
見えないブランコがなかはらをのせてゆれている。

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