
ことばを操っているのか
操られているのかわからなくなる。
利根川はいつも流れていて
流れがとまることはない。
ことばも同じように流れている。
きみのこころの底をたっぷり水びたしにして。
意味という砂をそうして運んでいく。
「われはもと無用の人
これはもと無用の書物」
朔太郎を読んでいると
ぼくまで昏く 自虐的なっちまって
うずくまりたくなる
ことばの座布団の上に。
長くすわっていると そこに欲望のくぼみができている。
青空は宇宙の巨大なとびら。
それを押しあけて出ていった人たちは
いっかな帰ってこない。
宇宙船地球号のクルーになって
まもなく七十年。
だから だからどうした?
どんな書物に書きとめてあるのだ 七十年の最初の一行。
ぼくというこの一人称は
ことばのくぼみ
・・・なのかもしれない。
ことばが流れていく。
あらゆるものに名がある
見えないものにまで。
それらがすごい勢いで流れこんでくる
ぼくというこのくぼみに。