
(「承久の乱」洋泉社 歴史REALシリーズ)
※このほかにも2-3冊読んでいるが、印象が深かったもの3冊を取りあげて、以下感想を簡単にしるしておこう。

■坂井孝一「承久の乱 ─真の『武者の世』を告げる大乱」(中公新書2018年刊)
そうだ、承久の乱があった。
洋泉社 歴史REALシリーズを書店で見かけ、むくむくと好奇心が頭をもたげた。
いうまでもなく、新古今は後鳥羽院主導のもとに編纂された勅撰集である。
和歌は代表作のいくつかをよく知っているが、後鳥羽院は天皇であり、院政を敷いて、日本の政治をリードした歴史上の人物である。後醍醐天皇は派手な波瀾万丈の生涯を送ったが、はて、後鳥羽院は?
ここ数年のあいだ、文春新書から本郷和人さんが「承久の乱」、中公新書から坂井孝一さんが、同じく「承久の乱」を刊行している。結局、後者を大変おもしろく読ませていただいた。
この戦が大きな歴史の転換点であったのは間違いない・・・とは承知していたが、通り一遍の知識しかなかった。日本中世史における最新の研究成果が盛り込まれている。
天皇、貴族の時代から、武士の時代へ。
「承久の乱」は、倒幕の目的はではなく、北条義時追討を目指した兵乱であったというあたりは坂井さんの創見といっていいのだろう。後鳥羽上皇は芸能・学問にも秀でた有能な帝王であるが、武力を背景にした武士階級の台頭を見抜けなかったのである。
後鳥羽院は、のちの後醍醐とならんで“悲劇の帝王”と呼ぶにふさわしい人物。
洋泉社の「承久の乱」と併読しながら、歴史のREALを愉しく学ぶことができた。
感謝、感謝。
評価:☆☆☆☆

■松井孝典「生命はどこから来たのか? アストロバイオロジー入門」(文春新書2013年刊)
松井孝典さんの著書はこれまで3冊あまり読んできたが、一度も期待を裏切られたことがない。
専門は地球物理学、比較惑星学、アストロバイオロジー。
アストロバイオロジーってなんだ?
そう思いながら手にとったが、いや~、最高におもしろかった(^^♪
知りたかったこと、読みたかった内容。
そういう本と過ごす時間は、濃密で、しばし我を忘れている。
1.アストロバイオロジーとは
2.生命起源論の歴史的展開
3.宇宙と生命
4.生命とは何か ─地球生物学の基礎
5.生命と環境との共進化
6.分子レベルで見る進化
7.極限環境の生物
8.ウイルスと生物進化
9.化学進化 ─生命の材料物質の合成
10.宇宙における生命探査
この目次を眺めただけで、ゾクゾクしてくるではないか!?
21世紀になって「そもそも生命って何だ?」ということが、あらためて問われている。
また遺伝は垂直方向にしかつたわらないと考えていたが、水平方向にもつたわるのではないかという仮説には驚愕させられた。その主役がウイルスである、という。
この途方もなく広い宇宙で、地球はまったく孤立した奇蹟の星なのかどうか?
素人にはわかりにくい部分がないわけではないが、目からウロコの連続技が見事に決まっている。
松井さんの表現力は卓越したものがあり、興奮いまだ醒めやらず・・・である(*・д・) おすすめ度120%。
評価:☆☆☆☆☆

■加藤一二三「羽生善治論 ─『天才』とは何か」(角川新書2013年刊)
わたしが将棋にはじめて興味をいだき、「将棋世界」などを購読しはじめたころ、中原誠さん、米長邦雄さん、谷川浩司さん、加藤一二三さんなどがA級棋士で、将棋界に君臨していた。
加藤さんはその後TVのトークで“ヒフミン”として人気者となり、その早口とユーモアが、茶の間の将棋ファンを沸かせたものであった。
米長さんが重厚長大、ヒフミンは軽薄短小(^_-)
そんなイメージをもっていた。
将棋というのはゲームだが、囲碁とならんで長い歴史があるため、昨今のPC、あるいはネット上のゲームとは同列には論じられない。
A級棋士、タイトルホルダーともなれば、1億円を稼ぎさすのも夢ではない。
その加藤一二三さんが、天才羽生善治について真っ向から語っている。
将棋をたいして知らない読者を想定し、棋譜がほんのわずかしか掲載されていないため、なんとなく歯がゆい、抽象的な語り口になってしまったのがもの足らない。
かつては、加藤さんも“神武以来の天才”と呼ばれた時代があった。
しかし、羽生善治の出現によって、将棋は様変わりする。
羽生さんと比較すれば、二世代上の棋士という位置にいる加藤さん。
「わたしも天才だったのですぞ、お忘れなく・・・」
しばしば、そんなつぶやきが聞こえてくる。
加藤さんのしゃべりや風貌は、かつてNHK杯戦などでお見かけしている。
多少将棋を知っているわたしからすれば、棋譜をもっとふんだんに引用していればおもしろい一冊になったろう。
その羽生さんも、いまや無冠。
そして、若き天才、藤井聡太さんに、世の注目は集まっている。
囲碁も将棋も、天才が時代をつくる。スーパーコンピュータが棋士を負かしたことが話題になったことがあるが、わたしにいわせれば、そんなことおもしろくもなんともない。
将棋は人間性がかなりまともに現われる。人間と人間が、盤上で死闘を演じるからこそ、見る価値がある。
加藤さんは本書の中で、じつに人間臭く、将棋と天才について、秘話といってもいいようないろいろなエピソードを交えて書いている。
そこが本書の読みどころ(^ー^)ノ
評価:☆☆☆☆
※このほかにも2-3冊読んでいるが、印象が深かったもの3冊を取りあげて、以下感想を簡単にしるしておこう。

