■「若者よ、マルクスを読もう――20歳代の模索と情熱」
内田樹 石川康宏(角川ソフィア文庫2013年刊)
タイトルから察せられるように、超初心者向けの本である。2010年かもがわ出版から刊行された単行本が角川文庫に収録されたもの。
内田樹さんのお名前があったので、手をのばした。石川先生とは、神戸女学院大学で、内田さんの同僚、7歳ほど年下で、マルクス学の専門家と紹介されている。
《読めば頭がよくなった気になる、世界の見えかたがガラッと変わる!マルクスを「万難を排してでも読むに値する思想家」と絶賛する哲学者と、正統派のマルクス経済学者が、青年期の代表作を徹底読解。『共産党宣言』『ユダヤ人問題によせて』『ヘーゲル法哲学批判序説』『経済学・哲学草稿』『ドイツ・イデオロギー』を取り上げ、その読みかたと現代にも通じる魅力を分かりやすく紹介する。知的な刺激に満ちた、極上のマルクス入門!》
出版社による宣伝文には、そう書かれている。
変わっているのは、本書が公開を前提にした同僚の“往復書簡”となっていること。
長々とした挨拶や、同僚としての裏話があちこちに出てくる^^;ハハ
石川康宏先生は、いたってまじめ、まあ、マルクス思想の祖述に余念がないように見える。マルクスを、20代の若者に、もっと読んで、理解を深めてもらいたいのだ。
兵庫県の知事選にも関与して、実践的な活動もおこなっている。いわゆる書斎派ではない。
しかし、本書では新鮮なマルクス像が提示できているわけではない。要するにレクチャーし、この思想をもっと普及させたいのだ。
本書では若きマルクスが残した著作5冊が取り上げられている。
「共産党宣言」
「ユダヤ人問題によせて」「ヘーゲル法哲学批判序説」
「経済学・哲学草稿」
「ドイツ・イデオロギー」
230ページばかりのいわば“小冊子”なので、普段滅多に本を読まない若者に配慮し、ハードルが低く設定してある。
おもしろいのはやっぱり内田さん。
「いよっ! 現代の一休さん」
とからかってみたくもなる。
とにかく発想がユニーク(*^-^) つい「何をいいだすんだろう?」と思ってしまう。
個性ということでは、山本七平さん、養老孟司さん、佐藤優さんも際立っている。「当たり前のこと」はいわない。それでいて、耳を傾けていると、非常に説得力がある。
ときおり「頓知の智恵」みたいに見えるので、一休さんなのである(^○^)/
マルクスの著作は一冊も読んでないけど、関心はもっているという人には参考になるだろう。よくも悪くも、ターゲットとする読者を明確に設定している。
わたし的には、もうワンランク上の本が読みたかったが、これはこれでイイとしよう、ただし評価はそれほど高くない。
評価:☆☆☆
■「ゼロからわかるキリスト教」佐藤優(新潮社 2016年刊行)
《本書は新潮講座「一からわかる宗教」の第一期の講義を活字化したものです》と末尾にしるされてある。
「いま生きる『資本論』」
「いま生きる階級論」
新潮社からは、この二冊が刊行され、本書が三冊目。「いま生きる『資本論』」はわたしはすでに読んで、レビューをUPしてある。
内容紹介を検索したら、つぎのようなコピーがあった。
《神の居場所を知っていますか? 全日本人の弱点・キリスト教の核心を早わかり! 弱者必衰の新自由主義、打つ手なしの格差社会、過激さを増す民族運動――現代の難問の根底にはすべて宗教がある。「宗教は民衆のアヘンである」と喝破したマルクスの著作を通じて現代の仕組みを見通す、専門知識ゼロからわかるキリスト教神学の超入門書にして白眉。世界宗教の有りようを学び、21世紀と正しく付き合うために!》
本書を買ったのは、巻末に「ヘーゲル法哲学批判序説」(日高晋訳)が付録として掲載されていたから。
「えっ! それとキリスト教がどんな関連があるんだろう」
そう思いつつ読みはじめたら、これがおもしろかった。
佐藤さんには、優秀なジャーナリスト的な資質がたっぷりとある。母親は沖縄・久米島の出身で、同志社大学神学部を卒業。このとき、洗礼(プロテスタント)を受けている。その後の履歴については、佐藤さんの著作を一冊でも読んだことのある読者なら先刻ご承知・・・だろう。
風貌を見れば、彼が沖縄人であることは間違いないことがわかる。卓越した該博な知識の持ち主で「現代における知の巨人」たる資格があると、多くの読者から思われている。
外務省にいたため、インテリジェンスの専門家と見られ、わたしもこれまでそういう関連で5-6冊は読んでいる。
近代において、神学をやるとはどういうことか、本書はそれを教えてくれる。「ヘーゲル法哲学批判序説」こそ、ターニングポイントとなっていると、佐藤さんはいう。
「難解な問題を素人に理解できるよう、わかりやすく解きほぐす」
そのお手並みがなかなか見事(^^♪
ただし「ヘーゲル法哲学批判序説」は、論理的には破綻している、という。このあたりから、エンゲルスの支援があったとはいえ、圧倒的な膂力を発揮し「資本論」(未完の不完全な著作ではあるが)へ登りつめていくマルクス。彼はなぜ宗教をアヘンだとかんがえたのか?
