二草庵摘録

本のレビューと散歩写真を中心に掲載しています。二草庵とは、わが茅屋のこと。最近は詩(ポエム)もアップしています。

写真を撮る人(ポエムNO.2-17)

2013年07月28日 | 俳句・短歌・詩集
そんなことどうでもいい。
そんなことまったくのところ どうでもいいのさ。
ぼくは声には出さずにつぶやいて 椅子から立ち上がる。
しばらくは人びとの騒めきが聞こえるが
やがて それも聞こえなくなる。
ブランデーグラスがゆっくりと傾いて
地平線の向こう側へ落ちてゆき
数分後 ぼくの胸の奥にしみが広がって。

路地には意味ありげな矢印がいっぱいある。
一方通行ですよ とその矢印はつげている。
ペリカンがいる角を右へ曲がったり
モーツァルトを聴きながら居眠りしたり。
だけど もといた場所には帰れない。
絶対にね。
いうまでもなくわかっているとはおもうけれど。
一応 いっておこう。

昭和は25年もまえに終わった。
覚えているかなあ 最後の数日間のこと。
いまから考えたら きみもぼくも希望を持ちすぎていたね。
まだまだいけるよ ほらね! ほらね!
しかし お天気のよい日より悪い日が少しずつふえていったね。
薄紫のキレイな空を見たこともない鳥たちが群れをなして渡っていく。
そっちらきたのか そっちにいこうとしていたのか
ときどきわからなくなって。

ペリカンは歌い 書物は黄ばみ
恋人たちはむやみと口づけする。
ぼくはカメラを首からさげたまま立ち尽くし
ときおりシャッターを切ったりしながら
カワセミのように そういった騒音から身をかわす。
世界とはこういうものであったのだ。
具体的にはとても とても説明できそうにないから
ぼくはそれを写真でしめそう。

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