
引き戸のすきまからちらりと姿をのぞかせた
長いひげをたくわえた神様がきみの神様だろう。
あちらからきみが もっと不幸せになるのを見ている。
ゆっくりと斜面をずり落ちていくように
年をとって
きみはさらにつまらない人間になり
ムンクの叫びのようなひしゃげた顔をして
こころの底では世界を呪っている。
「終わりが近づいてきたね」
隣にいる人にそういってみる。
するとその人がまた隣の人に
同じことをいう。
「生まれてくる赤ん坊が少ないから
年寄りばかりふえたね」
アオゲラやコゲラがけたたましく木の幹を叩いている。
あれはお経をあげているのか せわしなく。
またどこか近くで成仏した年寄りがいるのだ。
あと千年ほどたったら
あと千年ほどたったら
そこらじゅう 墓場だらけになるだろう。
骨は再利用されるようになっているかもしれない。
・・・とさっきから空想にふけっていると
ブルーのストッキングをはいた女の子が
空から何人も何人も落ちてきた。
雨が降りはじめたのだ。