佐藤さんはそのあたりに焦点を合わせ、聴講生の頭にしっかりと届く、わかりやすいことばで語りかけてくる。
シニカルにいえば、五木寛之さんみたいな大衆性が、佐藤さんの持ち味なのかもしれない。しかし、本書が想定している読者のレベルは、意外に間口が広い。
ビギナーから中級者まで、本気で取りかからないと、途中で置いてきぼりをくらうだろう。
キリスト教神学にも、マルクス思想にも、驚くほど造詣が深い。しかも、おそらく学問的な精度の高い“読み”が背後に存在する。だから知の巨人と評価されるのだ。
まったくのところ、稀有な人物である。
何だか影響受けそうだなあ、いやもう十分受けているかo・_・o
評価をワンランク下げたのは、今回の講義が二夜で終っているため。第三夜、第四夜と続けて欲しかった。わたし的には本書は尻切れトンボの感が否めなかった。
う~む、残念。
佐藤優さんのつぎの著作に期待を繋ごう(^^♪
評価:☆☆☆☆
内田樹 石川康宏(角川ソフィア文庫2013年刊)
タイトルから察せられるように、超初心者向けの本である。2010年かもがわ出版から刊行された単行本が角川文庫に収録されたもの。
内田樹さんのお名前があったので、手をのばした。石川先生とは、神戸女学院大学で、内田さんの同僚、7歳ほど年下で、マルクス学の専門家と紹介されている。
《読めば頭がよくなった気になる、世界の見えかたがガラッと変わる!マルクスを「万難を排してでも読むに値する思想家」と絶賛する哲学者と、正統派のマルクス経済学者が、青年期の代表作を徹底読解。『共産党宣言』『ユダヤ人問題によせて』『ヘーゲル法哲学批判序説』『経済学・哲学草稿』『ドイツ・イデオロギー』を取り上げ、その読みかたと現代にも通じる魅力を分かりやすく紹介する。知的な刺激に満ちた、極上のマルクス入門!》
出版社による宣伝文には、そう書かれている。
変わっているのは、本書が公開を前提にした同僚の“往復書簡”となっていること。
長々とした挨拶や、同僚としての裏話があちこちに出てくる^^;ハハ
石川康宏先生は、いたってまじめ、まあ、マルクス思想の祖述に余念がないように見える。マルクスを、20代の若者に、もっと読んで、理解を深めてもらいたいのだ。
兵庫県の知事選にも関与して、実践的な活動もおこなっている。いわゆる書斎派ではない。
しかし、本書では新鮮なマルクス像が提示できているわけではない。要するにレクチャーし、この思想をもっと普及させたいのだ。
本書では若きマルクスが残した著作5冊が取り上げられている。
「共産党宣言」
「ユダヤ人問題によせて」「ヘーゲル法哲学批判序説」
「経済学・哲学草稿」
「ドイツ・イデオロギー」
230ページばかりのいわば“小冊子”なので、普段滅多に本を読まない若者に配慮し、ハードルが低く設定してある。
おもしろいのはやっぱり内田さん。
「いよっ! 現代の一休さん」
とからかってみたくもなる。
とにかく発想がユニーク(*^-^) つい「何をいいだすんだろう?」と思ってしまう。
個性ということでは、山本七平さん、養老孟司さん、佐藤優さんも際立っている。「当たり前のこと」はいわない。それでいて、耳を傾けていると、非常に説得力がある。
ときおり「頓知の智恵」みたいに見えるので、一休さんなのである(^○^)/
マルクスの著作は一冊も読んでないけど、関心はもっているという人には参考になるだろう。よくも悪くも、ターゲットとする読者を明確に設定している。
