二草庵摘録

本のレビューと散歩写真を中心に掲載しています。二草庵とは、わが茅屋のこと。最近は詩(ポエム)もアップしています。

人がやってきては立ち去っていく(ポエムNO.2-27)

2013年12月15日 | 俳句・短歌・詩集
なにかが終わった気配がする。
さっきまでは なにかが
はじまった
気配がしていたというのに。
そういうくり返しの少し向こう
ぼくやきみの退場の刻限もせまってきたようだ。
人がやってきては立ち去っていく。

薄紙がはがれるように 一日一日のカレンダーがめくれていく。
思い出は夢のいれもの。あの日も
そしてあの日も
いっこうにゆれがおさまらず
イメージが過去の飛沫となって眼のふちをつたい流れる。
背後で椅子が倒れる音がする。
人がやってきては立ち去っていく。

夕焼けを茫然と見ていた。
偉大な人物のカタストロフィーとでもいうような。
ぼくのまぶたのうらの暗がりでは
ぼくによく似た人がさまよっている。
いつもなにかを さがしている。
失ったものを拾いあつめても それを長期保存するいれものはないというのに。
人がやってきては立ち去っていく。

あきらめるんだな いっそそのほうがさっぱりする。
ああ 雲の向こうに雲。
冬木立が風に靡いているが倒れることはない。
自分のつま先までのはるかな旅。
視線はさまよってはいるが
所詮 自分の後頭部は見えないだろう。
人がやってきては立ち去っていく。

シュナーベルが弾くベートーヴェンの後期のソナタが聞こえているね。
31番や32番に なんど泣かされたことだろう。
栄光の時代を夢みたことがきみにもあったろう。
すべては永遠にすぎさっていく・・・
なーんてありふれた感想など断ち切って虚空をあおぐ。
ほら 真っ青な鍵盤がきみにも見えるか?
どこもかしこも 透明な風の音楽 音楽。



*Rさんとの別れ(離婚)が決まった日のかたわらで。

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