■坂井孝一「承久の乱 ─真の『武者の世』を告げる大乱」(中公新書2018年刊)
そうだ、承久の乱があった。
洋泉社 歴史REALシリーズを書店で見かけ、むくむくと好奇心が頭をもたげた。
いうまでもなく、新古今は後鳥羽院主導のもとに編纂された勅撰集である。
和歌は代表作のいくつかをよく知っているが、後鳥羽院は天皇であり、院政を敷いて、日本の政治をリードした歴史上の人物である。後醍醐天皇は派手な波瀾万丈の生涯を送ったが、はて、後鳥羽院は?
ここ数年のあいだ、文春新書から本郷和人さんが「承久の乱」、中公新書から坂井孝一さんが、同じく「承久の乱」を刊行している。結局、後者を大変おもしろく読ませていただいた。
この戦が大きな歴史の転換点であったのは間違いない・・・とは承知していたが、通り一遍の知識しかなかった。日本中世史における最新の研究成果が盛り込まれている。
天皇、貴族の時代から、武士の時代へ。
「承久の乱」は、倒幕の目的はではなく、北条義時追討を目指した兵乱であったというあたりは坂井さんの創見といっていいのだろう。後鳥羽上皇は芸能・学問にも秀でた有能な帝王であるが、武力を背景にした武士階級の台頭を見抜けなかったのである。
後鳥羽院は、のちの後醍醐とならんで“悲劇の帝王”と呼ぶにふさわしい人物。
洋泉社の「承久の乱」と併読しながら、歴史のREALを愉しく学ぶことができた。
感謝、感謝。
評価:☆☆☆☆

■松井孝典「生命はどこから来たのか? アストロバイオロジー入門」(文春新書2013年刊)
松井孝典さんの著書はこれまで3冊あまり読んできたが、一度も期待を裏切られたことがない。
専門は地球物理学、比較惑星学、アストロバイオロジー。
アストロバイオロジーってなんだ?
そう思いながら手にとったが、いや~、最高におもしろかった(^^♪
知りたかったこと、読みたかった内容。
そういう本と過ごす時間は、濃密で、しばし我を忘れている。
1.アストロバイオロジーとは
2.生命起源論の歴史的展開
3.宇宙と生命
4.生命とは何か ─地球生物学の基礎
5.生命と環境との共進化
6.分子レベルで見る進化
7.極限環境の生物
8.ウイルスと生物進化
9.化学進化 ─生命の材料物質の合成
10.宇宙における生命探査
この目次を眺めただけで、ゾクゾクしてくるではないか!?
21世紀になって「そもそも生命って何だ?」ということが、あらためて問われている。
また遺伝は垂直方向にしかつたわらないと考えていたが、水平方向にもつたわるのではないかという仮説には驚愕させられた。その主役がウイルスである、という。
この途方もなく広い宇宙で、地球はまったく孤立した奇蹟の星なのかどうか?
素人にはわかりにくい部分がないわけではないが、目からウロコの連続技が見事に決まっている。
松井さんの表現力は卓越したものがあり、興奮いまだ醒めやらず・・・である(*・д・) おすすめ度120%。
評価:☆☆☆☆☆

■加藤一二三「羽生善治論 ─『天才』とは何か」(角川新書2013年刊)
わたしが将棋にはじめて興味をいだき、「将棋世界」などを購読しはじめたころ、中原誠さん、米長邦雄さん、谷川浩司さん、加藤一二三さんなどがA級棋士で、将棋界に君臨していた。
加藤さんはその後TVのトークで“ヒフミン”として人気者となり、その早口とユーモアが、茶の間の将棋ファンを沸かせたものであった。
米長さんが重厚長大、ヒフミンは軽薄短小(^_-)
そんなイメージをもっていた。
将棋というのはゲームだが、囲碁とならんで長い歴史があるため、昨今のPC、あるいはネット上のゲームとは同列には論じられない。
A級棋士、タイトルホルダーともなれば、1億円を稼ぎさすのも夢ではない。
その加藤一二三さんが、天才羽生善治について真っ向から語っている。
将棋をたいして知らない読者を想定し、棋譜がほんのわずかしか掲載されていないため、なんとなく歯がゆい、抽象的な語り口になってしまったのがもの足らない。
かつては、加藤さんも“神武以来の天才”と呼ばれた時代があった。
しかし、羽生善治の出現によって、将棋は様変わりする。
羽生さんと比較すれば、二世代上の棋士という位置にいる加藤さん。
「わたしも天才だったのですぞ、お忘れなく・・・」
しばしば、そんなつぶやきが聞こえてくる。
加藤さんのしゃべりや風貌は、かつてNHK杯戦などでお見かけしている。
多少将棋を知っているわたしからすれば、棋譜をもっとふんだんに引用していればおもしろい一冊になったろう。
その羽生さんも、いまや無冠。
そして、若き天才、藤井聡太さんに、世の注目は集まっている。
囲碁も将棋も、天才が時代をつくる。スーパーコンピュータが棋士を負かしたことが話題になったことがあるが、わたしにいわせれば、そんなことおもしろくもなんともない。
将棋は人間性がかなりまともに現われる。人間と人間が、盤上で死闘を演じるからこそ、見る価値がある。
加藤さんは本書の中で、じつに人間臭く、将棋と天才について、秘話といってもいいようないろいろなエピソードを交えて書いている。
そこが本書の読みどころ(^ー^)ノ
評価:☆☆☆☆