わたし的には、もうワンランク上の本が読みたかったが、これはこれでイイとしよう、ただし評価はそれほど高くない。
評価:☆☆☆
■「ゼロからわかるキリスト教」佐藤優(新潮社 2016年刊行)
《本書は新潮講座「一からわかる宗教」の第一期の講義を活字化したものです》と末尾にしるされてある。
「いま生きる『資本論』」
「いま生きる階級論」
新潮社からは、この二冊が刊行され、本書が三冊目。「いま生きる『資本論』」はわたしはすでに読んで、レビューをUPしてある。
内容紹介を検索したら、つぎのようなコピーがあった。
《神の居場所を知っていますか? 全日本人の弱点・キリスト教の核心を早わかり! 弱者必衰の新自由主義、打つ手なしの格差社会、過激さを増す民族運動――現代の難問の根底にはすべて宗教がある。「宗教は民衆のアヘンである」と喝破したマルクスの著作を通じて現代の仕組みを見通す、専門知識ゼロからわかるキリスト教神学の超入門書にして白眉。世界宗教の有りようを学び、21世紀と正しく付き合うために!》
本書を買ったのは、巻末に「ヘーゲル法哲学批判序説」(日高晋訳)が付録として掲載されていたから。
「えっ! それとキリスト教がどんな関連があるんだろう」
そう思いつつ読みはじめたら、これがおもしろかった。
佐藤さんには、優秀なジャーナリスト的な資質がたっぷりとある。母親は沖縄・久米島の出身で、同志社大学神学部を卒業。このとき、洗礼(プロテスタント)を受けている。その後の履歴については、佐藤さんの著作を一冊でも読んだことのある読者なら先刻ご承知・・・だろう。
風貌を見れば、彼が沖縄人であることは間違いないことがわかる。卓越した該博な知識の持ち主で「現代における知の巨人」たる資格があると、多くの読者から思われている。
外務省にいたため、インテリジェンスの専門家と見られ、わたしもこれまでそういう関連で5-6冊は読んでいる。
近代において、神学をやるとはどういうことか、本書はそれを教えてくれる。「ヘーゲル法哲学批判序説」こそ、ターニングポイントとなっていると、佐藤さんはいう。
「難解な問題を素人に理解できるよう、わかりやすく解きほぐす」
そのお手並みがなかなか見事(^^♪
ただし「ヘーゲル法哲学批判序説」は、論理的には破綻している、という。このあたりから、エンゲルスの支援があったとはいえ、圧倒的な膂力を発揮し「資本論」(未完の不完全な著作ではあるが)へ登りつめていくマルクス。彼はなぜ宗教をアヘンだとかんがえたのか?
佐藤さんはそのあたりに焦点を合わせ、聴講生の頭にしっかりと届く、わかりやすいことばで語りかけてくる。
シニカルにいえば、五木寛之さんみたいな大衆性が、佐藤さんの持ち味なのかもしれない。しかし、本書が想定している読者のレベルは、意外に間口が広い。
ビギナーから中級者まで、本気で取りかからないと、途中で置いてきぼりをくらうだろう。
キリスト教神学にも、マルクス思想にも、驚くほど造詣が深い。しかも、おそらく学問的な精度の高い“読み”が背後に存在する。だから知の巨人と評価されるのだ。
まったくのところ、稀有な人物である。
何だか影響受けそうだなあ、いやもう十分受けているかo・_・o
評価をワンランク下げたのは、今回の講義が二夜で終っているため。第三夜、第四夜と続けて欲しかった。わたし的には本書は尻切れトンボの感が否めなかった。
う~む、残念。
佐藤優さんのつぎの著作に期待を繋ごう(^^♪
評価:☆☆☆☆